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    rito_suzuhara

    @rito_suzuhara
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    rito_suzuhara

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    書きたいとこだけ書いたフォルソロ
    ネウスさんをキラキラに書きたかっただけ

    #フォルソロ
    forsoro

    〆72 フォルソロ

     温かな日差しが心地よい、午後のことだった。その日は特に用事もなく、ソロモンは久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしていた。それでもアジトに関わる雑事は多い。部屋でぼうっとしているのも良かったが、少し体を動かしたい気分だった。そろそろ洗濯物を取り込む時間だろうか。何かしら手伝うことはあるだろう、とソロモンは腰を上げ、物干場へと向かった。
     中庭は鍛錬に使っていることが多いため、洗濯物を干す場所はアジトの上の方にある。石造りの床を歩いていくと、ふと風がソロモンの頬を掠めた。アジトは砦であった構造上、建物の中に風が吹き込むということはあまりない。どこかの部屋で窓を開けているのだろうか、と視線を巡らせると、細く扉が開いている部屋を見つけた。誰もいないのであれば閉めておこう、とソロモンは部屋の中をのぞき込む。
    (――フォルネウス?)
     窓が開け放たれている部屋の中には、フォルネウスがいた。窓の側に小さな机と椅子が置かれてあり、彼はそこに座っている。少しうつむいた横顔の視線は手元に落とされていて、書物を読んでいるのだと知れた。窓にはカーテンがかかっていたが、薄く織られたそれは陽光を柔らかく透かしている。
     太陽が中天を下りる頃の、暖かい光がフォルネウスの金色の髪の毛を照らしている。陽を透かしたそれは、彼の輪郭をほの明るく光らせていた。光が輪郭を溶かして、白く溶けていってしまいそうにも見え、ソロモンは彼から目が離せなかった。フォルネウスがゆっくりと金の睫毛をまたたかせると、光の粒が弾けるようにも見える。海の底を覗くような色の瞳が、ひどく緩慢にこちらを見た。射止められたように、ソロモンはその場を動けない。
    「そんなに見られると、穴が空いてしまうよ。親友」
     撓められた目と、優しげな微笑み。甘いとすら思えるような声音で、フォルネウスは言った。栞も挟まずに本を閉じたのを見て、ソロモンは申し訳なさそうに眉を下げる。
    「あ……ご、ごめん。邪魔するつもりはなかったんだ」
    「いいさ。キミより優先すべきことは何もない。……それで、ボクに何か用事があったのかな」
     そう言われて、ソロモンは返事に困ってしまう。別段用事があって彼を見ていたわけではないのだ。
    「用事は何もないんだ。風が吹いてたから、窓が開いているのかと思って」
    「そうか。……うん、少し冷えるかもね。閉めておくよ」
     吹き込んできた風でカーテンがふわりと翻る。薄い布がフォルネウスの顔を半分隠して、彼の手袋をした指がそれを払った。ソロモンの方を向いていた顔が窓に向いて、ぱたんと窓が閉められる。カーテンはゆっくりと裾を下ろし、ひそとも揺れずに薄く光を遮った。フォルネウスの視線が再び此方を向く動きが、ゆっくりとして見える。ソロモンは僅かに琥珀色の目を細めた。
    「――フォルネウスは、綺麗だよな」
    「え?」
    「え、……あ」
     フォルネウスが僅かに目を丸くしてソロモンを見て、そこで自分が思ったことをそのまま口に出していたのだと気づいた。何となく気恥ずかしくなって、ソロモンははにかんで笑う。
    「ハハ、ごめん、っていうのも変だな。つい思ったことを言っちゃっただけでさ」
    「嬉しいよ。他でもないキミにそう言ってもらうのは」
     穏やかな声音だった。そこで会話が少し途切れ、柔らかな静寂が空間を包む。フォルネウスは変わらずソロモンを見ている。彼がまっすぐにこちらを見ているのを感じ、少しそわそわとした気持ちになる。先程のフォルネウスも同じような気持ちだったのかな、とソロモンは思った。
    「……ならよかった。フォルネウスの髪の毛がさ、光に透けてキラキラして綺麗だったから……もちろんメギド体も大きくてかっこいいけどさ」
    「親友。ボクはキミも綺麗だと思うよ」
     ソロモンがそう言うと、フォルネウスは小さく微笑む。
    「ええ? 俺が?」
    「見た目のことだけじゃないよ。……魂が。今まで見てきたヴィータの中で、キミが一番綺麗だ」
    「え、あ……フォルネウス、俺の魂が見えるのか?」
     フォトンが視えるソロモンは、肉体のくびきから離れた魂は視えるが、肉体の中にある魂は視えない。フォルネウスは肉体の中の魂も視えるのだろうか? 驚きの声を漏らすと、フォルネウスは微かな苦笑を唇に乗せる。
    「いいや、見えないよ。ボクがそう感じるということさ」
    「あ、ありがとう……?」
     戸惑いながらもそう返すと、フォルネウスはにっこりと笑った。魂を褒められたのは初めてだ。ヴィータであるソロモンにとってはあまり馴染みのない讃辞だったが、不思議な嬉しさが胸に広がる。
    「なんだか照れるな。でも嬉しいよ」
     フォルネウスは閉じた本をテーブルに置いたまま立ち上がった。
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    rito_suzuhara

    CAN’T MAKE書きたいとこだけ書いたフォルソロ
    ネウスさんをキラキラに書きたかっただけ
    〆72 フォルソロ

     温かな日差しが心地よい、午後のことだった。その日は特に用事もなく、ソロモンは久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしていた。それでもアジトに関わる雑事は多い。部屋でぼうっとしているのも良かったが、少し体を動かしたい気分だった。そろそろ洗濯物を取り込む時間だろうか。何かしら手伝うことはあるだろう、とソロモンは腰を上げ、物干場へと向かった。
     中庭は鍛錬に使っていることが多いため、洗濯物を干す場所はアジトの上の方にある。石造りの床を歩いていくと、ふと風がソロモンの頬を掠めた。アジトは砦であった構造上、建物の中に風が吹き込むということはあまりない。どこかの部屋で窓を開けているのだろうか、と視線を巡らせると、細く扉が開いている部屋を見つけた。誰もいないのであれば閉めておこう、とソロモンは部屋の中をのぞき込む。
    (――フォルネウス?)
     窓が開け放たれている部屋の中には、フォルネウスがいた。窓の側に小さな机と椅子が置かれてあり、彼はそこに座っている。少しうつむいた横顔の視線は手元に落とされていて、書物を読んでいるのだと知れた。窓にはカーテンがかかっていたが、薄く織られたそれは 1953

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     中庭は鍛錬に使っていることが多いため、洗濯物を干す場所はアジトの上の方にある。石造りの床を歩いていくと、ふと風がソロモンの頬を掠めた。アジトは砦であった構造上、建物の中に風が吹き込むということはあまりない。どこかの部屋で窓を開けているのだろうか、と視線を巡らせると、細く扉が開いている部屋を見つけた。誰もいないのであれば閉めておこう、とソロモンは部屋の中をのぞき込む。
    (――フォルネウス?)
     窓が開け放たれている部屋の中には、フォルネウスがいた。窓の側に小さな机と椅子が置かれてあり、彼はそこに座っている。少しうつむいた横顔の視線は手元に落とされていて、書物を読んでいるのだと知れた。窓にはカーテンがかかっていたが、薄く織られたそれは 1953