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    くこ。

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    九尾狐降+猫又景×人間風/プリクラ①
    右風開催おめでとうございます。
    なだちさんのイラストにおつけいたします小説
    (風見編)
    降風&景風なのですが、普段景風を書いている身のため。景風要素が高めです。

    2022/12/14

    #降風
    (fallOf)Wind
    #景風
    jingfeng

    愛いと言われて愛となるなら 左には諸伏が人懐こい笑みを浮かべる。カジュアルな白のパーカーがよく似合い、普段「俺に懐く後輩」という設定で俺と『会社勤め』をしていてもさもありなん。この姿だと普段以上にまるで年下かのような雰囲気を醸し出す。
     右には降谷さん。生成りの薄手のタートルネックにブラウンのニットを羽織り微笑む姿は実にスマートで、「へえ!これがプリクラかぁ!」と声を弾ませていたのが嘘のように慣れた顔に見える。
     そして。なぜか成り行きでセンターにいるのが俺だ。
     両隣にブースに入るまではきちんと隠していたはずの獣耳を生やした美丈夫二人に挟まれた男は我ながら、引き攣った顔をしていて見られたものではない。

     そんなシートを仕事の合間に見る姿はひどく滑稽に違いない。

    「あ!風見さん、手帳に入れてくれたんですね」
    「っ!もろふし、」
     至近距離での柔らかな声に、ばくりと心臓が高鳴った。

     デスクの椅子に座っている俺の首に後ろから腕を回し手元を覗き込んだ『後輩』の諸伏はにこり微笑んだ。
    「外回りは終わったのか?」
     距離感のバグった後輩に如何にも呆れたと嘆息し、先刻そう言って出て行った彼に成果を尋ねる。努めて冷静に返したとか、そういうものでは決してないのだ。彼の「外回り」が他の皆と同じものを指すわけではないと知っていてそれが形ばかりだとしても、だ。
    「えぇ。バッチリですよ。きっとこういうの、風見さんの役に立つと思います」
     間近な顔に耳朶に注がれる声に、背筋が粟立つ。あぁ違うこれは有益な情報で精査して、こんなの伝わってほしくなくて、確認してこれがわかればきっとあれも、同じ男だと思えない滑らかな肌触りにたまに触れてくる硬い髭だって悪くないもっと。伝わればいいのに。
    「…ん、」
    「良かった。……欲しかったでしょう」
     こくりと頷くのが精々な俺に満足気に微笑むと諸伏は離れていき、空いている隣の席に腰かけた。存在しない男のための存在している空席。その様を目で追っていた俺は一呼吸、ゆっくりと瞬いた。
     欲しかった、それは仕事に要する情報の話のようで彼からの温もりの話のようで。その、両方。俺の首肯と表情からただしく読み取った諸伏は目を細めた。
    「縋るような目をして、本当に風見さんは可愛い」
     実に不思議だ。こんなくたびれた三十路の男のどこにこいつはそんな要素を見出しているのか。そもそも、俺の幼い頃に縁があったと包み込んできた降谷さんは……その頃の、弟妹が大きくなろうと可愛く感じる原理でそう、感じるのかもしれないが。諸伏とは出会ってからそれなりに月日は経ったとはいえ最近のことだ。諸伏に声をかけられ咄嗟に閉じた手帳を持つ手に力が入る。
    「諸伏と降谷さんが仲が良いからか……」
    「眉を寄せたと思ったらいきなり何の話ですか? 確かにオレとゼロは昔馴染みで仲良いですが」
    「好みとか感性が似るのか、と思ったんだ」
     視線を泳がす俺にふむと頷くと「それでもいいですけど、」ともらした。
    「でも、」
     諸伏は一度ことばを区切ると鈴を転がすように笑った。
    「ならなおのこと、風見さんはオレ達に可愛がられていいですよね」
    「っ、諸伏」
    「ごめんない。拗ねないで風見さん」
    「……、拗ねてなんかない」
     こんなところでする話ではないと思いつつ、それをしても構わないほどの収穫を先にもらっていた。唇をもぞり動かして反論すると、「もう。ここでなかったら頭、撫でてましたよ」と苦笑されてしまう。ここでなかったら。職場で、というより『後輩』らしくない仕草だから控えるのだと言外にいう諸伏に胸を撫で下ろすのに同時に残念な気持ちになるから困る。ここでなかったら。

    「ねぇ、風見さん」
     諸伏が手帳を俺の手をさらり撫でる。
    「あの日の思い出、風見さんが大切にしてくれてて嬉しいです」
    「これを見ると、二人が、諸伏と降谷さんが俺といるんだと思うから」
    「うん、」
     捕われる。目の前の猫又の青が俺を離さない。
    「っ諸伏。……このこと、降谷さんには言わないでくれ」
     だって、あまりにも恥ずかしい。あの日、一番いかにも興味津々だと乗り気だった降谷さんに「やめてくださいよ」と散々渋ったのだ。あの時はこの歳にもなってこんな若者の集う街で、(彼らの実年齢はともかく)若々しい二人と一緒に撮られることがとてつもなく恥ずかしかった。しかし今は。その時の恥ずかしい気持ちも確かにあるのに、例えばそこの黒のマーカーペンで自身を消すだとかそんなこともできるのだけれど。
     したくはないのだ。
     そこに二人と、俺が。いるのだということを、その証が。愛おしくてたまらない。
     俺の願いはくすと優しく笑われた。
    「それは。全然構わないですよ、オレとしては」
    「ありがとう」
    「いえ。風見さんと二人だけの秘密も、風見さんからの頼みも、オレは嬉しいですから」

    「そうだ。オレも手帳に入れようかな」
    「手帳、持っているのか?」
     そんなものをこいつが持っているところなんて見たことがない。
    「えぇ、だから。買いに行きましょう。風見さんとお揃いがいいです」
     可愛い可愛い後輩のわがまま。
     俺の胸まで踊ってしまう。
    「うん、帰りに寄ろう」
    「定刻に退勤しましょうね」
     そのようにこの猫又も尽力してくれる。そう甘やかされてそれを当然のように甘受している自分がこわいのだけれど。
    「よろしく頼む」
     微笑んで。
     今ではもう。その身に心をてらいなく委ねるのだ。


     後日。
     そんな仕草はしないよう細心の注意を払っていたはずなのに、降谷さんにもバレてしまい。満面の笑みの降谷さんにこれでもかと抱きしめられ傍らの諸伏に目で助けを求めるも「風見さんが可愛すぎるから仕方ないです」と愛らしく笑われるばかり。
    「僕の可愛いお嫁さんが、こんなに可愛いことをしたんだ。……観念しろ」
    「はい、」
     降谷さんの甘やかなミルクティーのような尾が俺を包んで。 

     そうして。溶かされたのだった。
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