もし若♀ガチ勢の佛跳牆たちが邂逅したら●ゆかり空桑佛視点

　何処となく自分と似ている男が、ベンチに座って携帯の画面を食い入るように見つめていた。容姿は大層整っているというのに、目が痛くなりそうな程の明るい桃色のＴシャツを纏っている。
　顔が似ているせいか、容姿と服のセンスの差に何とも言えない気分になっていると細く長い指が、ゆっくりと画面をスクロールし始めた。
　一体、何を見ているのか。
　無性に気になってしまい、行儀が悪いことだとは思ったが、ベンチに座る男の背後を足音を立てないよう慎重に通る。
　チラリと視線を携帯に向けるが、携帯の画面は小さく、しっかり見ることは叶わない。
　しかし、着替え中や睡眠中の少女の写真などで画面を埋め尽くしていた。
「これは……」
　〝気持ち悪い〟という言葉を飲み込んだが、思わず漏れた声が男の耳に届いてしまったらしい。画面に釘付けだった男はゆっくりと振り返り、色の異なる２つの瞳を細め、鋭い視線をわたしに向けてきた。
　その瞬間、わたしにとってこの男は天敵なのだと悟った。


●もずくさん空桑の佛視点

　愛しい少女をこんな小さな画面越しに眺めるのは、なんとも勿体ない気持ちになる。
　しかし、普段わたしには見せてくれない貌を、こうして間近で鑑賞できるうえに、独り占め出来るのだから悪い気はしない。
　携帯の液晶をタップし、寝ぼけ目を擦りながら首を傾げる少女の写真を映し出して頬を緩める。愛らしいその姿に、叫び出したい衝動に駆られるが人気はないとはいえ屋外の公園でそんな事をする訳にはいかない。
　次はどの写真を鑑賞しようかと数千枚に及ぶフォルダ内の画像をスライドしていると、背後から視線を感じて顔を上げる。
　まさか携帯の中身を見られたりはしていないだろうか。
　内心焦りながらゆっくり振り返ると、愛しい少女にそっくりな顔が大きくプリントされたＴシャツが視界に入る。そしてそれをジーンズにＩＮしていた。なんて酷いファッションセンスなのだろうか。
　しかもわたしにどこか似ているような気がして、白目を剥きそうになる。あまりの衝撃に呆然としていると、その男は此方に侮蔑の視線を浴びせていた。
　とりあえず、そのＴシャツはどこで購入したのか。視線よりも男が着ているシャツの方が気になって、口を開いた。