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    かべうちのかべ

    @mahokabeuchiaka

    まほやくのかべうち。壁打ちの結果であがった物を細々と載せる。
    学パロと両片想いが好き。

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    かべうちのかべ

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    昨日ブラネロ語りのもくりを拝聴させていただいた際のフリー素材をお借りして書いたもの。「デートの終わりがけに受けが帰りたくないと言い出した!どうする?」的なのの話だったはず。かわいかったので残しておきたかった。とても素敵なお話だったので、いろんな人のを何万回も読みたいです。ネは面倒くさいのがいい。
    すけべはかけないので想像してください。

    ※現パロ。付き合ってる。大学生?社会人?くらい。

    ##ブラネロ
    ##現パロ

    『小さなわがまま』 普段よりもゆっくり進めていた足は、駅前のロータリーでピタリと止まった。それが合図のように、こちらを向く青灰色の表情は見えない。つい数分前まではあんなに笑顔でアレコレと楽しそうに話していたのに、駅に近づくほどに静かになっていくネロは言葉は素直でないのに、態度はこんなにもわかりやすい。今日は早めに帰るから引き留めてくれるなと、待ち合わせのときに言っていた男の行動とは到底思えなかった。このまま帰したくない気持ちを押し込め、ブラッドリーは努めて明るく送り出した。

    「じゃ、気をつけて帰れよ」
    「……おぅ」
     そう言ったは良いが、ネロはそのまま動かない。どこか戸惑うように、別れがたいと全身で伝えてくる。これも無意識なのだろうか。思わず抱きしめたい衝動に駆られるが、公衆の面前でそんな事をすればどうなるかくらいはブラッドリーにも分かっていた。今すぐ動き出してしまいそうな手が勝手なことをしないように、コートのポケットの中で強く握りしめる。
    「ネロ」
    「ん」
    「顔見てぇ」
     せめてと声をかければ、そろそろと上がった顔は、どこか落ち着かず、泳ぐ目はすぐに逸らされた。
    「ネロ。そんな顔すんな。すぐ会える」
    「分かってっけど……」
     まるで今生の別れのようだが、たった一ヶ月、研修で離れるだけだ。電波の通じないところへ行くわけでもない、電話もメッセージも今までと代わりなくやりとりできる場所だ。今までだって毎日会っていた訳じゃないのだからさほど変わらないはずだった。
    「なぁ……」
    「ん?」
     ネロはうつむいたまま、小さく、言いよどむ。
    長く白い指がブラッドリーのコートの裾をわずかに掴んで握りしめた。
    「今日……、帰りたくない……」
    「でもお前、明日朝早ぇからって」
    「そう、だけど、お前ん家にも着替えあるし、早く起きればそんなん距離変わんねぇし……」
     のぞく耳を赤く染めながら、ぼそぼそと続く言葉は、滅多に欲を口にしないネロの、まだ一緒にいたいという小さなわがままだ。
    「別に、俺が寂しいわけじゃないし、お前が迷惑なら帰るけど……」
    「迷惑なわけあるかよ」
    「ぉわ」
     既にマイナスへ入って行きそうな思考にストップをかけると、ネロの首に腕を回して肩を組む格好になった。人目を極端に気にするネロにもこのくらいなら許される範囲だろう。そのまま離せと文句を言う男の耳元へ、小さく囁く。
    「滅多に聞けねぇ可愛い恋人様のわがままだからな」
    「っ!」
     一気に大人しくなったネロの頭を乱暴にかき回すと、裾を掴んだままだった手を絡め取って歩きだす。
     デートは続行だ。案外さみしがりなネロが、少しだけ素直に言えた分、恥ずかしがってもいやがっても、一ヶ月分、思いっきり甘やかしてやると決めた。



    手はふりほどかれることなく、コートのポケットの中で強く握られた。

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    かべうちのかべ

    MENU『冬から春へ』
    の書き下ろし2作の冒頭部分抜粋しました。( )内の計は全文の長さ。サンプルはその三分の一くらい。

    『お気に入りは』←オエちゃんとネの出会いと、その数ヶ月後。(計3200字くらい)
    『宴の夜に』←ブ様とおシャイがお話するところ。(計1600字くらい)
    頒布先→ https://mahokabeuchiaka.booth.pm/items/3914349(BOOTH店舗)
    『冬から春へ』書き下ろし文サンプル『お気に入りは』

     ブラッドリーの城の近くの森で動物たちから面白い噂を聞いた。
    『俺たちの言葉がわかるやつがいる』
    『ちょっと聞かないなまりのあることばを話す』
    『近くにいると穏やかな気持ちになる』
    『食べたことのないような、甘くておいしいものをくれる』 等々。
     
     最近何もなくて退屈だし、オーエン以外で動物と話せる存在はそう多くない。それになにより、『甘くておいしいもの』が気になった。オーエンは甘いものに目がないのだ。
     巻き起こる吹雪の中を歩いているとは思えないほどに悠々と進み、しばらく行けば視界が開ける。ブラッドリーの治める領域の中へとたどり着いたのだ。今は昼前で太陽が真上に上り、先ほどとは打って変ってかなりの晴天になっている。そのおかげか、遠くの街の煙突の煙まできれいに見えているが、そちらには目もくれず、その北側へと広がる森へと歩を進めた。
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    かべうちのかべ

    DONE再掲
    ・初めて激オコしたネ君と何が悪かったか分かってないブの話

    第1回ブラネロ冬春ワンドロライ、4回目のお題:喧嘩 より。
    2021.8.30にTwitter掲載済。
    『らしくない』「……」
    「ネロ?なんだそんな恐い顔して」
    「これ……、どうした?」
    「お、それな。美味かったぜ!」
    「……食ったのか?」
    「おう」
    「昨日、これだけは食うなって、言っといたよな?」
    「そう……だったか?まぁ、でもこんな美味そうなもん我慢できねぇし、また作ればいいだろ?」
     悪びれもせずにそう言って笑うブラッドリーとは反対に、ネロは感情を落としたように無表情だ。何度か耐えるように呼吸を繰り返していたが、どうにも収まらない怒りがあふれ出す。
    唇をかみしめ、顔をゆがめてブラッドリーをにらみつけるとキッチンから荒々しく駆けだした。感情にまかせた言葉を吐き捨てて。
    「てめぇは……野菜でも食ってろ!」
    「は? おい、ネロ!」

     涙こそ出てはいないが、明らかに傷ついた表情で去って行ったネロに困惑するブラッドリーは、何がなんだかさっぱりと分かっていなかった。そのまま呆然と扉を見つめ考え込むが、何度思い返してみてもいつものつまみ食いとなにも変わらない行動だったと思う。
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