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    k_kirou

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    k_kirou

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    六スマ

    ああ、これが恋だ。

    彼と、六と話していて唐突にそんなことに気が付いた。

    「何だ余所見して。面白いモンでもあったか?」
    「いいや、何にも」

    彼が笑った時に満足を覚える心があった。
    僕は名前の通りいつも笑っていて、大概の他人はそれで笑ってくれるのだけど別に僕に思う所はない。単なる処世術で笑いかけているに過ぎない。
    けれど彼には笑って、しまう。
    案外この人は厳しくて、僕の只で貼り付けている顔には少しも色を返さないのに、ちゃんと笑うと彼も普通に笑う。
    そんな顔をするんだ、と思った。
    彼は眉間に皺を寄せた険しくてこわーい人なのだと見繕っていた。でもそれは僕の無表情が見抜かれていたに過ぎなかった。なんてことだ。
    僕が笑うと彼も笑う。同じ顔をする。同じ顔をさせられる。

    それなりに長い時間生きてきたから、恋と呼ばれるものが何かは当然知っていたし、きっとそれらしいこともあったんだろうけれど、こんなにはっきり分かったのは初めてだ。
    僕は彼に恋をした。

    顔の形、態度、色、温度、全てが良く思える。良いように想ってしまっている。
    とても馬鹿げた心地で、蓋を開ければ先なんてないのに、この人が好きで、遊ぶとか誑かすとかじゃなく好きになってもらえたら嬉しいかもしれないと、胸の内が言う。
    そしたら、そうなったらどうしよう。
    どうもしない方がいいのは分かっているけれど、きっと止められないのだろう。僕は僕だから。

    ふらりふらりの根無し草で、気ままにやっていく。
    だから君がその表情と同じように心を返してくれるのならば、僕はそこに、根を張ってしまう。


    2024.05.26
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