星空の夢美しい夜空に輝く星が見えた。
父に肩車をしてもらいながら空を見上げていると母が言葉を投げた。
「どう?お空は綺麗に見える?」
「うん」
はにかみながら頷く、自分を抱える父の後頭部しか見えないがしっかりと足を掴んで支えてくれる父の手は温かい。
顔が見えずとも、その温度が安心感を与えてくれていた。
「今日は月の明かりもあるからな、星の光が遮られると思ったが……案外良く見れるもんだな」
「そうね、よく見えるわ」
父の言葉に母は頷く、ふと自分の瞳にあるものが映った。
「あっ!!」
「?」
流れ落ちる流星が夜空に落ちていく。
一筋の光が、何億光年に潰えた光が流れていた。
少しだけ身を乗り出し、叫んだ。
「流れ星!」
「えっ!?嘘?!どこどこ!?」
「もうとっくに流れちまったから見れないだろ」
父の呆れた声に母は少し頬を膨らます。
それが少し、可笑しくてクスクスと笑いが溢れた。
「で?何か願ったか?」
「え?」
「まぁ流れる速さからして間に合わなかったろうが……願い事願わなかったのか?」
「あ….え、えっと……」
父が少しだけ頭を動かして見上げてきた、少しだけ戸惑いながらも小さな声で問い掛けに対する答えを紡ぎ出した。
「……三回まで言えなかったけど……でもね……お願いしたよ」
「ほう?何を願ったんだ?」
「うん、あのね––––––––––––––」
自分の願いを言った時、父は笑ってくれた。
母も優しい笑みを浮かべていた。
叶うといいね、と言う母に頷く。
少し気恥ずかしい様な、でも誇らしい様な思いを抱えながら蹲る様に身を丸めて父の頭に顔を擦り付けた。
眠るなよ、と忠告する父の声は優しかった。
きっとこれは夢なのだと理解しながらも、目覚めるその時までは浸る事を彼等は、“彼”は許してくれるだろうか。
(この夢を貴方に話したら、貴方はどんなふうに返してくれるのでしょうか)
きっと、優しく笑ってくれるだろう。
愛しい人を思い出しながら父の歩く速度で揺られる。
空に浮かぶ月は、そんな彼等を静かに見守っていたのだった。