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    まちこ

    twst/ジャミ監が好き rkrn/di先生が熱い 好き勝手書き散らす場所にします みんな幸せになれ

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    まちこ

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    ずっと我慢していた感情が大爆発した監督生と、その監督生にどう接していいか分からなくてやるせないジャミル先輩のジャミ監

    ジャミル先輩好きな人ほど慰めるの下手くそだといいな(願望)

    #ジャミ監
    jamiAuditor

    「魔法も使えないくせによくのうのうと学園で生活できるよな」

    「いろんな寮の寮長ともつながり持ってるらしいじゃん」

    「いいよなあ、俺も異世界から来ました!とかふざけたこと言っていろいろ免除してもらいたいわ」



     聞くつもりなんてないのに、毎日嫌でも聞こえる彼女の悪口。異世界から来たから、魔法が使えないから、女だから、イレギュラーをつまんでは面白おかしくこねくり回して下品に笑う生徒を見るのは不快だった。不快に思うようになったのは、彼女の人となりを知ってしまったからだろう。必死で足掻いてる彼女を見ていたら、少なくとも俺は馬鹿らしく悪口で時間を過ごす気にはなれない。



    「酷いことはやめろよー、こいつ俺たちと違ってこんなちっぽけな魔法さえ使えないんだぜ?」

    「そうだった!あの狸みたいなモンスターより何にも出来ないんだったな!」



     部活終わり、夕飯のメニューを考えていた頭に流れ込んできたのは馬鹿にしたような笑い声だった。会話にもならない暴言の内容ですぐに彼女が絡まれていることに気づいて辺りを見渡すと、大きな木の方に三人分の人影が見える。

     音を立てずにそっと近づいて行けば、はじける音と一緒に木の根元に水が広がっていった。



    「本当のことを言われて泣いてちゃこの学園じゃやっていけませんよ?」



     俺に気づかないまま彼女に絡むのに満足したのか笑いながら二人組が離れていく。
     木の影を覗き込んだら頭から濡れた彼女が俯いて立っていた。握りしめた手は小刻みに震えていて髪は濡れて顔に貼りついている。



    「・・・大丈夫か」



     使っていなかったタオルをかけて、絞り出した言葉に彼女は返事をしなかった。それどころか身動き一つしない。



    「そのままだと風邪をひくぞ。寮に戻って・・・」

    「・・・私にだって」



     小さな声で呟いたかと思ったら勢いよくタオルを胸に叩きつけられた。あげられた顔はぐしゃぐしゃに濡れて歪んで赤くなっている。いつも大人しい彼女しか見たことがなくて驚きのあまり思わず黙ると、叫ぶように彼女は続けた。



    「私にだって!自分の世界があった!友達がいて、家族がいた!みんなみたいに学校に通って、生活してた!」



     どん、と胸を叩かれる。



    「それが全部なくなった!!」



     俺を見ているようで全く見ていない彼女はそのままずるずると座り込むと大声を上げて泣き出した。


     全ての勝手が違う世界に何も持たずに放り込まれて、みんなが当たり前に使えるものも使えず、異性に揉まれて生活するのは、心をすり減らして生きていくことと一緒で、それに必死に耐えている彼女は立っているだけでも精一杯で、だけど誰にもわかってもらえない。


     泣き続ける彼女を見て胸が裂かれるように痛くなった。自分じゃどうにもできない無力さが痛みに拍車をかける。



    「バカみたい・・・」



     立ち上がってその場から去ろうとした彼女の手首を反射的に握っていた。真っ赤な目で振り向いた彼女は放っておいてほしそうに睨んだけど、手が離せない。



    「・・・今晩オンボロ寮に行ってもいいか」

    「え?」

    「夕飯、君が好きなものを作ろう」



     人の慰め方を知らない自分が恥ずかしかった。

     ぱちぱちと涙をこぼしながら瞬きをした彼女はまたくしゃりと顔を歪める。



    「・・・私、シチューが食べたいなぁ」



     軽く引っ張るとそのままぽすんと胸の中に納まって、次は静かにさめざめと彼女は泣いた。
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    まちこ

    TRAINING一年生とスカラビアと監督生とお箸の話 ジャミ監

    お箸という存在そのものが無さそうだよね
    「ハシ?」



     食堂での昼食の時間、「食べ物がおいしい世界でよかった」と呟いたことをきっかけに、その場にいたみんなが異世界の食事情に興味を持った。異世界、というよりも日本の食文化しか伝えることができない私は、とりあえず食器から違うことを伝える。スプーンやフォークだって使うけど基本はお箸を使うことを教えれば、みんな首をひねって頭の上にたくさんのハテナを飛ばした。



    「なにそれ、どういうの?」

    「・・・二本の細い棒」

    「棒!?」

    「え、どうやって、食べるの・・・?」

    「挟んで食べるの」

    「は、挟む?」



     みんなの頭の上のハテナの数はどんどん増えて、ついにエースが私を疑い始めた。そんなものでご飯が食べられるわけがないと。



    「本当だよ」

    「じゃあ証拠見せろよ」

    「お箸がないのに使えないでしょ・・・」



     ・・・しょうがない。



    「誰かペン貸して。二本」

    「ん、これでいいか?」



     誰より早く、そして快く差しだしてくれたジャックにお礼を言って私は久しぶりに二本のボールペンを指に挟んだ。懐かしい持ち方に小さく感動をしながらボールペンのペン先をかちかち 2691