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    此処は最低 救いがない

    i:@nyanko_kawaiiii

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    POIPOI 9

    「くだらない汗はもうかかない
    だけど、君が笑ったら笑えそう

    君よ、統計学上の人にならないで
    君よ、統計学上の人にならないで」

    これ絶対文字じゃなくて絵の方が伝わるのでこれはあくまでメモです8月の晴れた日の夕方
    素足で波打ち際をゆっくりと歩く鷹弥
    鷹弥のサンダルを右手に持ち、自分の靴が海水に濡れないよう上手くかわす悠李
    鷹弥は悠李の5歩弱先を行き、後ろから見ている悠李
    波が鷹弥の白くほっそりとした素足に触れる度に、転がる鈴のような声で楽しそうにする鷹弥

    「悠李も靴脱いじゃいなよ」
    「俺まで足びしょびしょになったら誰が運転してかえるんだ?」
    「あっはは!そっかぁ」

    仕事と仕事の合間、たった数時間の空き時間だと言うのに、前の仕事が終わり助手席に乗り込んだ鷹弥は開口一番に「海に行こう!」と切り出した。
    お台場であればそう遠くもないしすぐに帰ってこられるであろうと踏んで承諾したものの、鷹弥は「由比ヶ浜がいいねぇ」と押すものだから俺は即座にナビの目的地を切り替えるしか無かった。

    受験を控えた中で18の誕生日を迎え、早々に言われたのは「悠李の車の助手席に乗りたい」といった旨で、一度ときかず何度もそれとなく言ってくる鷹弥に折れるようにして俺はすぐに近くの自動車学校へと通い始めた。
    アイドル活動と受験勉強と免許。やることが多すぎるだろとため息をつきたくもなったが、自動車学校の実技と筆記は意外にも難無くクリアし無事に免許習得に至った。
    お陰でこうして、空いた時間に白い王子の可愛いわがままに付き合うことができるようになったわけだ。

    アイルと理希は今、Luxarionのメンバーが週代わりで2人パーソナリティを務めるラジオの収録にあたっていて、今日も鯉のぼりの如く自由奔放に振る舞うアイルに理希が振り回されていること請け合いだ。しかし、乃々木荘で暮らし始めた頃に比べれば、理希のアイルに対する扱いは随分と慣れたものとなっていた。
    言わずもがな4人での仕事も多くあり、俺と鷹弥もこの後また別の現場に向かわなけらばならない。

    右腕に巻かれた時計が小さく振動する。

    「鷹弥。時間だ」
    「え〜?もうちょっと……」
    「遅刻する。海なんてまたいつでも来ればいいだろ」
    「いつでも?」
    「いつでも。俺が連れて来るよ。」

    満足気にふっと微笑み、足を止める鷹弥。
    優しくもぬるい風が鷹弥の白く痛みのない髪をふわふわと揺らし、髪と髪の隙間から夕日が差す。
    水平線を見つめる鷹弥の足首にまで波が寄せて返していた。
    「……綺麗、だな。」
    思わず口から溢れ出た言葉を鷹弥は聞き逃さなかった。
    「うん。綺麗。……この水平線がどこまでも繋がっているなんて、にわかには信じ難いよね」
    「そうだな。」
    海の話か、と安堵する俺に、鷹弥がポツリとつぶやく。
    「このまま、知らない場所に連れて行ってくれたら良かったのに」
    ザパ、と波の音がして、俺は、急いで言葉を探した。
    「行くぞ、鷹弥。」
    急くように左手を差し出すと、うん、と小さく返事をした鷹弥の右手が重ねられる。

    絶対にこの手を離さないと誓った日から、それが揺らいだことは1度たりともない。
    勝手に居なくなることなど、絶対にさせない。行き着く先がどこであろうと、宝条鷹弥の隣に、俺が死ぬまで居させて欲しい。
    いつもより少し熱いそれを、俺の感情が伝わってしまうことのないように、優しく握り返す。
    すると

    さっきまでの憂い気はどこへ吹き飛んだのか、ふふっと楽しそうに笑って
    「悠李!次は夜の海が良いな!夜ならお台場が良いかな。悠李は、どう思う?」
    「次はきちんと下調べをして、時間のある時にな。」
    「僕達なら、いつでも綺麗なものが見られるよ」


    あぁ、本当に、この人は。
    思わず零れる笑みを押し殺して、駐車場へ向かった。
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