現パロ付き合ってない両片想い鯉月鯉今日は愛しい男と出掛ける日。
俗に言う「デート」というやつだ。
単なる買い物だと思えばなんてことはない日常なのに、「デート」と名称を付けると何だか特別なものになって胸の内がくすぐったい。
髪型はおかしくないだろうか?服装は整っている?
手鏡を常に持ち歩くのは自惚れているからではなく、皆の前に出て恥とならない姿であるかを確認する為だ。
それに、こちらは別問題ではあるが、好いた男の前では少しでも格好良い自分で居たいと思うのは当然の心理だろう。
「鯉登さん」
後ろから名前を呼ばれどきりと胸を高鳴らせる。自分が生娘のようになってしまったのは、この男の低く通る声のせいだ。
「月島ぁっ!やっと来たか」
「ええ。鯉登さんはお早いですね」
お前に早く会いたかったからなのだ、と、言ってしまいたい気持ちをぐっと堪えて仕舞い込む。
「月島ぁ」
「はい。なんでしょうか」
「…どこか、私におかしな所は無いか?」
「はい?」
「服装や髪の事だ。…整えたつもりだが、私の持つ手鏡では限度がある」
「ああ、そういう事ですか」
納得したような顔で頷きながら、月島は私を頭の先から爪先まで眺め、少し笑って口を開いた。
「いえ。いつも通り、
『わっぜむぜ』…ですよ。鯉登さん」
…この男は、なにも知らぬ顔をして、
こんなにもひとの心を掻き乱すのだ。