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    yun0427

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    yun0427

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    新年あけましておめでとうございますアブシンです!!!
    未来捏造。小説のネタバレが少しあり。気になる方は読了後によろしくです。

    「なに見てるんだ」
    「んー……」
     年越しそばを茹でているキッチンからリビングを覗くと、クッションを抱き締めたシンがテレビに釘付けになっている。
     こんな年明けも間近なタイミングでシンが食いつくような番組なんてあっただろうか。年末年始の特番の録画予約するのに二人で番組表の雑誌を入念にチェックしたはずだが、覚えがなかった。
    「おい、シン。もうできるぞ」
    「んー……今行くー……」
     行く、と言いつつクッションを手放す気配も立ち上がる素振りも見えない。つゆの香りがキッチンにたちこめていて、晩御飯をしっかり食べたはずなのに腹が鳴ってしまう。
     そばはのびては美味しくない。せっかく久々に年末に日本に帰って来れたシンに美味しいそばを、とそば打ちを学んだというのに。
    「先に食え……なんだこれは」
    「ああごめん、食べる」
    「……アイドルか?」
     シンが釘付けになっていたのはたぶんアイドルだ。たぶん、というのも、芸能人には詳しくはないからだ。かなりの人数が映っているが、まさか全部同じグループというわけではないだろう……いや、女性グループでそういうのもいるというのをギンガから聞いたこともあるから断定はできない。
     画面に映るのは色とりどりの派手な衣装を着て、弾ける笑顔を振りまいて歌って踊る「男性」アイドルたち。
     すごく面白くない。シンがアイドルが好きなんて聞いたこともない。ギンガと知り合ってから多少知識は付いたみたいだが、テレビを見てるところなんて記憶にもない。
    「うわあ美味しそう! アブト食べないの?」
     キラキラ眩しい画面を見つめていると、シンはあっさりと立ち上がってダイニングに向かっていた。テーブルに並んだ器を覗き込んで歓声を上げている。テレビの電源を消してダイニングに向かった。
    「ご馳走様でした! アブト凄いね、そば打てるようになってるなんて思わなかった」
    「驚かせたかったからな」
     食べ終わったシンの顔が満足そうで、その顔を見れただけで努力は報われた。「お皿はオレが洗うよ」とシンが器と箸を下げてくれた。素直に礼を言いつつ、キッチンに並んで電気ケトルに水を入れた。
     年越しに良い酒を飲んでもいい年齢だけど、生憎俺は強くなかった。シンはそこそこに飲めるようだが、一人で飲むのは好まないようだから、お茶に付き合ってくれるだろう。
    「さっきさー……」
     数少ない洗い物を終えたシンが、シンクに腰掛けるように持たれている俺と同じ体勢になった。足元を見ながら、どこか声が沈んでいるようだ。
    「アイドルのカウントダウン見てたんだけどさ。もう全然誰もわかんないんだ。昔はアユ姉に付き合って見てたから結構知ってたのに」
     クロスした足の、前の足を少し持ち上げてぷらぷらとスリッパを揺らす。その仕草が寂しさを感じてるようにも、拗ねてるようにも見えて、たまらなく抱き締めたくなった。手を引いて腕の中に囲い込む。
    「……望んで行ってるのにさ、離れて長いんだなあと思うと……ちょっと寂しくて」
    「今も?」
    「アブトの顔見たら全部吹っ飛んだよ」
     可愛いことを言ってくれる。
     でもわかるぞ。肩に額を擦り付けてくるのも、緩い抱擁も、寂しさをアピールしているのを。
     年齢を重ねた分シンは嘘が上手くなった。特に自分の感情を隠すのが。だから俺はその何倍も暴くのが上手くなった。シンの感情は全部俺が受け止めるって、あの時決めたから。
    「俺はお前と共にある」
    「……うん」
    「俺達の想いは宇宙一だろ」
    「……アブト、そんなこと言えるようになったんだなぁ」
     言うなよ。恥ずかしいのは恥ずかしいんだぞ。でもシンの声が弾んできたから。甘えるように首に顔を埋めてきたから。そんなご褒美があるならいくらでも言ってやる。
    「気持ちは真っ直ぐに伝えないと不安がるからな、お前」
    「……どんなイケメンアイドルより、アブトがやっぱり特別かっこいいな」
     軽く背伸びして頬にキスしてきたシンは、もういつものシンだった。
     抱き締める力を強めようとしたが一瞬早くシンが腕からすり抜けていった。
    「除夜の鐘だ! 何年ぶりだろ」
     肩透かしをくらって少し残念だったが、この鐘がなりやむまでは大人しくしていよう。百八の鐘を聴いたくらいじゃ煩悩なんて消えないけれど。
    「アブト、初日の出見に行けるかな! 起きれる? そのまま初詣も行こうぜ!」
     久々の日本のお正月を堪能しようとしているシンを邪魔したくないから。
     窓ガラスに手をついて鐘の音が聴こえる方へ視線を向けているシンを、今度こそ後ろから抱きしめた。
    「全部しよう。シンがやりたいこと全部」
    「はは、オレだけじゃなくてアブトのやりたいこともやろうな」
     肩に頭を預けてきたシンが、片手をあげて頬を撫でてきた。甘えるようにその手に擦り寄った。
     離れている時間は確かに寂しいが、その時間があるから会えた時の喜びもひとしおだ。もちろんずっとそばにいたい。でもさっき自分で言った言葉も嘘じゃない。世界の破壊神だろうが侵略者だろうがイケメンアイドルだろうが、誰であっても俺達の間には入れないんだから。
    「アブト、あけましておめでとう」
    「あけましておめでとうシン」
     新年が明けて、顔を見合わせた。こんな距離で新年の挨拶挨拶が出来たのは本当に久々だ。そのまま少しだけあった距離をゼロにする。
     去年も今年も、これからもずっと。よろしく、シン。
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