Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    るい(と)とうふ

    @rui_and_tofu

    rui(字)ととうふ(絵)の合同らくがき置場。二次のみ。ジャンル雑多。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 👏 💌 🍩 🍺
    POIPOI 8

    るい(と)とうふ

    ☆quiet follow

    子供時代の百之助、独白。【即興二次(21/06/08分)/お題:僕の昼/執筆制限時間:30分】

    #ゴールデンカムイ
    Golden Kamuy
    ##gkm

    僕の昼 昼は──
     お日さまが、空の高いところにあるじかんだ。

     ばあちゃんは、畑にいる。
     じいちゃんは、山にいる。
     おれはときどき、こっそり雉を撃ちにいく。
     じいちゃんの銃だから、見つかったらしかられる。

     家にいるより、生きものを撃っているのがたのしい。
     母は寝ている。
     そうじゃなければ、名前をよんでいる。
     おれのこともあるし、ばあちゃんのこともある。
     母は、じいちゃんのことをあまりよばない。
     母は、ばあちゃんのことを、かあちゃん、とよぶ。
     ばあちゃんは、母の母だからだそうだ。
     おれが母をかあさんとよぶと、
     母は
    「百之助。あなたは言葉をていねいに。母上様とおよびなさいね」
     としかる。
     でも、おれはかあさんとよぶ。
     かあさん、と声にだすとき、おれはあんまり、かあさん、とおもっていない。
     母、とおもっている。
     母はきづかない。

     母はときおり、しらないひとの名前もよんだ。
     ちがう。
     ほんとうは、しらないひとの名前をよぶときが、いちばんおおい。
     おれは、その名前をきくのがすきでない。
     母がその名前をよぶと、ばあちゃんも、じいちゃんも、きこえないふりをする。
     死んだひとのだから、えんぎがわるいのだそうだ。
     嘘だ。

     おれは、昼があまりすきでない。
     生きものを撃つには、明るいほうがいい。
     よく見えるし、だから、弾も当たる。
     でもそれは、生きものからも、おれが見えているということなのだ。
     おれは、見えたくない。
     家にいても、おれはあまりいない。
     母は、おれが見えないときが、たくさんある。
     見えなくていいのだと、じいちゃんがいった。
     ばあちゃんは泣いたけど、そうなのか、とおれはおもった。
     だから、見えたくない。
     夜がすきだ。
     夜に撃つのは、いっとうきもちいい。
     昼から待つ。
     じっと待つ。
     真っ暗の、そのまた真っ暗になる。
     こわくなんかない。
     真っ暗は、おれのものだ。
     おれがだれだかわからなくなるまで、じっと、じっと、待つのだ。
     すると生きものは、おれがいなくなったとおもって、ほんとうの、嘘でないすがたになる。
     そしたら、殺す。
     ほんとうのすがたになると、生きものは死にやすい。
     だから、死んでいるやつは、ほんとうのすがただとおもう。

     昼は明るい。
     明るいところでは、みんな嘘をつく。
     おれは、ほんとうになるまで
     じっと待つ。


    (了)
    Tap to full screen .Repost is prohibited

    るい(と)とうふ

    TRAININGひとごろしと、月島。と、ちょっとだけ尾形【即興二次(21/06/16分)/お題:汚れたクリスマス/執筆制限時間:30分】(※色々と捏造含みます)
     人は罪深く、けれど神はすべてを赦したもう。と、目の前に転がる男は言った。清廉な瞳をした、ハキハキと歯切れよく喋る、気持ちの良い青年だった。
     裏表なく人に優しい。義に篤い。教養も深い。それでいて、文化的知識人インテリゲンチヤにありがちな偉ぶったところがひとつもない。知らぬ者には惜しみなく知識を与え、侮ることもなかった。
     トルストイという露西亜の大作家が戦争に向かう祖国を批判し、暴力断固反対の声明を発したという話は、彼から教えられた。
     元々は神戸で貿易業を営む裕福な商家に生まれた長男だったらしい。偶然おとずれた函館で宣教師と出会い、強く感銘をうけた。自身もまた神に仕えたいと言い出した彼に、当然ながら両親は激怒した。溝は埋まることなく、ほどなく彼は勘当された。しかし彼の真摯な信仰は誰の目にも明らかで、遊びや気の迷いと一蹴されるようなものではなかった。結局、折れたのは両親だった。そして両親もまた、いつしか神の御前に帰依するようになったのだと彼は語った。
    2343

    related works