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    2152n

    @2152n

    基本倉庫。i:騙々氏

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    ブラアキ。ぬいぐるみを届ける話。

    ##ブラアキ

    せめてぬいぐるみは片付けろ「なぁ、ブラッド。本当にこれでいいのか?」
     振り返ったアキラが、背後でリボンを結び終えた男に問う。
    「待て、少し歪んでいる。……これで問題ないだろう」
     満足そうな言葉と共に小さく吐かれた吐息に、思わずため息が落ちた。
     番組の企画として、子供たちにぬいぐるみをプレゼントすることになったのはいいものの、何故自分がブラッドのぬいぐるみを抱えているのか。
     大小様々なそれを落とさぬようリボンで縛られ、一際大きい恋人のぬいぐるみを抱え直す。一メートル以上あるせいで腕に沈む胴体を脇から持ち上げるようにして支えながら、もう一度振り返る。
    「これで街中歩くの、流石に恥ずかしいンだけど」
    「タワーから目的地までの様子も撮るらしい。親しみを感じられる良い企画だと思うが」
    「お前のぬいぐるみを届けるんだから、お前が運べばいいじゃねーか」
    「メンティーのお前が届けるからこそ意味があるのだろう。チームの仲も伝わるし、お前自身顔を覚えてもらえるいい機会だ。それに、俺はこれから会議がある」
     アキラの反応が理解できないのか、首を傾げるブラッド。駄目だ、伝わりそうにない。諦めて、大きく肩を落とす。
    「そりゃあ、そうだけど……」
     俯けば、腹の間で挟まれた小さめのぬいぐるみと目が合った。堅物な本人とは似ても似つかない愛らしいヒーロースーツ姿に、こそばゆさを覚える。
    「……本人もこれぐらい可愛けりゃな」
     言いながら、頬をすり寄せてる。柔らかなパイル生地の肌触りが心地良い。しばらく堪能していると、背中に気配を感じた。振り返る前に毛先がうなじに当たり、続いて耳に滑りが這う。
    「ん」
     舌が三角窩を舐め、耳輪に歯が立てられた。背筋を粟立たせて小さく仰反ると、こめかみに唇が寄せられる。
    「あ、ん、おい、ブラッド」
     アキラの抗議虚しく、抱き寄せられ、顔中に口付けが落ちてきた。身を捩ろうとするが、ぬいぐるみたちが落ちそうになる。慌てて抱え直すと、今度は唇に柔らかな感触を覚える。
    「ん、ぁ」
     膝が震えた。地面へと沈んでいく体。長い足がアキラの股の間に入る。膝に乗るようにしてブラッドへ背中を預けていると、ようやく顔が離れていった。
    「三分で戻せるか」
    「ん、も、どせる……」
     足を持ち上げるブラッドに、反応した自身がぴくりと動く。アキラが息を整えていると、肩に額が押し付けられた。視線だけ動かせば、顔を隠したブラッドが大きく息を吐く。右手でアキラの体を抱き寄せ、左手で――。
    「……嫉妬したのか?」
    「してない」
    「いや、だってよ」
    「してない」
    「あ、そう」
    「……嘘だ」
     すまない。そう言って顔をあげようとしない頭に、頬をすり寄せる。ぬいぐるみの目を隠していた左手が、アキラの体に回った。
     甘え下手な性格も、二人きりの時は改善されているように思う。それでもまだ不器用な彼に愛しさを募らせながら、今日ぐらいは自分も素直になるか、とアキラは口を開く。
    「……子供相手に、言いたくないけど……恋人のぬいぐるみを届けさせられるオレの気持ち……も、考えろよ」
     言いながら、恥ずかしくなってきた。萎んでいく言葉に、姿を見せた目が突き刺さる。
     照れ臭くてそちらを見れずに明後日の方を向けば、耳元で布擦れの音が聞こえてきた。次いでこもる発信音に、アキラは眉を潜めてブラッドを見る。
    「ブラッド・ビームスだ。……あぁ、急で悪いが空いているか。……いや、ランクは下げてもいい」
     このタイミングで電話するとはマイペースな男だ。呆れた目を向けていると、通話を終えたブラッドがスマートフォン片手にアキラを見下ろす。
    「今日の予定はそれだけだったな。……終わったらブルー・ノースのいつものホテルに来い」
    「……?」
     唐突な指示にアキラは首を傾げた。何か新しい任務でもあるのだろうか。
    (いつものホテル……? いつもの……)
     いつもの、と言えば自分たちが体を重ねる、彼行きつけの場所しか思い当たらない。まさか、と気付いたと同時に、腰に回った右手が下腹部を押す。アキラはぶわりと顔を赤らめた。
    「なっ、ばっ……! オ、オレ、明日はパトロール入ってんだぞ!?」
    「俺も同じだ」
     ブラッドが片眉を吊り上げて言う。反論を封じる強い目に、アキラは途端に困惑の色を浮かべた。
     オフの前日なら分かる。けれど、明日も仕事があるのに求めてくるなど、彼らしくもない。
     一体、あの会話のどこで性欲を駆り立てられたのか。
    「いや、う……うぐぐぐぐ」
    「駄目か?」
     そう言って小首を傾げる。彼の打算のないその仕草に弱いアキラは、耳を赤くさせながら、俯いた。
    「ぐ、う……ダメじゃ、ねぇ」
     こめかみに唇が寄せられる。それを受け入れながら、アキラはこれからどんな顔で子供たちに会いに行けばいいのかと、胸中で嘆息を滲ませた。
     更に言えば数時間後、訪れたホテルの部屋で恋人のぬいぐるみが囲まれたベッドへ、放り投げられる羽目になるのだが。
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