未練たらしい あの子の為にも手放すべきだと思った、その選択に後悔はない。なのに何故、こんなにもやりきれないと感じるのか。胸の奥が凍えてじくじくと痛みだす。そうして知ったのだ、これが喪失感なのだと。だが手放したのは自分だ。未練などない。
そんなもの、あの子の物と一緒に全て灰に変えてしまえばいい─。
(おまけ)
あの子が残していった全てを燃やし灰に変えた。そうすれば胸にぽっかりと空いた穴に気づかぬフリが出来ると思ったのだ。だが全てを灰に変えたとて、あの子と過ごした日々も、あの子の温もりも、あの子のくるくると変わる表情も、何一つ記憶から消えはしない。忘れらなくて、やりきれなくて、気づけば撒いた灰に手を伸ばしていた。