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    SALVA.

    一次創作、低頻度稼働中。
    小説、メモ、その他二次創作など。
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    SALVA.

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    ブバダさんが珍しくキレた話。
    物語のネタバレ注意。殴り書きですみましん。
    車で書いたので誤字脱字が多いかもしれん。

    厳格なる背中半堕凶魔を殺害した罪に問われたトワイラは獄牢行きになった。
    以降トワイラの判決は、思うように行かず長引いていた。
    冷戦のような状態がずっと続き、天使と悪魔どちらが大きく動き出すかとばかり睨み合って、そんな状態が250年前後続き、痺れを切らした閻魔の指示で、正式に天使と悪魔両側の公正型会議の開会が決まった。

    会議当日、天国地獄各地から公正型が冷たい空気を漂わせ、地獄側冥牢管理局前に集合した。管理局前にはちょっとした共有スペースがあり、獄都心の会議棟に空き部屋がない時に使われる。
    天使は地方数の23名と管理局側の取締役が1名、悪魔は地方数25名と管理局側の取締役が1名、獄界幹部代表ブバダ、そして天罰型兼違法取締役としてアハが出席していた。


    点呼が終わり、ある程度の説明の末、少しずつ互いに口を開き始める。
    「んで、結局何?トワイラが死ぬか死なないか以前に、悪魔側の意見を確立させろよ。語彙力が足りねえんだよお前らは。」
    天使側。あからさまに喧嘩腰というか、落ち着いた態度に見せかけてかなり不機嫌なオーラが漂っている。彼らにとってトワイラの生死は天国の死活問題なので、どんな理論を利用しても死刑を免れようとするだろう。
    「獄法に則れば、完全型堕凶魔の殺害は懲役で対応するものの、半堕凶魔の殺害は健常悪魔の殺害と同等とするものとある。その場合、いかなる理由についても死刑判決としてきたのが前例だ。」
    一方悪魔は極めて冷静頓着に、語調を荒げずに対応している。あくまで法律の範囲内で考えを述べており、自論は出さない。
    ブバダは腕を組んで天座の岩に足を組んで座っていた。その間目を瞑り、顔一つ変えずに黙って論争に耳を傾けている。

    「はあ??お前らわざと難しい言葉使って俺らをねじ伏そうってわけか?天使にも優しい言葉で説明しろよカス」

    「そんなに難しいことは言っていない。お前たちが話をまともに聞こうとすれば、子供でも理解出来ることだぞ。」

    「侮辱してんじゃねえぞ無能共が。こちとらその気になりゃあ国皇申請で全員牢獄送りにしてやれんだからな。」

    「侮辱をしているのではない。冷戦を落ち着けるための会議の場で取り乱すなと言っているのだ。我々はあくまで話し合うことを目的としてここまで来ている。そちらも喧嘩を売りに来たわけではなかろう」



    結局会議はそんな押し問答ばかりで話にならず、おおよそ3日間続いた。
    3日経つ頃には天使側は痺れを切らして…というより、筋の通らない論理で無理やり死刑を阻止しようとしていた。そこには今のままでは理論敗北で死刑になりかねない焦りがあり、とても冷静な判断を促せそうになかった。
    悪魔側はまだ冷静に取り合っているが、中にはトワイラの前科の話を持ち込んで天使の怒りを煽っている者がいる。自身の感情論を交えながら界隈をすることほど無謀なことは無い。結果として天使らは「話の筋を通そうとしないのはお前らの方だ」と文句を言い始めた。

    管理局取締役の天使は立ち上がり、大声で怒鳴った。
    「そもそもなぁ!!そんな大事な会議だってんならここでぼさっと黙って居眠りしてるてめえらの幹部は何だよ!!俺たちの話を端から聞く気がない証だろうが!!なんのための幹部出席だ!?俺たちへの侮辱としか思えねえ!!」

    その言葉を聞いてもなお、目を閉じたまま腕を組んでいるブバダは身動きをしない。隣で鎌をトントンと上下するアハはブバダを横目で見て、少しづつ心に溢れてくる焦りを我慢した。

    「話をそらすな。今の話し相手は俺たちだろう。」
    悪魔側は反論する。
    そこから怒涛の貶し合い、罵倒が繰り広げられた。
    胸ぐらをつかみ合うとまではいかないが、お互いに冷静さを失って顔を赤くして怒鳴り合う。

    「だいたいてめえらはいつも天国側に不平等だ!!閻魔に通ずる存在が地獄側にいるからって依怙贔屓してんじゃねえよ!!」
    「天使たちの法違反や悪行を嘘のアリバイで隠蔽してきたお前らに言われたくはない!」
    「お前たちの理不尽な要求に今の今まで耐えてやった俺たちを何だと思ってる!!」
    「その言葉、そっくりそのままお返しする!!」

    「おーいー…」
    アハは困り顔で頭を掻き、仲裁に入ろうとする。
    「頭が沸いてちゃ出るもん出ねえよ…1回落ち着けって」

    「うるさい!!ワカメ頭は黙ってろ!!」
    同僚の悪魔らにそう言われ、「…はぁ…」とアハはため息をつく。
    天罰型の地位は公正型より格段に高い。怒りに身を任せたこの侮辱も一応獄法に則れば犯罪となるが、そんなことはお構い無しのようだ。

    「もういい…話にならねえ!!」
    天使側の取締役が書類を投げ捨て悪魔に近寄る。

    「こうなったら全面戦争だ。俺らと戦って決めろ。俺らが勝ったらトワイラは釈放しろ!!そして今までの獄法に規定された天使への理不尽な規定を改変しろ!!」

    その言葉に乗り気になる悪魔の中で、取締役は叫ぶ。
    「ふざけるな!!戦いで解決することを決めるために俺たちは三日三晩話し合いをしたわけじゃない!!暴力や力で支配しようとするお前らにはなんの理念も筋もないじゃないか!!理論ある会議を心がけろと前起きで言われたのを忘れたか!!」

    「理念がなんだ!!お前のところの幹部を見ろよ!!結局三日三晩偉そうに座り込んで眠っているだけじゃねえか!!これのどこが理論ある会議だ!!」



    「んあーーー…これどうします親方…地獄絵図っすよ」
    アハは鎌を下ろして、罵声にかき消される程度の声でブバダに囁く。ブバダはまだ目を瞑って動かない。
    「もうお互い話も聞いてねえし…このまんまじゃほんとに戦争起きちまいやすよ…いいんすかそれで…」

    それでも見向きもせず返事をしないブバダを見て、流石にアハもイラッとして声を荒らげた。

    「なんとか言ってくださいよ親方!! このまんま好き勝手やらせるわけにゃいかねーでしょう!!」


    その瞬間。



    「…チッ…」
    ブバダが舌打ちをした。

    小さな音のはずだったが、それを聞くなり天使と悪魔が黙る。
    いや、音に反応したのではない。この共有スペース全体の空気が、今の一瞬で異変を本能的に覚えるほどに変化したのだ。

    空気が重くなる。心做しか視野も暗くなっている気がする。
    ただ重たい重低音のような音がその場にいる全員の脳にこだまする。

    いっせいにブバダに視線が集まる。

    ブバダは、その時やっと閉じていたその目を見開く。
    いつもに増して恐ろしく見える彼の赤眼が、ギロっと光を放って全員を睨む。眉間にいくらか皺を寄せて血管を浮き上がらせ、深く息を吸う。

    そして耳が痛いほどの低い声で一言言った。

    「…うるせえよさっさと殺せ。」

    場の空気が突き刺さるように固くなる。
    その場にいた全員が、そのおぞましい空気に飲まれ動けなくなる。

    その一言が、ブバダの答えだった。
    この会議を経て、天使の一方的な隠蔽が明らかになったのが何よりの証拠。
    トワイラを無実にするのは、何と引替えても不条理極まりない。

    静まり返った天使と悪魔をギロっと見回し、ブバダは懐から丸めた書類を取り出し、天使に投げつけるように渡す。

    「刑法執行同意書だ。取締役が署名しろ。」

    天使らは反論をせずとも固まり、ブバダの威圧感に潰されそうになっていた。ここで反論すればきっと命はない。
    天使らが何もせず固まっていると、ブバダは再び鋭い目で突き刺すように睨み、多少がなりの効いた声で言う。


    「書 け」


    ひっ、と声を情けなく上げた取締役は、恐る恐る前へ出て紙を拾う。そして紙を広げ、ポケットから万年筆を取り出す。手を震わせながらブバダを見上げれば、見ているだけでも死にそうなほど恐ろしい形相で見下ろしている。
    急いで署名を済ませた天使は、震える手で紙をブバダに返す。
    紙を受け取ってたどたどしい字の署名を確認すると、ブバダは小さく頷いてまた懐にしまい、立ち上がった。
    この中で誰よりも身長が高いブバダは、立ってなお天使を見下ろしながら冷静に言った。

    「公正型天使及び取締役計24名、天論法侮辱違反と罪状隠蔽により、実刑462条職務能力目安増加、該当せぬものは数字を10剥奪する」

    次に悪魔を見て言う。
    「公正型悪魔及び取締役計25名、獄論法侮辱違反により、実刑462条職務能力目安増加、該当せぬものは数字を5剥奪する。なお、型番00155、下克不当罪により数字を20剥奪する。」

    青ざめた顔をした天使と悪魔は、きまり悪そうにしつつも即座に「御意」と返事をし跪いた。


    会議を終え解散し、それぞれが散り散りになると、黙っていたアハが、ため息をつくブバダの右後ろでその凛々しい背中を見上げて、気まずい沈黙をどうにか繋ごうと無理やり口を開く。

    「いやあ…おっかないっすねぇ親方…
    さすが、親方にゃ敵いませんわ…」

    半笑いのその言葉を聞いて、天使と悪魔を見送っていたブバダは首だけでアハを振り返り、額で揺れる鈴をリン、と可愛らしく鳴らす。その目にさっきまでの恐ろしさはなく、優しく火照った頬をいつものように赤らめて「てへ…」と舌を出して見せ笑った。

    こんなに可愛らしいことをするお方が、さっきのおぞましい形相をした悪魔と同じとは思えない。

    つくづく思うが、やはり幹部に相応しい、厳格なる偉大な御方だ。
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