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    ako_clock

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    お題:「煽ったのは君だよ」

    付き合って同棲もしてる零世良の下世話な話。
    キャラ崩壊してる気がするのでご注意ください。
    羽由美、赤井さん、メアリーママがちょっと出てくるけど、ほとんど零世良ばっかり。

    #零世良
    zeroShira
    #あむせら

     ベッドの軋む音がやけに大きく聞こえた。
    「……怒ってる?」
     目の前には零。背中にはベッド。ボクを見下ろした零の瞳は笑っていない。
     ここはボクの部屋で、零の部屋でもある。こうでもしないと一緒にいられないからって、大学卒業と同時にボクが零の家に住み着いたのが同棲のきっかけだった。



     零の家に押しかけたときは叱られて追い出されることも覚悟していたけれど、拍子抜けするほどあっさりとボクの希望は受け入れられた。
     ただし、真面目な零がボクのママの許可が必要だとか言いだしたせいで、ボクが強引に押し切ったことがママにバレてしまって。軽いお説教を食らうことになった。
     零とボクが真剣な交際をしていることを知ったのもそのとき。零がママにそんな話をしているときに首を傾げたのは、照れ隠しも入っていた。少しだけ。
     それで、ママの許可をもらえたから、二人の兄たちに同棲するって報告したんだっけ。
     電話での報告だったので表情は分からないけど、秀兄は一言「真純も大人になったんだな」と言ってくれた。反対にキチ兄は騒がしかった。電話越しに質問が矢継ぎ早に浴びせられたので、「キチ兄だって同棲してたじゃないか!」って言ってやった。そうすると、静かになって、何かあったら連絡して良いって言ってくれたけど、キチ兄は奥さんが最優先だからあんまりアテにはならない。もちろん、その気持ちは嬉しいから、気持ちだけはありがたく受け取っておくことにした。
     そうして二人での生活が始まって、三カ月が経ったけれど、一緒に過ごせた時間はもしかしたら一週間にも満たないんじゃないだろうか。
     ボクは探偵の仕事があって、零は公安の仕事(って言っても、具体的になにをしているか知らないんだけど)がある。お互い不規則な仕事だから、ろくに会話もできない日が一カ月続くなんてすれ違いが起こっても仕方ない。
     そう思っていたボクは、ある日衝撃の事実を知ることになる。
    「なんだこれ」
     部屋に落ちていたのは、一枚のレシート。内容を確認すると、それは駅前のビジネスホテルの名前とシングルの部屋に一泊したことが記されていた。身に覚えがないものなので、これは零の落とし物ということになる。人は招かないように言われているから、零が連れ込んでいなければ外部の人間という線もない。
    「……へぇ。この日、仕事って言ってたよな。確か」
     このホテルから家まで、歩いて十分もかからない。そこに泊まるくらいなら帰ってくれば良いのに。
     レシートにはシングルと書いてあるが、不倫カップルが互いにシングルの部屋を取って、相手の部屋を訪問するなんてよく聞く話だ。
     浮気調査や身元調査なんて依頼で得た探偵のスキルを恋人相手に発揮することになったボクは、零が外泊している証拠をいくつか集めた。そして、それを久しぶりに零が帰って来た日に突きつけたというわけだ。
     ……そうしたら、ベッドに押し倒されたんだけど。



    「なんて言いました?」
     零がゆっくりと尋ねるのを聞いて、おかしな気分になる。不審な行動の証拠を突きつけたのはボクのはずなのに、これではボクが悪いことをしたみたいじゃないか。
     でも、本気でボクが抵抗すれば零も応戦するだろう。そうすれば、部屋がめちゃくちゃになるし、今は話がしたいので抵抗はしないことにした。
    「浮気してる? って聞いた」
    「そのあとは?」
    「零がその気なら、ボクにも考えがあるって言った」
     スーツも脱がず、ネクタイも緩めず。帰ってきたばかりの格好でボクを組み敷いているのは、図星を突かれた焦りから来る行動にも見える。さあ、どんな弁明がボクを待っているのか。そう思っていたのに、これじゃ立場が逆だ。
    「その考えについて、詳しく聞かせてもらえます?」
    「ボクだってモテないわけじゃないから、他のひとと遊んだりするくらいできるんだぞ」
     言ってやった!
     ずっと心の中で練習していたセリフを噛まずに言えて大満足なボクは、負けないぞと零を見つめ返す。
     そりゃあ、恋人の欲目を抜きにしてもかっこいい顔をしているし、ポアロでバイトしてたときはファンも多かったらしいから、こうすれば言うことを聞く人も多いんだろうけど、ボクはそこまで甘くない。
     他の人と遊ぶなんて本気では言ってないけど、ボクばっかりが零を好きだって思うなよってことだ。
    「遊ぶってなにをするんです?」
     言葉は優しくても剣呑な視線とか淡々とした事務的な口調。質問じゃなくて、まるで尋問だった。
    「ボクのことは良いから! まずは零の話だろ? なんで駅前のホテルなんて泊まってたんだよ」
     ボクの問いに零は口をつぐんだ。やっぱり浮気? そう思うと瞳が潤むけど、絶対に目の前では泣いてやらない。
    「まさか、本当に浮気……? ボクがいる家には帰って来たくないとか?」
     想定していた中で最悪のケース。涙は堪えたけど、声は震えてしまった。そんなボクを見て、零は観念したように口を開いた。
    「君を避けていたのは事実です」
     胸がぎゅっと苦しくなる。
    「でも、それは君に無理をさせたくないからで」
    「は?」
     浮気をボクのせいにするつもりかよ。怒りで我慢していた涙も引っ込む。
     どんな顔をして言い訳するのかと思いきや。
     視線が泳ぎ、目元が赤い。これは後ろめたいと言うより、照れている……? 今まで色々な修羅場を見てきた。開き直ったり逆ギレしたり言い訳したり。そんな感じの反応が多かったから、拍子抜けしてしまった。
    「……ですよ」
     言いにくそうに口を開いた零はあまりに早口で聞き取れない。
    「もう一回言ってくれよ。そんなに早口じゃ聞き取れない」
     手首を掴んでいる力が緩み、ボクは解放された。
     ふーって深く息を吐きながらベッドに腰掛けている零の隣に座って、もう一度同じことを言ってやる。少しの間沈黙が続いたけれど、腕を何度か揺らして催促してみた。その甲斐あってか、零は口を開いた。
    「……仕事が立て込むと、爆発しそうになるんですよ」
    「疲れて頭が爆発しそうになるのか?」
     だから、一人でゆっくりしたかったと言われれば、そんなものかもしれないと納得したかもしれない。でも、それならどうしてそんな言いにくそうな顔をするんだろう。
    「頭というか……別の……」
    「はっきりしないな。今日の零はなんかおかしいぞ」
     言いたいことがあるなら、はっきり言えば良いのに。零らしくない反応はボクを戸惑わせる。
     ねえねえとまた腕を引く。言いにくそうにしてるから聞かないでおこう。そんな気遣いを求めているなら、今までの付き合いでボクのどこを見てたんだって話だ。
     聞き出すまでこの腕は放さない。そんなボクの覚悟を悟ったのか、ようやく零が観念した。
    「仕事で疲れると、君を抱き潰しそうで! 落ち着くために部屋を取ってました! これで満足ですか?」
     その勢いのまま、ボクがいないタイミングで家に帰ったり、休みの日はホテルに泊まったりしていた話をされて、ボクはどんな反応をするべきだったんだろう。
     ただ一つ言えることは。
    「そんなの、勝手に解決しようとしないでボクに言えよ! なんで言ってくれなかったんだよ」
    「滅多に会えない恋人が体ばかり求めてきたら、嫌な気持ちになりませんか?」
    「零にだったら……。そんなすごいこと求められたら困るけど、恋人なんだから受け止めたいし、嫌になんかならないよ。むしろ、嬉しいかも」
     ボクを欲しいと思っているなら、それを表現してくれた方が嬉しい。
     また零は一つ大きなため息をついて、頭を抱える。
    「一カ月」
    「一カ月?」
     一カ月と言えば、ボクと会ってなかった期間だけど、他にどんな意味が? 意味が分からなくて首を傾げる。
    「君に触れられなかった期間ですよ」
    「……え」
     吹っ切れたのか、顔を上げた零は笑顔だった。でも、笑顔で言うことじゃないと思う。
    「煽ったのは君だよ」
     最後まで付き合ってくださいねという囁きと共に、零の顔が近付いてきたから瞳を閉じて受け入れる。久しぶりのキスはただ触れるだけのもので、すぐに離れていってしまった。物足りなくてもう一度キスをねだろうとしたのに、零は部屋を出て行こうとしていた。
    「どこ行くんだ?」
     ドアのところで足を止めた零は、上衣を脱ぎながらこちらを振り返った。
    「シャワー浴びてきますから、そのまま待っててください」
     特になにをするでもなく、ベッドで零に抱かれるのを待つ。それが他の人と遊ぶと言ったボクへのお返しなんだろうけど、ボクを不安にさせた零にだって非はある。
    「一緒に入ろうよ」
     ボクが言い返すと、零はちょっとだけ驚いた顔をしてから、すぐに手招きするように手を差し出してくれた。
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     ベッドの軋む音がやけに大きく聞こえた。
    「……怒ってる?」
     目の前には零。背中にはベッド。ボクを見下ろした零の瞳は笑っていない。
     ここはボクの部屋で、零の部屋でもある。こうでもしないと一緒にいられないからって、大学卒業と同時にボクが零の家に住み着いたのが同棲のきっかけだった。



     零の家に押しかけたときは叱られて追い出されることも覚悟していたけれど、拍子抜けするほどあっさりとボクの希望は受け入れられた。
     ただし、真面目な零がボクのママの許可が必要だとか言いだしたせいで、ボクが強引に押し切ったことがママにバレてしまって。軽いお説教を食らうことになった。
     零とボクが真剣な交際をしていることを知ったのもそのとき。零がママにそんな話をしているときに首を傾げたのは、照れ隠しも入っていた。少しだけ。
     それで、ママの許可をもらえたから、二人の兄たちに同棲するって報告したんだっけ。
     電話での報告だったので表情は分からないけど、秀兄は一言「真純も大人になったんだな」と言ってくれた。反対にキチ兄は騒がしかった。電話越しに質問が矢継ぎ早に浴びせられたので、「キチ兄だって同棲してたじゃないか 3583

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     ベッドの軋む音がやけに大きく聞こえた。
    「……怒ってる?」
     目の前には零。背中にはベッド。ボクを見下ろした零の瞳は笑っていない。
     ここはボクの部屋で、零の部屋でもある。こうでもしないと一緒にいられないからって、大学卒業と同時にボクが零の家に住み着いたのが同棲のきっかけだった。



     零の家に押しかけたときは叱られて追い出されることも覚悟していたけれど、拍子抜けするほどあっさりとボクの希望は受け入れられた。
     ただし、真面目な零がボクのママの許可が必要だとか言いだしたせいで、ボクが強引に押し切ったことがママにバレてしまって。軽いお説教を食らうことになった。
     零とボクが真剣な交際をしていることを知ったのもそのとき。零がママにそんな話をしているときに首を傾げたのは、照れ隠しも入っていた。少しだけ。
     それで、ママの許可をもらえたから、二人の兄たちに同棲するって報告したんだっけ。
     電話での報告だったので表情は分からないけど、秀兄は一言「真純も大人になったんだな」と言ってくれた。反対にキチ兄は騒がしかった。電話越しに質問が矢継ぎ早に浴びせられたので、「キチ兄だって同棲してたじゃないか 3583