月の色 少し冷えるかもしれないから、と言われたのでボトムはジーパンにした。だったらトップスは甘めのコーデ! と妹に言われるまま勧められた格好でそっと家を抜け出す。頼もしすぎる妹の後押しのおかげて家を出るのは簡単だった。玄関から少し離れて通りの方へ目をやると街灯に照らされてキラキラと輝く金色が見える。とたんに心臓が煩く騒ぎ出す。
『悪いこと、しない?』
部活動で遅くなった学校の帰り道、手を繋いで歩く道の先、東の空に現れた雲を纏った大きな月。まだ上り始めたばかりの満月はまるで線香花火の火玉のような朱を帯びてどこか妖しい雰囲気すら漂う。そう言いながら悪戯っぽくこちらを覗き込んでくる瞳は怪しさ匂う月そのもので思わず足が止まった。
2020