まいにち無占(よっかめ)「……パン粥ではなく?」
「はい。米を使ったお粥です」
謝七が自慢げに胸を張る。
范八は無言でノワールの様子を見ている。
「……」
ノワールは渡された変わった形のスプーンを手に取って、おかゆ、と二人の顔を順繰りに見やった。
二人はノワールの傍を離れないが、せかすようなことはしなかった。
ひとつ、ため息をついてノワールはスプーンを握りしめる。
毒入りだったとして、それを対処することは今のノワールにはできない。
それなら別に、食べても食べなくても同じだろう。
茶色い粉は避けて、スプーンで白いどろどろをすくって口に入れる。
見た目とは違って、それは糊のように喉に張り付くようなことはなかった。
それどころか、口の中に入れた瞬間心地よく喉を抜け、ふわりと広がるコンソメとも違う肉の味に、ノワールははっと目を見開いた。
謝七を見る。范八を見る。
ノワールの反応は恐らく微々たるものだった。
けれど嬉しそうに「おいしいですか? よかった」と微笑む表情に、満足げに頷くその姿に、ノワールはなぜか目頭が熱くなった気がした。
「ゆっくり食べていいんですよ。ここにはあなたを咎めるようなひとはいません」
「ああ、本調子でないなら残してもいい。だから泣くな」