【夏五】第62回 お題「まやかし」「ねぇ、教祖様。僕と遊ばない?」
首都・東京、呪いの坩堝たる街、新宿。右を見ても左を見ても猿だらけのこの場所は本来忌避したいところだが、ここほど上級の呪霊が溢れているところも他にない。さらに手駒を増やすためだと割り切って、夏油はときどきこうして足を運んでいる。
だから、分不相応に話しかけてくる輩はいつもならば無視してそのまま去るところなのだ。思わず足を止めてしまったのは、その声が数年前にまさにこの場所で道を分かった、かつての親友と瓜二つ――いや、そのものだったからだ。
振り向いて、さらに驚く。
少し上にある視線、ネオンに照らされて輝く白銀の髪、そして。丸いサングラスから覗く、宝石を埋め込んだかのような青い瞳。
1899