元旦_Aいつの間にか空調が落ちていたのだろうか、しんと冷たい空気の中で目を覚ます。
とはいえ、首元まで布団をかぶり、その布団に頭まで潜るようにして眠っている騎士に胴を抱かれていて、寒さは全く感じなかった。
彼を起こさぬように身を起こして東側の窓に目を向ける。
日はまだ昇っておらぬようだが、空はもう白みがかっていた。
連なる城下の街並みとそれを守る城壁、その先に広がる平原と森。
その際が柔らかな光を帯びてゆく。
布団を蹴り脱いで、ふるっと身震いしているランスロットの鼻先を軽く摘まむ。
何を…、と抗議してくる彼に顎をしゃくってあちらを見ろ、と促した。
起き上がりながら窓の外に目を向けた男が、ああ、と感嘆の息を吐く。
「…美しいな」
暗い緑に沈む森の影を押し開くように、鮮やかな初日が姿を現そうとしていた。
私の腹に腕を回して抱き寄せる男の胸に背を預ける。
この年をこんな風に明かすことになろうとは、一年前には想像もしていなかった。
傍らに体温のあることを当たり前のように受け入れている自分に心底驚くというものだ。
しかもこんな人理の影法師、本質は変わらぬはずのサーヴァントとなってから。
頬に鼻先を押し付けられてそちらに目を向けた。
今年もよろしく、と囁く彼にそっと唇を覆われる。
唇は合わせたまま、私はそれに笑みの形を刻んだ。