独占「貴様の髪を結ばせろ」
フウガの居室で食事をしていたモクマは、部屋の主であるフウガの突然の言葉に、茶が注がれた湯飲みを唇につけたまま目を見張った。
突然何を言っているんだ。モクマは視線だけでフウガを咎める。しかしフウガは微塵も気にした様子も見せずぐいと酒を呷り、「なんだ」と、じとりとモクマを睨む。
「なんだはこっちの台詞だよ……なに、俺の髪?」
「結ばせろ」
「なんで」
「私に逆らうつもりか」
だめだ、とモクマは数語交わしただけで悟った。不機嫌そうに歪められた眉毛、憮然とした唇。こうなったフウガは、梃子でも動かない。己の望み、欲求を果たさなければ、この機嫌は直らない。
仕方ない、とモクマは一つはぁと大きくため息をつき、湯飲みを膳の上に戻し重い腰を上げる。フウガも杯を膳の上に置き、じっとモクマの動きを見つめる。
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