照れ隠し「ーーーーごめん、好きな人がいるんだ。」
ジリジリ肌を焼くように照らす太陽に嫌気が刺す。肌が赤くなりただ痛くなるだけのそれに何度悩まされたことか。校舎裏に逃げてしまった猫を追いかけ、じわりとワイシャツに染みる汗に気持ち悪さを覚えていればそんな言葉を耳にしてしまった。
ーーあぁ、神様。これは告白する勇気すら出せなかった腰抜けの俺への天罰か何かでしょうか。告白していても同じ結果だったなら、と諦めがつくこのネガティブ思考もそろそろ辞めたいところだ。
高3の夏。アイツへの恋はそこで終わった。
そいつと出会ったのは高1のクラス替えのタイミングだった。俺なんかにやけに構ってくる、いわゆるお節介をしたいだけの奴なのだろうと勝手に思っていた。しかし、他の奴とは淡白で1歩引いた関係を築いていることを知り、単純な俺は特別扱いが嬉しくてそいつと一緒に過ごすようになった。一緒に過ごすと言ってもそいつが犬のようについてくる感じだったが。
「伏黒〜!メシ食おうぜ!」
人好きのする笑顔も、
「うわ!かわいい!伏黒!大型犬!!」
動物が好きなところも、
「…大丈夫?無理すんなよ」
俺にだけ優しいところも、全部好きだった。アイツはノンケで、こうなってしまうことは最初から分かっていた筈なのに。
「…あの、虎杖くん、好きです……」
人生何度目かの告白の場面。緊張した面持ちで、顔を真っ赤にして一生懸命想いを伝えてくれている。その真っ直ぐな気持ちがあれば、俺も伏黒に告れているのかな、なんて自分が告白されてても思い出してしまうのは愛おしい彼のことで。今までは軽い気持ちで女の子と付き合っていたけど、今俺には夢中になっている人がいる。
「ごめん、好きな人がいるんだ。……気持ちはマジで嬉しかった。」
「ーーそっかあ。気持ちを伝えられてよかった。勝ち目なんてなかったし。」
緊張してた割にはあっさり受け入れている彼女を不思議に思っていると、
「ーー伏黒恵くん。」
といきなり彼の名前を挙げられた。
「……………、ぇ、…?」
「それ、照れ隠しでしょう?」
ーー彼の話をすると耳たぶ、触るよね。
「………嘘」
「皆にはバレバレだけど、彼は知らないと思う。」
「ーーうわあ…分かりやすすぎかよ…ウン…そう………なんだ…」