まいにち無占(とおかめ) それをコーティングする甘酸っぱいとろみのあるソースが甘さと相まって舌を喜ばせる。
熱が通っているのにくたりともしていないし辛くもない。しゃく、とした食感が楽しい。
もぐもぐと口を動かすノワールに、范八はふっと笑う。
「美味しいか?」
「……美味しい」
「それはよかった。ノワール、古老肉は肉が主役ですから、ぜひこれも食べてみてください」
また箸で口元まで運ばれる。
今度は薄く衣が付いた揚げた肉のようだ。
辛くないと分かった以上、もう警戒することもないので素直に口を開ければ、にこにこ笑う謝七が視界に映る。
怪訝に思いながらも口の中に入った肉を咀嚼する。
かり、と弾ける衣から豚肉の脂がしみだして、だというのに油気がきついということはない。
甘酸っぱいソースが絡んで、どちらかというとこってりとした味なのにさっぱりと食べられる。
具材は少ない。だが、ひとつひとつの処理が丁寧だ。
無意識に口を開けていたのは美味しかったからかもしれない。
謝七と范八が嬉し気に口角を上げ、交互にノワールにぐーらおろー?を食べさせる。
はっと気付いた時にはもうあらかた食べ終わった後で、恥ずかしいと拒否するには遅すぎた。