ソロジャーナル『魔法骨董ここに眠る』リプレイ2022/08/09 20:24
【セットアップ】初⼿でいきなりジョーカーを引いた。待って♡ チェックしてから気を取り直して改めてカードを引く。
【道具の形】♠1「守るもの」
【魔法の効果】♥10「隠蔽」
【魔法の程度】1D6 (1D6) > 1「ちょっとした効⽤」
『花嫁のヴェール:とある名家へ嫁ぐ花嫁に代々伝えられた真珠⾊のヴェール。⽇差しをふせぐだけでなく、秘密の呪⽂を唱えると⼩1時間ばかり透明になることができる(連続使⽤は不可能。再使⽤までは24時間ほどかかる)。妻や⺟の役割に疲れた女性の気分転換に利用されたらしい』
【リーディング】1D6 (1D6) > 5:カードを5枚引く
♣2「持ち主やその隣⼈、あなたにとって好ましくないこと」「持ち主が何かに悩んでいた。または決断した。どんなことをだろうか?」
私の最後の主⼈は私を⽤いて私たちの屋敷から逃⾛した。彼⼥はさらわれた花嫁だった。彼⼥は彼⼥の境遇を厭い憎み呪い、ついに傲慢な夫から逃げ出した。私は黙って彼⼥に従った。私は何処までも花嫁の味⽅なのだ。
♣9「持ち主やその隣⼈、あなたにとって好ましくないこと」「⻑い間放置されたり、しまわれたりしていた。どれぐらいの時間だったのだろう? また、何がその状況を変えたのだろう」
最後の主⼈は脱⾛の以前から私をたびたび利⽤する機会があった。それだけ彼⼥は彼⼥の環境を嫌悪していたのだろう。反対に、彼⼥以前の花嫁のなかには私をなかなか⽤いない者もいた。『ごめんなさい、あなたに溺れきりたくないの。私きっと辛い現実に帰ってこれなくなるわ』私をほとんど使役しなかった彼⼥は、ある⽇、陰⼲しの最中に私を⼿に取って弱々しく呟いた。
♠7「持ち主やその隣⼈、あなたにとって好ましくないこと」「持ち主が道具を携えて何かを達成した。⼈間にとって好ましいことだったのだろうか?」
最後の主⼈の話に戻ろう。先ほど少しばかり触れたように、彼⼥は屋敷から逃げる際に私を悪⽤した。それでいいのだ。私は別にあの家に仕えているわけではなかったのだから。私が⽀援するのは花嫁だけだ。が、屋敷を遠く離れて⼀⼈暮らしを始めた彼⼥の⽣活は順調とはいかなかったようだ。私の⼒で密かな犯罪を⾏ったことも幾度かあった。しかし私は私の話に耳を傾けてくれる貴⽅に告げよう、彼⼥の罪は最低限であったと。それが証拠に彼⼥は藁葺き屋根の粗末な⼩屋の⽚隅で命を終えた。
♦Q「持ち主やその隣⼈、あなたにとって好ましいこと」「修理した⼈間のこと、その形を直したのか。それとも魔⼒を込め直したのか」
⼀度だけ彼⼥の⼿許を離れたことがある。屋敷を離れてから⼀⽅、私の真珠⾊の煌めきは失われるばかりだった。彼⼥はそのときのありったけの財産と引き換えに、私を服飾店に修理へ出した。だが結果は御覧のとおりだ。魔⼒もとうに尽きてしまって、今の私は打ち捨てられる⼨前の襤褸布となんら代わりはない。それだけ主⼈の役に⽴てたという証だ、私は私の使命を完遂したのだ。
♠2「持ち主やその隣⼈、あなたにとって好ましくないこと」「持ち主が何かに悩んでいた。または決断した。どんなことをだろうか?」
……ああ、すまない。ただの襤褸切れの愚痴に付き合わせてしまい、たいへん申し訳なかった。どうやら無駄に時間を取らせてしまったようだね。もうこれでおしまいだ。彼⼥の遺⾔にあった「死後、ヴェールは⻣董商に任せること。けっして勝⼿に廃棄してはいけない」が⽴派に遂⾏してくれて、私としては⾄極ありがたかったよ。ありがとう。
【エンディング】♣5
「あなたを探している⼈は?」
もしかすると、屋敷の⼈間はいまだに私を探しているかもしれない。私はいちおう家宝の類いだったからね。だがいかな強欲な彼らとて、もうなんの役にも⽴たない私を知ればきっと興ざめだろうな。さてこんなとき私はどんな感情を持つべきだろうか。罪悪感か、爽快感か。どうでもいい、私の眠りの瞬間はすぐそこまで近付いている。今度こそ出⼝のない終焉だ。
――おやすみなさい、と⾔ったか⾔わないか。かつて花嫁のヴェールだったものは⼝をつぐみ、もう⼆度となにかを語ることはかなわない。《私》はヴェールを聖なる炎に焼べた。