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    はるしき

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    はるしき

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    恋草(フウモク)
    IF子フモ。めでたしめでたし。

    ##フウモク

    「このことは他言無用だからな」
    フウガはいつもそう言ってから、俺に噛み付く。
    修行場から離れた、雑木林の中。俺と、フウガだけ。口を噛まれたり、舌を絡められたり、痛くて擽ったくて、奇妙な気持ちになる。
    俺はいつもされるがまま。ただ、この時間が早く終わればいいと思いながら目を閉じ続ける。
    たまに苦しくなって、抗議でフウガの肩や腕を叩くこともある。フウガはその行為に対しては、文句も言わない。笑うだけ。
    分からない。
    フウガが何を考えているか、俺には分からない。
    虐げたいのだろうか。
    辱めたいのだろうか。
    それにしては、やり方が変だ。
    他言無用だ、と指をたてるフウガの目はいつも煌々と輝いてて、空の星より綺麗で。
    俺の口に噛み付くフウガはいつも必死で。
    俺の手を掴むフウガの手はいつも熱くて。
    俺も何か応えなきゃいけない。けれど、フウガがどうすれば喜ぶのか、分からない。
    「何を考えている、モクマ」
    フウガが離れる。
    憮然とした顔でフウガが俺に聞く。
    何を、考えてるかって。
    俺はずっと。
    「フウガの、こと」
    そう、フウガのことを考えてた。
    この行為の意味は。何を考えてるのか。フウガにとって俺は何なのか。
    フウガのことを考えて、考えて、目の前のフウガを見つめてた。
    そう答えたら、フウガは一瞬目を丸くして。
    そう思ったら、いつもと違う笑顔で俺を見た。
    フウガの白い肌が赤くなって。
    泣きそうな顔をして、笑ってた。
    フウガが、喜んでる。
    「フウガのこと、見てた」
    また俺は答えた。
    フウガの顔はもっと赤くなって、笑顔が歪んだ。
    あれ、間違えた?
    「んっ、ぅ」
    噛みつかれた。
    良かった、間違えてなかった。
    「んぅう……っ」
    ねばねばした音が、俺とフウガの間からする。これ、恥ずかしい。すごく恥ずかしい。
    「ふぁ……」
    フウガが離れる。唾液の線が、俺とフウガを繋げてる。途中でぷつっと切れ、俺の口の端にくっついた。
    なに、これ。
    全速で里を走ったってこんな息は切れない。うまく息ができない。顔が熱い。フウガから、目が離せない。
    「ずっと、これからも、私のことだけを考えていろ、モクマ」
    フウガの目が、また光った。
    俺は知らない間に、いつの間にか頷いていた。
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