Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    2152n

    @2152n

    基本倉庫。i:騙々氏

    ☆quiet follow Send AirSkeb request
    POIPOI 94

    2152n

    ☆quiet follow

    ブラアキ。38×28、ブ引退後設定でクリスマスツリーを飾る話。
    スパークの無配でした。

    ##ブラアキ

    「フロスティは雪だるま、陽気で楽しい奴だった、トウモロコシのパイプにボタンのお鼻、炭でできた二つの目……♪」
     普段からは想像のつかない弾けるような美声が、軽快なリズムを刻みながら室内に音の彩を与える。アキラは陽気に歌いながらツリーに飾り付けしていった。
     それを一瞥しながら、ブラッドは渡されたオーナメントを手のひらで弄ぶ。コロコロと転がるサンタクロース夫妻は、マトリョーシカ人形のようによく太っていた。
     仲睦まじそうに身を寄せ合う二人を眺めていると、アキラから「遊んでねーで早く手伝え」と叱られる。手伝ってもらっている割には、随分偉そうな口振りだ。
     いつも彼の行動は唐突だ。研修期間が終わり、何の相談もなく家に転がり込んできた。その数年後には、部屋が狭いからと引越し先を見つけてきた。そして家具の揃ってないリビングを見回して
    「そうだ。何か足んねぇと思ったらツリーだ」
     と、言うなり家を飛び出し、一時間後にモミの木と大きな袋を担いで帰ってきた。思い立ったら猪突猛進な性格は変わらない。
     脚立に登ったアキラが手を差し出してくる。ブラッドは年齢の割に幼い手のひらに、オーナメントを乗せていく。その繰り返しだ。
     アドベントが始まり、どこもかしこもクリスマスムードが漂っていた。先程挨拶した隣の家も、庭にトナカイのライトスタンドが飾られていた。目抜き通りは夜になっても明るく輝き、寒さに身を縮める人たちの気分を明るくさせていく。クリスマスとは不思議だ。会ったこともないのに、イエス・キリストが生まれてきたことを誰もが祝っている。
     アキラはツリーを飾り付けしながら、しみじみと言った。
    「やっぱりクリスマスと言えばツリーだよな~。これが部屋になきゃ何も始まらねえ」
     前の家ではそんなこと一言を言わなかったくせに、調子のいい男だ。ご機嫌な背中に半眼を向けていると、アキラは思い出したように振り返る。
    「なあ、ブラッドってサンタ捕まえたことあるか?」
    「突然なんだ」
    「いや、お前ぐらい可愛げのないガキだったら、イブにサンタ捕まえようとするぐらいやってそうだなって」
     失礼な男だ。思わず呆れていると、アキラは
    「ちなみにオレは捕まえようとしたけど無理だった」
     と、残念そうに教えてくれた。ミルクとクッキーを用意して、椅子の座面に鼠捕獲用のシートを置いていたらしい。
     翌日、罠のことをすっかり忘れていたアキラが、貰ったプレゼントに心弾ませながら椅子に座った瞬間、シートに自分が捕まってしまったそうだ。
     その様子が予想が出来てしまい、ブラッドは苦笑する。そういえば、フェイスもサンタクロースに直接お礼が言いたいと、夜更かししていたことがあったか。ブラッドは懐かしさに目を細め、アキラが差し出した手に一際大きな星を渡すと言った。
    「サンタは捕まえなかった。だが、プレゼントの中身は親にバレないよう毎年こっそり開けていたな」
    「最悪じゃねーか」
     アキラはジト目を向けながら、星のオーナメントを頂点に乗せる。突発的に用意した割には悪くない出来だ。アキラも満足そうに頷いている。
    「さっすがオレ! 天才は飾り付けにもセンスが悪くねーな……♪」
     言いながら大きく胸を張るアキラは忘れていた。自分が脚立に立っていたことを。
     反らされる背中は元の位置に戻ることはなく、バランスを崩したまま後ろへと倒れていく。腕を振り回しながら落ちるアキラに、ブラッドは慌ててその体を抱き止めた。けれどサブスタンスのない普通の体では、一人の成人男性を支えるほどの力はない。
     アキラを抱えたまま尻餅をついたブラッド。眼鏡が飛んでいく。怪我はないようだ。
     ブラッドは胸中で安堵しながらため息を落とす。
    「気をつけろ」
    「悪りィ悪りィ」
     アキラは振り返って誤魔化すようにブラッドへ口付ける。調子のいい奴だ。
     二人の前では三メートル近いツリーが、煌びやかな姿を見せている。それを眺めながらブラッドは感嘆の息を漏らす。なるほど、初めはくだらないと思っていたが存外悪くない。
    「キレイだろ?」
    「ああ」
    「今年は十三期の皆を呼んでパーティーしようぜ」
    「ああ」
     また来年も、再来年もずっとクリスマスになればこの景色が見れるのか。それは幸福なことだと、ブラッドは小さく微笑んだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works