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    amei_ns

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    今日の進捗

     いろいろあった。
     そう、いろいろあった、のである。

     その結果、トールと呂布は付き合うことになった。いろいろとありすぎたためにそこに至るまでの経緯は端折ることにする。先に呂布に惚れたトールがその持てる限りの権力だの暴力だの人脈だのを、駆使したり行使したりして、いろいろな神や人間を巻き込み、告白をし、了承の返事をもぎ取った。のちに、大騒ぎになっていたことを知った当人であるのに蚊帳の外であった呂布は「別にお前が我に“好きだ”と伝えるだけでよかったのではないか?」と言ったとか言わないとか。まあ、神にもいろいろあるのだ。
     そんなこんながあり、二人は見事に付き合うことになった。
     しかし、それは前途多難であった。そもそも二人とも、他人と付き合うという段階を経るのが初めてなので付き合う、と言ってなにをしていいのかわからなかったのだ。それに、本来ならば一段跳ばしで、呂布を嫁に迎え入れようとしていたトールである。ほかの神から「人間はいきなり嫁にしようとすると嫌がるのでは」などの助言があり、嫁に迎え入れるのは一旦保留にして、その前の段階であるお付き合いとやらをしようではないか、となったのだった。それを後に聞いた呂布はどこのだれか知らないトールに助言を与えた神に感謝した。ただ、トールは保留にしただけで嫁にすることを諦めていないということを、呂布はまだ知らない。

     付き合うことになったが、することはしていた。なおこの“すること”というのは手合わせという名の殺し合い、あるいは死合いであり、エッチなことやスケベなことはまったくない。それが、トールと呂布の一番の交流の手段だった。たしかにそれはそれで楽しいが、それだと付き合う前と何ら変わりない。付き合いたいと言ったのはトールなのだから、トールの側からなにか提案しなければならなかった。トールは考えた。考えたがいい案がなにも浮かばなかった。そもそも、呂布に出会うまで、誰とどうこうなりたいとも思わなかったトールである。戦うこと以外のなにかを考えるのは不得手であった。せいぜい食事に誘うくらいである。その食事も、会話という会話が続かず、呂布が楽しんでいるのかどうかすらわからなかった。
    「それで? あの人間との進展はどうなの?」
     そうトールに尋ねてきたのはロキであった。トールにとってロキはあまり親しくしておきたくない相手だったが、受け答えだけはしていた。無視をすると、碌でもないことになるのを知っていたからである。
    「ない」
     トールは簡潔に答えた。
    「えっないの?」
    「ない」
     ロキはトールの返答に「あ、これ面倒だから適当に返事してるんじゃなくて、マジで進展がないやつだ」と直感した。
    「そりゃないよ、トールちゃん。トールちゃんのやったことで、どれだけ騒ぎになったかわかってんの?」
    「……わかっては、いる」
     目を伏せるトールに、ロキは盛大にわかりやすく溜め息をついた。
    「機微に疎い、恋愛にも疎い、疎いだらけのトールくんに僕からアドバイスをしてあげようか?」
     どう? と傾げているロキをミョルニルで打ち砕ければどれだけスッキリしただろうと思ったが、トールの腕はぴくりとしただけだった。それをアドバイスを聞く姿勢になったのと同意である。その様子に満足しつつ少し距離をとったロキは言った。
    「トールちゃんはそもそもなんであの人間と付き合いたいと思ったの? なにがしたかったの? いろいろあって忘れちゃってるかもしれないけど、それを思い出してみたらいいんじゃない?」
     自分がしたかったこと……と考えて、トールは思い出した。付き合うことが目標となっていたが、それは過程に過ぎなかったのだ。本当の目的は――
    「その様子だと思い出したみたいだね。うーんよかった、よかった」
     ロキが何事かを口走っていたが、トールの耳には入らなかった。目的を思い出したトールは、もうロキに用などない。くるりと背を向けて自らの邸に帰っていった。
     その背を見ながらロキは呟く。
    「トールちゃんってば、本当に、人間のことを好きになっちゃってるんだなぁ」
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