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    kemuri

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    kemuri

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    軸のずれた世界で真っ直ぐに立てるはずなんかない/フロリド

    ベッドから落ちた。それはもう、盛大に派手に。
    足が立たないとは聞いていたが本当にこんな生まれたての子鹿のようになるのか、と驚き半分絶望半分で床にへたり込んでいた。
    「ん……、金魚ちゃ…んうわ落ちてる大丈夫」
    尻もちをついた時に結構な振動を響かせてしまったのか、さっきまで隣で寝ていたはずのフロイドを起こしてしまったようだった。
    「す……すまない、目が覚めて……水を飲もうと思って……」
    「謝るのはオレの方だから!無理しないで!どこかぶつけてない待って今抱っこするから」
    「いい!大丈夫だって、これくらい!」
    大丈夫なわけがない。現に今、足の震えに加えて尻もち以外の腰回りの痛みがじわじわと襲ってきている。こんなことになってしまうなんて、ほんの数時間前には想像もしてなかった。いや最中に『こんなことをして壊れてしまったらどうしよう』と思ったのはうっすら覚えているけれども……。
    「見栄張らないでよぉ、ほら手ェ掴まって」
    うぎぎぃ……という呻き声が出てしまうくらいには屈辱的だ。なんだって人の手を借りなければ立てない状態になってしまっているんだ。
    「ぜんぶ、フロイドのせいだ……」
    掴んだ腕を引き寄せて、両脇を抱えられ持ち上げられて、そのままぽすんとベッドの上に戻される。ついでに反対側にあった水の入ったボトルを渡されて一息で半分くらいまで飲んで、キャップを締めながら声を絞り出した責任転嫁の言葉。
    「うんうん、そうだねぇ、オレが無茶させたねえ……」
    もちろんフロイドだけのせいなわけがない。自分だってそのつもりでやることをやったのだし、これはただ恥ずかしさを誤魔化すために言っただけで。それなのにフロイドはボクの脚や腰を労うように優しく撫で、眉が下がりきった心配そうな表情でこちらの顔を覗き込んでくる。居た堪れない。
    「……っ、ボクだって悪かったさあんな、……あんな夢中になって、自分の限界なんか知らないで、……耽ってしまったのだから」
    はじめてだったのに……と消えるように続けて視線を横に向ける。
    「ううん、オレがハジメテの金魚ちゃんに無理させたのわかってるし、気にしないでよ。……次も同じことするかもしんねーけど」
    スッと細くなるゴールドとオリーブの両眼。ゾクと背筋が泡立った。
    「つ、つぎ……」
    「そ。来週とか、もっと早くてもいいかなあ。ね、いつにする?」
    「いつって…待ってまだそんな……」
    ぐっと抱え込まれ彼の腕の中に収められてしまう。
    「えっちなこと知らない金魚ちゃんはもういませーん。だからきっと、すぐ欲しくなるよ」
    「そ、そんなこと」
    無いなんて言えない。今までとすっかり世界が変わってしまったのだから、また次も足腰が立たなくなるまで耽ってしまうのだろう。
    「……もっと優しくするんだよ」
    「アハ、ゼンショしま~す」
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