月から来た人 ロイドたちシルヴァラントの神子一行がテセアラに来て間もなくのころ。メルトキオからサイバックへ向かう道中だっただろうか。
野営の準備をしているときに空に浮かぶ丸い月を、ロイドが不思議そうに見ていた。
「どうしたよ、ハニー? 食い入るようにお月さまなんか見ちゃって」
ゼロスは軽口を叩きながらロイドの肩に手を回した。女の子への口説き文句でも考えてたのか、と茶化す。ロイドがそんな性格ではないことは、出会ってからの数日で理解していた。単純に揶揄いたいだけだ。
「……テセアラからでも、月は見えるんだな」
しかし、ロイドの反応はゼロスが予想していたものとは違った。まさか完全にスルーされるとは思ってなかった。
「なあ、こっちでも月のことは『テセアラ』って言うのか?」
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