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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    鎌スタ時空。🐜と🌾と征蟻党の三人

    ウチの子常春の世。そこでは命を終えた者たちが思い思いに過ごしている。どこからか未来の田楽が流れ、それに合わせて踊る者達もいた。
     和田米丸。巨漢でありながら、その動きは音楽と調和している。そしてその米丸と共に踊っているのが征蟻党幹部である死蝋、白骨、腐乱であった。彼らは米丸とは生前での関わりはなかったが、こちらに来てから親しくなっていた。
     流れ続ける田楽に、彼らは飽きることなく踊り続ける。新しい振り付けを考えたり、ぴったりと動きを合わせる練習をしたりと、充実した時間を送っていた。
     そこへやって来る者がいた。瘴奸である。瘴奸は踊っている彼らを遠目に見ていたが、何か不満そうな顔をしながらやって来た。
    「あ、頭だ」
     気付いた死蝋が踊るのを止めると、他の者も動きを止めた。
     瘴奸は米丸の前まで来ると、居丈高に言い放った。
    「そいつらは俺のだ。返してもらおうか」
     瘴奸は死蝋達を指差していた。米丸は鬱陶しそうに瘴奸を見下ろす。
    「なんだてめえ、オラァ」
    「そいつらは俺の郎党だ。寄越せ」
     米丸と瘴奸は火花を散らすように睨み合った。死蝋は今にも瘴奸に飛びつきそうになっているが、白骨と腐乱が「ステイッステイッ」「まだだ、まだだ」と宥めている。
     すると突然、米丸の張り手が瘴奸を襲った。派手な音が響き、瘴奸はそのまま地面に倒れ伏すと、動かなくなってしまった。
    「え、やば」
    「骨折れる音しなかった?」
    「か、頭〜!!」
     腐乱、白骨、死蝋は慌てて瘴奸に駆け寄った。しかし瘴奸の首はあらぬ方向へと曲がっている。
    「首の骨折れてるって」
    「お頭〜死ぬな」
    「いや、もう死んでるんだって」
     だってここあの世だし、と腐乱がゲラゲラと笑う。
     すると、瘴奸の体が動いた。瘴奸は呻きながら身を起こすと、捻じ曲がっていた首を力ずくで直した。おぉ、と三人が感嘆の声をあげる。
    「頭ぁ、生きててよかった」
    「だから死んでるんだって」
    「これ以上死ねないもんな」
    「ここがあの世でよかった〜」
     言いたいことを口々に言って騒ぐ征蟻党であったが、瘴奸はふらりと立ち上がると、人でも殺しそうな気迫で再び米丸に向き直った。
    「こいつらを返せ」
     すると米丸はじっと瘴奸を見てから、つまらなさそうに鼻で息を吐いた。
    「返すも返さねえもないだろ。楽しく遊んでただけだ」
     米丸は体を揺すりながら背を向ける。すると瘴奸はついでとばかりに米丸に言った。
    「それとあの公家をどうにかしろ」
     瘴奸が指差す先に清原国司がいた。清原は貞宗の顎を掴むと、眉を描き入れている。その横には顔中を落書きされた市河がいた。
     米丸はその様子を見て首を横に振った。
    「遠慮する」
    「するな。引き取れ。大殿が困っている。というかさっきなぜ殴った」
    「なんとなく」
    「なんとなくで人の首を折るのか」
     すると米丸は腐乱を捕まえると小脇に抱えた。
    「やっぱり俺がコイツら引き取るから、お前らで国司を世話しろ」
    「おい、やめろ」
    「お前らだってさっき楽しそうに踊ってただろ」
     それから米丸と瘴奸は揉めに揉めたが、結局は瘴奸が征蟻党を連れていき、米丸は清原を迎えに行くこととなった。
     常春の世、鎌倉流儀。狂乱の宴か永遠の安穏か。田楽は鳴り止まない。


     
     
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