廻殴り書き。感覚で読んで下さい。
(本誌を読んでからの妄想が含まれております)
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「伏黒ってさ、私と一緒にいる時、全然私の事見ないわよね」
その言葉を告げられた途端、伏黒の思考は一瞬にして真っ白に染まった。
反論しようと口を開く。だがその言葉は喉奥に引っかかり出てくることを知らない。
はく、と呼吸だけが唇から零れ落ちていく。
「なんて言うか、私じゃない別の人を見てるみたい。私を通して誰をみてんの?あ、もしかして片思いしてる相手とか居るわけ?」
釘崎がその言葉を言い終えると同時、伏黒はがん、と頭を鈍器で殴られたような感覚を覚え、急に目の前が真っ暗になっていった。
ぐらり、ぐらりと視界が揺れ動く中、伏黒の脳裏にとある映像が過ぎる。
それはまるで漫画やアニメの世界で起きているような出来事。
映像というにはあまりにもリアルな感覚に、思わず伏黒は口元を覆い隠した。
鼻腔を擽る鉄の匂い。紅に染る己の掌。そして目の前に居座る釘崎そっくりの女性の首を締めている己の姿がそこには在った。
(なんだ、これは)
どくり。心臓が跳ねる。
嫌な汗が背中を伝い、身体中の体温が一気に無くなっていく。
首を締めた経験などあるはずが無いのに、掌にはその感触が残っている。
首の骨がぽきりと折れていくその瞬間の感触がこびり付いて離れない。
これは一体何だ?
考えれば考えるほど分からない。これは夢か?現実か?
思考を巡らせると同時、ぱちん、と軽い音が鼓膜を震わせる。次いで訪れた軽い痛み。
「伏黒ってば、聞いてんの?」
痛みの正体は釘崎が伏黒の頬を軽く叩いたものだった。
その痛みに気付いた時、漸く伏黒は我に返り、視界も元通りになっていた。
「…今日はもう帰る。お前も帰れ」
伏黒は喉奥からその一言を絞り出し、釘崎の事など見向きもせずにそのまま背を向けてその場を後にした。
釘崎の悲痛な声が聞こえたような気がしたが、今の伏黒の耳に届く事は無かった。
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「…て感じでさ、伏黒ってばめっちゃ感じ悪いのよ」
突如、同級生からの呼び出しを食らったかと思えば開口一番、釘崎の口から飛び出たのはこれまた同級生である伏黒に対する愚痴だった。
虎杖はというとへらりと苦笑いを浮かべることしか出来ずにいる。
何時もなら饒舌に回る舌も今ばかりはなりを潜めてしまった。
太陽の光が差し込むテラス席。からん、とグラスに入った氷が溶けていく。
虎杖は釘崎の話を聞きながら、心臓がきゅ、と痛むのを覚えた。
無意識に奥歯を噛み締めていたせいか、口の中がじんわりと痛みを訴える。
釘崎の言葉を捉え、頭の中に落とし込んでいくうちに、虎杖の顔からはいつしか笑顔が消えていた。
(伏黒は、覚えてはねぇんだ。当然、釘崎も)
虎杖は全て憶えていた。所謂、前世の記憶というものを。
嘗て、己が両面宿儺の器として生きてきた事。
目の前に居座る釘崎と共に呪術師として様々な戦いを潜り抜けた事。
沢山の人を殺めた事。
仲間だった伏黒が宿儺によって乗っ取られた事。
そして、宿儺によって乗っ取られた伏黒が釘崎を殺した事。
目の前で起きた惨劇。釘崎が二度、目の前で死んだ事に対するショックは未だに忘れられない。
目の裏にこびり付いて離れないその光景。
「…ってか、虎杖、アンタ顔色めっちゃ悪くなってるわよ?」
「あ〜…この珈琲ちょい苦くてさ。ガムシロ追加で貰っときゃ良かったわ」
「何それ。変に大人ぶって珈琲なんて頼むからよ。お子様はお子様らしくオレンジジュースでも頼んどきなさい」
ひとしきり愚痴を言い終えた釘崎は機嫌が直ったのかいつもの様に笑顔を浮かべていた。
今世には目に見える呪いなんてものは存在しない。
だが確かに、この身体は呪いに蝕まれている。
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転生ネタ。
皆同級生。最終的には三人交際になる。
五と虎は全部覚えている。
伏は釘と一緒にいる時たまに過去の映像が頭を過ぎる程度。
釘は全く覚えてないので時々虎と伏との間に壁を感じてる。
今世は呪いなんて存在しないけど宿ぴもちゃっかり転生してるしめちゃくちゃちょっかいかける。(主に釘に)(これは私の性癖)
っていう話。