第35回毎月ちょぎにゃん祭り お題「菜の花」ああ、でも、おお、でもない声が重なったのはほんの一瞬のことで、そのあとどちらともなく口を噤み、ふたりの間に静寂が流れた。
それぞれの視線はお互いになく、横に並び立った形で同じ方向を向いている。それは一面黄色の花のじゅうたんであった。時折吹く風に左右に揺られる背の高いその花は南泉の本丸で咲くものと同じだが、規模が違う。本丸でも壮大な敷地一面に咲くことがあるが、これはその倍近くあるのではないだろうか。視界一杯に広がる黄色はただただ圧巻と言うしかなかった。
今日は朝餉の当番を受け賜った以外非番であった南泉は、夕餉の当番までは非番である長義が時間を無駄に過ごすのが嫌だと、主からかっ攫って来たおつかいに付き合わされ、昼餉も食べることなく万事屋街へと足を運んでいた。
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