海老名が世界で一番可愛いっていう惚気話「えー♡かわい……」
俺は世界で一番可愛い恋人とのデート動画を見ながら、顔を緩ませていた。
「うわ……、かわっ、かわい……」
しかも、ただのデートじゃなくて、昨日のテーマパークデートの動画。つまり、海老名の猫耳姿が映されてるってこと。
「この海老名、可愛い……」
可愛すぎて、ずっと動画を撮ってたけど、マジで正解。見返すたびに可愛いポイントが増えていく。あと、猫耳似合いすぎてて、鼻血出そう。
「あ、これ面白かったね。急に下がるやつ」
俺がベッドの上でくつろいでる海老名の方を向くと、海老名は不機嫌そうな顔をしていた。
「昨日楽しかったね」
俺が海老名の頬を撫でようと手を近づけると、海老名は分かりやすく俺のことを避けてきた。
「え、っと、あの……、昨日楽しかった、よね……?」
海老名が俺のことを嫌がるのは少なくないけど、毎回余裕なんてなく、今も絶対挙動不審になっている。俺が焦りながら、海老名の反応を見てると、海老名は控えめに頷いた。
「だ、よね……」
え、俺なんかしたっけ……?嫌われてる……?えっ、無理。それは無理。待って待って。えっ?昨日は機嫌良か、いや、俺がテンション上がってて嫌がることしちゃった……?
「それ消して」
「え?」
「動画」
「えっ!?」
消す……!?この可愛い動画を!?え、削除ってこと?それとも、止めればいいだけ?いや、絶対削除だよね?えっ、そんな……、えぇ?
「あの、でも、可愛いし……」
「可愛くない。消して」
「可愛いよ!ほらっ!この撮られてるのに気付いて、照れてるのとかもう全部可愛、わっ!」
俺がいかに海老名が可愛いかを必死に語ってると、海老名は俺の顔めがけて枕を投げてきた。でも、優しめに投げてくるのがまた可愛くてキュンとしてしまう。
「うるさい」
「ごめんね。でも、せっかく撮ったのに消すのはもったいないよ」
「別に。だって、また……」
「え?」
海老名は何かを言ってたけど、声が小さくてよく分からなかった。俺がジッと海老名の顔を見ながら、真剣に耳を澄ましてると海老名はちょっとだけ俯いた。
「昨日の俺ばっかり構っててうざい……」
え?えっ、それ、え?かわい……。え、もしかして、自分に嫉妬してるの……?
「……海老名、それって、」
「大体猫耳好きとか変態みたい。可愛い可愛いって俺も男だから嬉しくないし、猫耳似合ってないし、佐々木って本当に悪趣味」
急に早口で話す海老名を見て、俺の脳内には可愛いの言葉で埋め尽くされてしまった。
「海老名、ごめんね。でも、俺毎日海老名に惚れ直してるし、日に日に好きな気持ちが増えるから昨日よりも今日の海老名の方がずっと可愛くて好きだよ」
「そういう話してない」
照れてるのかまた海老名の声は小さくなっちゃった。にしても、可愛すぎる。俺が昨日の動画を見て、ずっとデレデレしてるから怒っちゃったの?
「せっかく一緒に居るのに、携帯ばっかり見ててごめん。海老名、大好きだよ」
俺が海老名の横に行くためにベッドに座ろうとすると、海老名は俺の肩を押さえて、これ以上近づかないようにしてきた。
「動画消して」
あ……、忘れてた……。海老名が嫌がることはしたくないけど、こんな可愛い動画を消すのは……。
俺が苦渋の決断をしようとしてると、ふいに海老名が俺の肩あたりの服を弱々しく引っ張った。
「……えびな?」
海老名は怒ってそうな感じじゃなくて、むしろ……、なんか……可愛い顔をしてる。
俺が少し固まってると、もう一度、海老名は俺の服を引っ張ってきた。この仕草は俺にキスして欲しい時とかにしてくるけど、え……、今していいのかな……。
「……ん」
多分無意識だろうけど、海老名は少しだけ口をキュッとした。
え、キスしていいかな……。でも、これでタイミング違ったら、怒られそう。かといって、あー、可愛い。無理だ。キスする。
「海老名」
俺が海老名に顔を近づけると、少しだけ抵抗するように顔を下に向けたけど、海老名が本気で嫌がる時は顔を横に向けるからこれは可愛い照れ隠し。てことは、キスしていいんだ……。
俺が海老名の顔を覗くように下からキスをすると、海老名は何も言わずに俺の肩に置いていた手を俺の首にまわした。
「ごめんね。寂しかったね」
「別に寂しくない」
本当に世界で一番可愛い天邪鬼さんすぎる。口ではこう言いつつも、俺が離れないようにずっと襟掴んでるの可愛すぎる。
「次のデートはどこ行きたい?」
俺が優しく聞くと、海老名は視線を逸らして、不機嫌そうに呟いた。
「……家がいい」
うわっ、可愛い。マジで俺の恋人は可愛い。