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    Takumi

    @sun_stone_fe

    💍フォガパン パン受 アルディア ディア受
    FE3H ディミクロ

    ついったーは独りで壁打ち中。
    pixiv使っていません。
    作品の投稿はポイピクだけです。
    (過去のディミクロは再加筆してべったーからお引越し予定)

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    Takumi

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    邪竜の章、聖職者になれず家を出た邪パンドロが旅をして邪フォガートの臣下になる話。途中まで。
    続きはフォガパン。

    ⚠️邪竜の章、独自設定です。
    ※ソルム王族と臣下は本編と性格や嗜好立場が反転している認識で書いています。

    ⚠️変質者モブ男が出てきます(今回はエロなし)

    #パンドロ
    mandoro
    #邪竜の章

    遙か東の空へ 1 神竜王リュールの治世。各国は神竜王リュールの元に団結し争いの片鱗もなく平和だった。ただ一つを除いて……。
    それはイルシオン王国に根強く残る邪竜信仰の存在だった。邪教と呼ばれるほど強く根付いたその宗教を信じているものは少なくない数存在したのだ。
     イルシオンの現国王ハイアシンスはそれを危険視していた。彼は国内に存在する邪教徒達の弾圧を進め、同時に軍事力を抑え他国から脅威と見なされないようにすることに注力していたのである。
     彼の政策は功を成し、各国との結束も強くなり平穏が訪れたかに思えたのだが――――。

     ハイアシンス王が突如崩御し、熱心な邪竜信仰の女王が即位した事で事態は悪化し始める。各国は女王の目論見を阻止すべく秘密裏に動き始めたのであった。


    1.

     砂漠の国であるソルム王国は神竜信仰が盛んで、オアシスの街の中心に位置する教会には多くの人々が集まっていた。大地の力を神竜王の恩恵として信じた人々の多くは敬虔な信者であったのだ。信者の寄付によって維持されている教会の建物も立派で、国外からも信者が訪れ観光名所にもなっているほどである。

     その教会でパンドロは生まれ育ち、神父である父から聖職者になるための教育を受けていた。信心深く信仰心の篤いパンドロの未来は明るいと誰しもが思っていた。本人もまた神官となり神に身を捧げる覚悟を持っていて、真面目な性格も相まって日々熱心に修行していたのだ。
     しかし彼は聖なる力の素質に恵まれず、聖職者として神の祝福を受けることは適わなかった。長い歴史を誇るこの教会内の後継者としてパンドロは父の後を継げないのだと宣告されてしまったのだ。
     父や母はとても優しく愛情を持って育ててくれたが、どれだけ熱心に祈っても父のような聖職者になれない情けなさで心は傷付き、それは癒えぬまま彼を蝕んでゆく。自分には何もない、何も与えることはできないのだと。そして自分の存在価値など無いものに等しいと考えており、益々自分を卑下するようになっていたのだ。

    (教会は妹が立派な聖女になって後を継ぐだろう。聖職者になれない俺には何もできない……。このまま教会で神に仕えられないのであれば、外に出て人々を幸せにするのが正しいことなのではないか?)

     聖職者になれないのであればそれ以外の何かしらで人々を守り、人の役に立ちたいと願うようになっていたのだ。ならば自分にできる何かを探そう、それは別の職業でもいいのではないだろうかと思い至ったのである。

    (聖職者では成し得ない、自分だけの何かが見つかれば俺にも生きている価値があるはずだ)

     そんな想いをパンドロは両親へ正直に打ち明けた。すると両親は真剣にパンドロの話を聞いてくれたのだ。

    「この教会の司祭は世襲制ではない。聖職者になれないのが心苦しいから外で頑張ってみたいと思っているのだろう? ならば私たちに止める理由は無いさ。お前がやりたいことをしなさい。それが人生なのだから」

     父の言葉にパンドロは少しだけ救われた気がして前を向けたのだった。だから彼はもっと外の世界で自分がすべき何かを探そうと決意したのである。
     両親と教会の行先を妹に託すのは心苦しかったのだが、彼女の聖女となる才能は疑いようがなく。両親も快くパンドロを送り出してくれたのだった。


     こうして彼は生まれ育った故郷を出てソルム王国の王都へと向かうことにしたのである。そこならば自分の力が必要な何かがあるのではないかと淡い期待をしていたのだ。自分が何かできる人間であることを示し、新たな居場所を見つけることが希望に繋がるのだと信じて。




     道中でパンドロは多くの人々と会話した。自分の力で何ができるのか模索したのだ。けれど何も見つけられず、それどころかむしろ悪い方向へ転ぶことも少なからずあった。そんな現実に直面してパンドロは強い無力感に苛まれる。それでも挫けず歩き続けたが次第に疲れ果て、周りの目や聞こえてくる悪口が重石のようにのしかかり始めたのだ。

    (もうどうしたらいいのかわからない……)

     とうとう耐え切れなくなったパンドロは生まれ故郷から遠く離れた海沿いの街へとやってきた。死に場所を探すかのように。街外れの崖の上からぼんやりと波打つ海を見つめながら、いっそこのまま飛び込んでしまおうかと思うくらいには思考力が落ちていたのだ。
     そうして長い間座り込んでいると、横から心配そうに男性が尋ねてきた。

    「もしかして君は死に場所を探してるのか?」

     優しく話かけられた瞬間に自分の中で何かが弾け、今まで我慢してきた感情が溢れ出したのだ。もう自分では抑えきれず嗚咽を漏らして泣き出してしまったのである。泣き止むまで男性はずっと背中をさすりながら付き添ってくれ、その間一言も責めたりせずに静かに話を聞いてくれていたのだ。そして一通り泣いて感情を吐き出したからかパンドロにも幾分か平静な気持ちが戻っていたのであった。

    「お前さん、住み込みで働かないか。夜だけで構わないし賄いも出す。息子が傭兵になるといって家を飛び出てしまい人手不足なんだ」
    「次の目的が決まるまでの繋ぎで良ければ……しかし何故俺にそんな提案を」
    「今、祈りの歌を口ずさんでいただろう?  よく通る良い声をしてると思ったのさ」

     男はそう言って気さくに笑ってみせると、パンドロへと右手を差し出してきたのだ。それは救いの手だった。パンドロはその手を掴むことに迷いはなかった。藁にも縋る思いでその手に自らの手を重ね合わせて握るしかなかったのである。





     勧誘されパンドロは住み込みで働く事になった。男性がパンドロのよく通る声を勧誘する決め手としたのは、酒場での働き手を求めていた事。声が良く通ると手を上げたお客の耳に届きやすいからだ。
     接客の様々な知識がないパンドロにとって、その仕事は予想外の事ばかりの連続だった。お酒や料理の知識、声の大きさや細やかな心遣いなど学ぶ事は多かったが、持ち前の真面目さでそれらをあっという間に吸収し、こなせるようになったのである。
     パンドロは何よりも踊りと音楽の存在に衝撃を食らった。吟遊詩人たちが奏でる音楽と踊り手達の動きが合わさる時の感動たるや、それまでの世界が塗り替えられて見えたほどだったのだ。
     今までは歌や踊りといえば神を讃え祈ることとしか考えていなかった。神に捧げられる讃美歌、聖女へ祈りを捧げるためのものしか知らなかったパンドロにとっての衝撃は計り知れないものだったのだ。教会で育ち聖職に従事していたこれまでの生活では知らなかった世界があると気付かされたのである。


     そうして接客や酒場の喧騒に慣れた頃、店主からパンドロに提案があった。

    「パンドロくん、お客様の前で歌って踊るのは少し抵抗あるかい?」
    「……歌はともかく、男の踊りなんて需要があるんですか?正直俺は、そういう娯楽に無縁で生きてきたから理解出来ません。だから抵抗はない、というよりも想像出来ないです」

     素直に自分の気持ちを伝えてみると、店主は一瞬目を丸くしていたがすぐに笑みを浮かべパンドロの肩を叩くのである。

    「パンドロくんは旅をして新しい自分の可能性を探しているのだろう? 僕はそれに協力したいんだ。剣舞を覚えてお客様に披露してみてはどうかな? 踊りと短剣の扱いを同時に学べるからこの先の旅でもきっと役立つよ」

     店主の提案にパンドロは考える。素性を明かそうとしない旅の男性を信じて雇ってくれた恩に報いるならば、この提案を受け入れるべきだ。しかも、芸を身に着けることで自分にも付加価値を付けられるとなれば良い選択だろうと思い至ったのである。ただ漠然と旅を続けるよりは遥かに充実した未来が待っているはずだからと決心した。

     パンドロは日中剣舞を習うことで少しずつ短剣の扱いに慣れ始めていった。元々真面目かつ努力家であったパンドロの吸収力は非常に早く、店主が驚く程の成長を見せていたのだ。

    (舞踏や体術の素質があるとその道の人に言われても今ひとつ実感が湧かないけれど、こうして自分でも知らない能力に気付かされるのは嬉しい)

     実際のところパンドロは運動神経が良かったようで、体術にも才能を見せ始めていたのである。ただ、筋肉がつきにくい体質のようで細身ではあるもののそれを補えるほど瞬発力と身の軽さがあった。知識を蓄積するようにパンドロは少しずつだが、経験を積んで成長していったのである。

     剣舞を習い始めてひと月ほど経ち、少しずつパンドロはお客様の前で踊りを披露するようになった。最初は躊躇いがちだったものの、今では優雅に舞っている。目が冴えるほどに鮮やかな武闘服を身に纏い、洗練された動きで鮮やかに武器を操りながら歌う姿に惹かれる人も現れるようになった。いつしかパンドロの剣舞目当ての常連客も増え始めていたのだ。しかも演目を変えてみた際にはその圧倒的な剣舞の技に目を奪われ思わず溜息を零してしまった観客もいたのである。

    (俺の踊りと歌声で喜んでくれる人がいる、それだけで今の俺は自信になって前を向けるんだ)

     人前で歌い踊る日々を過ごしているうちに最初は長く続けようとは思っていなかった酒場での仕事が楽しいと思えるようになっていたのである。酒場に来る人達と世相や政情などを語り合う事が楽しかった。生きる気力が漲ってくるような心持ちだったのだ。それは今までに無いことで。とても充実した毎日を送っていたのだ。

    (自分が本当になりたいものを見つけるために歌や踊りだけでなくもっと色々なことを学ぼう。貪欲に知識も獲得しなければ、未来の選択肢も増えないのだから)

     パンドロは酒場での稼ぎで様々な本を買い、また休日は街に出て積極的に人々と会話して知識や情報を仕入れるようになった。少しずつだが強く逞しくなっていたのだ。これまでの人生での知識の偏りが剥がれ落ち、新しい価値観を持ち始めていたのである。
     表情から険しさが消え作り物ではない笑顔を見せるようになってきている様子に、パンドロを雇った店主も少なからず安堵していたのだ。少しずつではあるが彼の心は回復していっているようだったのである。




     踊っている時の胸や腹周りをいつも舐めるように見ている特定の男性客がいる。
     
     最初は気のせいだと思っていたパンドロも、やがてそれは明らかに意図的な物だと分かったのだ。今まで男性からそんな目で見られたことはなかったので困惑したと同時に嫌悪感を抱いたのである。それでも店主の顔に泥は塗れまいと耐え続け踊り続けていたが、パンドロの中で何かが崩れ始めていった。この身体で色目を使っていると特殊な性癖の同性から思われる事に次第に耐えられなくなっていったのだ。

    (踊りと歌うことが好きだし、この店も好きだ。だからもう少し旅の資金が貯まるまで我慢しよう)

     そんな思いとは裏腹に事件が起きたのだった。



     「パンドロへお酒の差し入れだよ」

     同僚の店員から声が掛かりソルム王国では珍しいフィレネの葡萄酒が置かれていることに気づいた。パンドロは受け取ろうとした手を止める。向かい側に興奮した様子の男性の目線があった。いつもパンドロを舐めるように視姦する男性客だ。男性は嬉しそうな声音で話しかけてきたのだ。

    「いや良かったよ、君の踊りは色っぽい。今まで見たどんな女の踊りよりも美しい。まるで身体だけで愛を語るようだ。君の歌声もまた色っぽいよ。その低くて張りがあるのに艶やかな声、何とも言えない」

     男はにぃと笑みを深めてパンドロに近づき彼の腰に触れようとした。咄嗟に逃れるように離れると男は怪訝そうに問いかけてくるが、パンドロは常のような笑顔を崩さないまま無言を貫き通した。いくら性的な対象にされてもパンドロはそれを認めるわけにはいかなかった。彼は男としての誇り、否、性別すら認められなかった場合どうなってしまうのだろうと恐ろしく思ってしまったのである。

    「君のその高い身長も俺好みだなぁ、抱き締めたらどれだけ安心するだろうねぇ……」
    「申し訳ございません、彼は接客中で忙しいので」

     言い終わろうという時に店主が男の長口上を遮ったのだ。そしてこう続けたのだ。

    「お客様、来るお店を間違えたのでは? うちでは店員の個別指名はありませんよ? それと『特殊なお酒』の持ち込みはお断りしております」

     ここでようやくパンドロは目の前の葡萄酒が男の悪意によるものだと気付いたのだった。この男は初めからそれが目的だったのだ。その葡萄酒には媚薬や睡眠薬の類が混入されていたのだろう。こういった場所では時々このような事が起きるという話を同僚やお客様から聞いたことがあったが、まさか自分が巻き込まれるとは露ほども考えていなかったのであった。
     尚も興奮して口を開こうとする男だったが、何かを察した様子の店主がやんわり話を中断させてくれたのだ。

    「あんた、あの男に目を付けられたのか。災難だな、あいつは金と権力にものを言わせて、あちこちで好みの男を喰ってる奴だ」

     別の常連客がそう言ってパンドロを心配してくれる。だが、当の本人は困惑している様子だった。何故ならば、自分が男性から性欲対象に見られたことに対して驚きしかなかったのである。

    「なんで俺がそんな対象にされたんだろう……」
    「あんた自覚がないかもしれないけれど、顔も容姿も相当整っているんだから気を付けろよ。あんたにとっては、今の状況はかなり危険だと俺は思うぞ」

     そんな忠告を受けてもなお理解が及ばない様子に溜息をつく。そして彼はパンドロに対して念押ししたように言うのだ。

    「お偉い貴族様の中には気に入った男を見繕って、そういう行為を仕込んでいるという噂を聞いたことがある。あんたのその顔や身体にはそっち系の男が飛びついてくるかもしれないってことを覚えといた方が良いぞ」

     そんな話を聞かされてパンドロは茫然としているようだった。今までの自分の人生経験上、一切理解のできない状況なのでどう対応していいのか分からないのだろう。同僚と常連客が去ってゆき、その日の仕事を終えても彼は状況を整理できずにいたのだ。
     店内にはパンドロと店主がいるだけであったが、そんな悩める彼に話しかけたのは意外にも店主だった。彼は静かに店仕舞いをする準備しているところだった。鍵を取り出し最後の点検をしたところで溜息混じりに声をかけてきたのだ。

    「無理しなくてもいいんだぞパンドロくん、妙な視線に晒され続けて心を痛めてまで働かなくてもいいんだ。俺は君の事を息子のように思っているんだからな……」
    「……有難い、お言葉です。命を助けてもらっただけでなく、身元も怪しいだろう俺をこうして受け入れて下さった恩を返しそうとしているのですが、それはただ自分の自尊心を保つためなのかもしれません」

     こう語るパンドロの顔は暗く沈んでいた。その様子を見て彼もまた深い溜息をついた後、真剣なまなざしでこう言ったのだ。

    「いいかい? 大事なのは自分の身体と心を守ることだよ。それは覚えていておくれ……。ああそうだ……」

     店主は思い立ったようにカウンター奥の棚をあさると、店休日の看板を手に持って扉に掲げた。

    「丁度明日が休みだから、今日は二人で夜更けまで飲もうじゃないか……! なあ!」

     明るく笑いパンドロの背中を叩いたのだった。
     そんな店主の誘いを受けて戸惑いつつも彼は感謝して誘いを受けることに決めたのだった――。
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