「ん…」
「司先輩、どうかしたんですか?」
何やらそわそわしている司に、冬弥は首を傾げる。司の身体がぎくりと震えた。
「い、いや…なんでもない」
「絶対嘘だろ」
二人は勉強していた手を止め(彰人はもとから止まっていたが)、司に注目した。司の頬が赤くなっているのは、暑さのせいだけではないはずだ。
「気にしなくていい。とにかく勉強をだな」
そうやって誤魔化そうとするのが、彰人の悪戯心をそそってしまったらしい。
「えぇ?センパイが気になって、もう集中できないんすけど」
「お前に集中力があったとは驚きだな」
「決めた。どんな手を使ってでも吐かせてやる」
「やめろ、暑い!わかったわかった、言うから離れろ!」
彰人を引きはがし、司は恥ずかしそうに視線を彷徨わせる。やがて、意を決したように口を開いた。
「その…乳首を、虫に刺されてしまったようで…」
「は?」
「え?」
「…ほら」
司がシャツをめくりあげる。確かに右の乳首が、少し赤くなっていた。
「うぅ…一日中、これが気になって気になって仕方ないんだ!かかない方がいいと思って我慢してるんだが、そうすると余計に辛くなって…」
羞恥のためか瞳を潤ませる司に、彰人は少し同情した。けれど、滑稽なその姿に笑いもこみ上げてきた。
「確かに、これはちょっと辛そうだな…ふはっ」
「笑うな!」
一方冬弥は、真剣な顔つきで司の胸に見入っていた。
「冬弥…?なんだか顔が怖いが…ひゃっ⁉」
おもむろに、冬弥が司の腫れた乳首に吸い付いた。突然のことに、司は声をあげて驚く。
「な、なんでっ…」
「ん…虫の唾液を、吸い取れないかと思って…?」
「触りたいだけじゃないのか⁉んっ、というか、虫の唾液って…」
「虫刺されが痒いのは、虫が持っている…じゅる、ヒスタミンなどの毒や唾液に入っている物質が原因で」
「はっ…あ、んん…」
「ちゅ…それが、アレルギーを引き起こして、赤くなったり、痒くなったりするそうです」
「あっ…冬弥は、物知りだな…」
「ありがとう、ございます…」
「なんだこれ」
冬弥に吸われ、時折歯を軽くたてられ、司の身体に甘い痺れが走る。ただでさえ気持ちいのに、痒いところに刺激が与えられ、さらに気持ちよくなってしまう。一日中我慢した後に触れられたのだから、尚更だ。
「んん…」
司が唇を噛んで快楽に耐えていると、目をぎらつかせた彰人と視線が交わった。
「センパイ。刺されたのって、右乳首だけですよね?」
「っ…そう、だが…?」
「なんで左乳首も赤くなってんすか?」
彰人の目が、意地悪く細められる。
「それ、は…」
「ほら、言ってみろよ」
彰人の指が、司の左乳首に触れる。両方の乳首を刺激され、司の思考が鈍っていく。
「ちゃんと言えたら、オレもここ吸ってやるよ。どっちもされんの、好きだろ?」
乳首を捏ねられながら甘く囁かれ、司は素直に頷いた。
「すき…」
「だろ?じゃあ、なんでこっちも赤くなってるか、オレに教えてくれよ」
「はぁ…え、と…とうやに、おっぱい、吸われて…ふぁっ、えっちな気分に、なっちゃった、から…」
「よく言えました」
「んああっ」
部屋の中に司の荒い息遣いと、彰人と冬弥がたてるいやらしい水音が響く。
「も、だめ…」
「いいぜ。乳首だけでイけよ」
「可愛い司先輩を、俺達に見せてください」
「ひゃぁっ」
一際甲高い声をあげて、司の身体が痙攣する。麦茶の氷が解ける、カランという音がした。