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    基本倉庫。i:騙々氏

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    🎈ブラアキ。ワンライお題10回:笑顔(@brak_60min
    ブが笑ったところが見たいアの話。
    笑顔というより笑いになったかもしれない。性的ではないお漏らしがちょっとだけあり。

    ##ブアワンライ

    「笑わせたい」
    「?」
    「だから、お前を腹抱えるほど笑わせてーの!」
     オフの昼どき。リビングで読書を嗜んでいると、自室から現れたアキラにそう言われて、ブラッドはようやく合点がいった。
     なるほど、いきなり俺の腹をくすぐり始めたのはそれが理由かと、掴んだ両の手首を離す。ブラッドに引っ張られる形でとっていたバランスを崩したアキラは、ソファーから転がり落ちると「んぎゃっ」と踏まれた猫のような声をあげた。
    「なんだ、そんなくだらないことで読書を邪魔したのか」
     座り直して背凭れに体重を預ける。読書を再開すれば、アキラはもう復活したのかブラッドの膝に割って入った。足元で座り込んだまま腿に頭を預け、ジト目を向けてくる。
    「くだらないってなんだよ、くだらないって」
     お前は構って欲しくて気を引く犬か。言いたかったが、これ以上機嫌を損ねさせても面倒なだけだった。ブラッドはため息を溢すだけに留める。
     それでもアキラには不満を与えてしまったようで、膨れ面を作るとぐりぐりと腿に額を擦り付けてきた。それはそれで、別の感情が湧いてくるのでやめて欲しいが。
    「結局お前は何がしたいんだ」
     ブラッドは諦めて本を閉じると、アキラの脇に手を差し込み引き摺るように持ち上げた。抵抗はなかった。これでは本当に大型犬と言われても仕方ない。そのまま膝の上に乗せると、コアラの赤子のようにしがみついてくる。
    「お前が腹抱えて笑うところが見てえって言ってるだろ」
    「意味が分からん」
     もしや、甘えたい気分なのだろうか。それなら、最初から照れ隠しに悪戯などせず、素直に甘えれてくればいいものを。鼻先をくすぐる日の匂い。ブラッドは胸をむず痒くさせながらアキラの背に腕を回そうとした――のだが。
    「……」
     背中を、横腹を這う指先。こちょこちょと性懲りも無くくすぐってくるアキラに、ブラッドはげんなりとした顔を浮かべながら引き剥がした。「クソッ、これでもダメか」そう呟く悪戯小僧には反省の色などない。これには流石のブラッドも堪忍袋の尾が切れた。
    「えっ、わっ、ちょ……っ」
     長い指がアキラのタンクトップに滑り込み、滑らかな素肌を小刻みにする。腹、脇、首とくすぐれば、膝の上で体が面白いくらいに跳ねた。
    「ぶひゃひゃひゃひゃっ! は、はひっ、ブラッド、やめ……っ! あひっ!」
     倒れる体を抱き止めてソファーに転がし、指の動きを再開させる。アキラは必死に抵抗するが、力が入らないのか拙いものにしかならず。ブラッドはバタつかせる足を押さえつけ、タンクトップの中を執拗にくすぐり続けた。
    「ふひ、だ、めっ……ひっ、だめ、だ……って!」
     徐々に、アキラの目尻が涙で滲んでくる。喉を引き攣らせて声を漏らしているが、笑っているのか泣いているのか分からない。ピクピクと体を痙攣させてはくはくと動く口は、どうしても逢瀬の姿を想起させた。
     仕返しのつもりだったが、要らぬ欲が湧いてくる。股座がむずむずとする。指先が湿る素肌を撫でながら、くすぐりとは違う動きを見せ始める。
    「も、ほんと……やめっ」
     そのうち、アキラが振り絞るように猿臂を伸ばし、紫紺を掴んだ。少しやり過ぎたか。ブラッドは引っ張られる髪の痛みに手を止めた。同時に髪を掴んでいた手も開く。ブラッドは、馬乗りのまま胸を上下させるアキラを見下ろした。タンクトップを乱しながら(乱したのは自分だが)汗を滲ませ荒い呼吸を繰り返す姿は、事後のような気怠さを滲ませていた。
     恋人がそんな姿をしていれば(させたのは自分だが)肉欲が湧き上がるのは自然である。ブラッドは、タンクトップの隙間から輪を窄ませ、ぷくりと膨らみを見せている乳頭に指を伸ばした。しかし、触れるか触れないかの距離で「お、お、お……」と聞こえてきた呻き声に視線をあげる。アキラは涙を誤魔化したいのか、両腕で顔を隠していた。見える半開きの口が、小さく動く。
    「お……」
    「お?」
     首を傾げ、続きを待つブラッド。悪態でもつかれるのだろう。そう予想していたが、アキラから絞り出た言葉は想像とは違っていて。
    「お、お、お……お前が、しつこく、くすぐるせい……で、ちょっとだけ…………漏らした」
    「……」
    「…………」
    「……漏らした?」
    「ちょっ、ちょっとだけ! ほんのちょ~~っとだけだからな! 元々トイレ行くつもりだった、し……」
    「……」
     思わずポカンと口が開き、呆気に取られる。腕から僅か覗く頬や耳は真っ赤で、言われてみれば自分の真下にあるズボンは湿っているような気がした。気がしただけで、滲むほど漏らしてはいないのだろうが。
     わざわざ言わなければ分からなかったものを。素直に口にしたアキラの告白は、予想外にブラッドのツボを刺激した。笑いのツボである。
    「ふっ」
    「?」
    「く、くく……」
     なんだそれは。お前は幼児や犬か。言いたい言葉は全て、笑い声に変わっていく。
    「く、ははっ」
     一度笑い始めると止まらなくなってきた。こみ上げる感情のまま、震える腹筋を両手で抱えて蹲れば、呆けていたアキラは、はくはくと口をあけて笑い続けるブラッドを指さした。
    「ブ、ブラッドが口開けて笑ってる」
    「ふ……いや、笑っていない」
    「いや、笑ってただろ! 腹抱えて!」
    「笑っていない」
    「いいや、絶対笑って……」
    「またくすぐられたいのか」
    「ぐぬ」
     大人気ないと分かっているが、アキラの思い通りになったのを認めるのが癪で、意地になる。そして上体を起こし、悔しそうに噛み締める柔そうな唇へ、ブラッドは触れる程度の口付けを落とした。まだ悔しそうな顔をしていたが、顔を赤くしていたので、機嫌を損ねさせることは回避できたようだ。「ずりィぞ」と呟く言葉は、聞こえないふりをした。
    「それで、お前は何故そんなに俺が大笑いする姿が見たかったんだ」
     せっかくの痴態があるなら、少しぐらい楽しんでもバチは当たらないだろう。ブラッドは晒されたままの素肌に触れ、もう一度胸の頂きに指を滑らせた。残念ながら、もう先ほどのような硬さはなかった。アキラは輪を沿うように円を描く指をはたき落とすと、衣類を正して答えた。
    「前にオレとオスカーが卓球勝負してたら笑ってただろ。あのときは途中で逃げたから、ガチ笑いしてるブラッドをちゃんと見てーなって思っただけだよ」
    「……それだけか?」
    「それだけ!」
     ブラッドの下から這いながら抜け出したアキラは、そう言って立ち上がり踵を返す。どこへ行く。言葉にする代わりに腕を掴めば「トイレ、行きてーんだけど」とジト目が返ってきた。ブラッドは首を傾げ尋ねた。
    「本当にそれだけか?」
    「~~っ、お前の見たことねえ顔が、もうそれしかなかったんだよ!」
     尿意を思い出して近くなっているのだろう。内股になり屈む様子に、わざと掴む力を強くさせれば、アキラは半泣きになりながらあっさりと白状した。
     そんな理由か、と驚いたが、嘘を言ってるようには見えない。ブラッドはしばらく考えると、こちらを睨むアキラを見上げた。
    「……まだ、お前の前で泣いた姿を見せたことはないが」
    「あっ!」
     気付いたのか、口をあんぐりとあけるアキラに、また腹が震えだす。アキラの言い分は恋人の表情を全て見たいと宣言しているのと同じで、つまり独占欲を伝えているようなものだ。本人に自覚はないのだろう。だからこそ、可笑しい。可笑しくて、嬉しくて、笑い出したくなる。
     ブラッドは腕を離すと、ファンに見せるような爽やかな笑顔を携え言った。
    「お前がどんな方法で俺を泣かせるか、楽しみにしている」
    「ぐぬ~~!」
     揶揄われていると分かったのか、呻き声をあげながら地団駄するも、我慢出来なくなったのだろう。「覚えてろよ」と捨て台詞を吐きながらトイレへと走っていく。
     良くも悪くも、アキラはいつもこちらの想像を超えてくる。超えるより、斜め上から飛び込んでくると言った方が正しいか。ブラッドは次に彼がとる行動を考えて、それを楽しみにしている自分に微笑んだ。
     まさかその三ヶ月後別れを切り出され、怒りに問い詰めれば「泣くところが見たかったから」と言われるとは、思いもよらなかったが。
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