(未定2) エルジオンのゲートを出ると、ジェイドはバスカーゴを指さして乗ると言う。どうやら行先はエアポートらしかった。最近は合成人間も都市付近にはあまり出ないそうだが、日没前の時間に出ていく人もいないようで、カーゴに乗客はいなかった。そもそもあんな殺風景な場所、一般市民が好んで行くところでもない。
そんなところにどうしてわざわざ?
ソフィアの胸に浮かんだ、ほんの少し残念な気持ちとささやかな疑問は、カーゴを降りてすぐに解消されることとなる。
「……すごい。綺麗……」
山際に沈みかけた黄金色の西日が、辺り一面を茜色に染め上げていた。視界に飛び込んできたその景色に、自然とソフィアは感嘆の声を上げていた。連れてきた本人はというと、すたすたとプレートの端まで行き、立ち止まったかと思えば、着いたとも言わずに腰を落ち着けようとする。追いかけて隣に座った。昼間だったら、ここに座るの? の一言でもあっただろうが、今はその程度どうでもいい。
プレートの端から脚を空中へ下ろす。こうして夕日を正面に望むとまぶしくて、ソフィアは手をかざしながら息をついた。東の空を振り返るとすっかり紫色で、ぽこぽこと浮かぶ羊雲が紺色と橙色で真っ二つになっていた。じきに日没、夜がくる。
「穴場らしい。この時間は俺も初めて来た」
「そうなの……?」
初めて、という言葉にソフィアはジェイドの顔を見た。驚きつつも、なんだかすとんと腑に落ちた。彼がひとりで夕焼けを見に来るような風情のあるたちではないことくらい、とっくの昔に割れているわけで、だから、まさかエアポートで夕焼けを見ようとしていたなんて、移動の間じゅうソフィアは思いもしなかったのだ。