【レイチュリ】ANSWER 2「雨は嫌い」
天気予報がそれを告げるとき、任務先で急にそれに降られたとき、朝目が覚めて窓硝子をそれが叩くとき、彼の横顔は憂鬱そうに翳って、いつも喧しいだけの口は静かになる。
いつもに増して薄っぺらな笑顔ばかり浮かべるようになるか、それすらもしなくなって明らかに機嫌が悪くなる日もあった。雨の夜は夢見が悪いのか決まって魘されているか、最初から諦めたように眠らずにベッドの端で膝を抱えるように丸くなっている。一緒に眠ることに慣れてからもそれだけはしばらくのあいだ変わらず、そのうちに雨の日だけは彼の方から僕の腕の中にするりとやって来ておとなしくそこに身を委ねるようになっていた。
一緒に暮らし始めるより前、まだ自分の中で彼の存在がどういったものであるか理解するよりも先に体の関係を持つようになっていた頃、いつも悪態ばかりの彼が雨の日だけは「もっと」と縋るように何度も求めてきていたことに気付いたのは最近になってからだ。
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