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    amor_fati_sora

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    amor_fati_sora

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    ぷらいべったーから移動。
    ポイピクで続けようと思います。
    ラスト15行ほど追加してますので、ベッターの方ご覧の方は最後だけ読んでくださっても💦
    ===
    王アグと見せかけてのランアグ導入。アッ君視点。
    アッ君右側にいがち…。
    続くかはちょっとわからないですが、よろしければ…。
    タイトルがあまりにベタなので適当なものを思いついた時点で改題すると思います。
    すみません。
    ※現状全年齢向け

    夢に咲く花_A夕刻に向かおうとしている時間のこと。
    本日の定時報告を言上し終えた私に、陛下が満足げに頷かれた。
    アグラヴェイン、ご苦労であった、というお言葉に一礼し、立ち上がる。

    吹き込んできた涼風に軽く目を細められた陛下が、窓の外に目を向けられた。
    幅を広くとった窓から望める、この居城からゆるやかに下る丘陵、その先に広がる畑、点在する農家。
    わきに伸びる川を渡って先にはささやかながらも市の立つようになった居住地域がある。

    かつての我らが夢であったキャメロット。
    その夢の轍を追うように、私たちはまた我らがアーサー王陛下と、円卓の騎士として現界を果たしていた。
    我らがこの世界に現れる前の戦いによって国が破綻し、幾つもの集落として各地に点在していた民らをまとめ、農耕が、それから商売が成り立つように村や街を、土地を整えていくのは王にも、そして我々にとっても充実した日々であった。

    やがて。
    我らが治め始めた地の外敵も見えてくる。
    害獣の類、条件の厳しい気象。
    また、他地域を治める国の隆盛なども。

    窓辺によって城下を眺めていた陛下が、夢だな、と静かに嘆息する。
    掌の上で繰り広げられる、ごっこ遊びのままごとのような幸せな夢を、私たちは見ていた。
    同輩が、まったくもって代り映えのしない円卓の面子というのは難点と言えなくもないが、逆に言えば私にとって彼らのあしらい方は心得ていると言っていい。

    そんな、忙しくも穏やかな日々の中で私の霊基に綻びがあると最初に気づいたのは陛下だった。
    ほぼ同時期に、私自身もそのことを自覚することになる。
    ほんのわずかな身体の重さ、といえばいいだろうか。
    私という存在を成り立たせている要素を束ねる、扇子で言えば要がわずかに緩みかけている。
    そんな些細な違和感があった。

    切羽詰まっているわけではない。だがどの時点でか対処はせねばなるまい。
    どうしたものか、と思いつつ手段について考えを巡らせていた。


    そして今日。
    王の御前を辞しようとした私に、陛下がふと思い出した、と言わんばかりの調子で
    時に、アグラヴェイン、と声を掛けられた。
    は、と顔を上げる。

    「卿はこの後の予定は」
    「次の戦いの兵糧についての算段を」
    「……相変わらずだな。きちんと休みはとっているのか?
     卿の霊基のほころび。気づいておるな?」
    「……恥ずかしながら」
    「王命である。
     我が寝所に来るがいい」
    「……それはなりません」

    違和感程度の些細な我が不調などに、いち早く気づかれる王の慧眼に内心舌を巻く。
    「……消滅は許さんぞ」
    「無論。
     ですが、ほかに方法がないわけではありますまい」
    「私が相手をするのは嫌か?」
    「いえ。
     ただただ畏れ多く」
    「では、いかにする?
     私に任せた方が確実かつ強力だが」
    「……畏れ多い」

    王を煩わせて生き長らえるくらいなら、私など消え去っても構わない。
    ……だが。
    この国の行く末を見届けたい、王に、形を得たその理想の国をこの手で献上したい。
    その想いはもちろん深く胸にある。

    「適当なサーヴァントにでも……」
    「卿が?
     適当な相手に身を任せると?」
    「……では、霊脈の強い土地に……」
    「半月ばかり埋まってくるつもりか?
     実際的ではないな」

    言葉に詰まった私と陛下の間に落ちた沈黙を破るように、取次の小姓が失礼致します、と扉口に直立した。

    「ランスロット卿、遠征より帰還されます!」
    そうか、と王がそちらを見やる。

    騎士の中の騎士、サー・ランスロット。
    彼が語られるときに私について言及されるとは限らないが、私が語られる際には必ずと言っていいほどに彼の騎士の名が付きまとう。
    王ほどではないにしろ、その名を冠した物語すら多く持つその男は、己の存在の強度についてなど考えてみたこともないだろう。

    翻って、私などは独自に物語られる事は少なく、他者が物語られるときにその登場人物として語られるのがほとんど。
    剥片の寄せ集めのような存在。
    ……それゆえ、外的に、また内的にも何らかの影響を受けることがあれば綻びを生じさせることも往々にしてある。
    成り立ちの弱さは、常に私の現界には付きまとってきた。

    だが、それがなんだろう?
    ここにはもう母の影はなく私を必要として呼び寄せたのはかのアーサー王なのだ。
    幸い。
    これ以上の幸いを私は必要としない。

    物思いにふけりかけていた私を、王が引き寄せ額に手を当てられる。
    重い、とも思えるほどの気を流し込まれたのが分かった。

    「…お手数を…」
    「よい。これで暫くは持つだろう。
     手段とやらを考えるがいい。
     卿が自ら何とかしようとせぬなら問答無用で私の魔力を分け与えるからな?
     心するがよい」
    「…はっ…」

    感情抜きで身体を重ねたとしても霊的な繋がり自体は生れる。
    いくらかの煩わしさと、己の存在の不確かさに苛つきを覚えはするが王に言われるまでもなく何か手段を考えねばならなかった。
    直接的に魔力の提供を受けるとして、相手はある程度強力なサーヴァント、とすれば選択肢はさほど多くない。
    後腐れのない相手か…と嘆息した。

    ややあって、物々しい甲冑の音を響かせながら彼の騎士が王の元へと現れた。
    王の御前から身を引いて彼に場を譲る。

    それから無事の帰城と遠征の成果について王に言上を済ませたサー・ランスロットと共に、私も王の御前を辞した。
    ふと魔が差した、とでも言えばいいだろうか。
    我ながら有り得ぬ相手に向かって、私は口を開いていた。

    「卿は……。
     恋愛感情抜きで閨事を行うことは可能か」
    「……唐突だな」
    「失礼。
     侮辱している訳ではない。単なる質問だ」
    「……事情によるね」
    「その者が、それを行わねば生死に関わるとしたら?」
    「魔力供給を必要としている場合などかな。
     それであれば、……私で良ければ。
     望まぬものを抱く趣味はないが、その、彼女なり彼なりがそれを受け入れているのならば手を貸すこと自体は出来ると思う」
    「…仮に、それが私だとしても…?」

    陽が陰って薄暗がりになりかけた城の廊下。
    彼の男が目を見開いて私の顔を凝視した。


    ランスロット卿が幾度か口を開きかけては言い淀み、やがて、
    「……事実なのだな?」とそれだけを問うてきた。
    私が詰まらぬ冗談や純粋に仮定でしかない話などするような性格ではないことに思い至ったのだろう。

    すい、とごく自然な動作で私の手を掬い上げ、
    「私でよければ、力になる」そう言った。
    反射的に引きかけた手を、それでは流石にあまりにも不躾だろうと思いなおして彼の手に自分の手を預ける。
    何を思ってか幾らか頬を染めた男の白皙に、
    面倒をかける、と薄く笑んで見せた。

    「その……、早い方がいいのか?」
    「一日二日を争うほどではない。
     今日のところは卿もお疲れだろう。まずは遠征の疲れを癒されるといい」
    「ではこの週末にでも」
    その言葉に、承知した、と頷き返して彼に背を向けた。
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