メスメルがメリナの代わりに巫女をしてくれる世界線の話 弱者を見捨てぬまったく新しい『律』に、興味がなかったと言えば嘘になる。
むしろそれが実現できればどんなに素晴らしいだろう、と思いはした。これまでのどの世界でも、そんなことは叶わなかったから。
でも結局絵空事だったらしい。
虚しさを抱きながら、褪せ人はこれまでと同じように王を待つ礼拝堂で目覚め、その先に現れた接ぎ木の王子を淡々と処理する。
少なくとも八度目の目覚めだ。或いはもう少しばかり、多いかもしれない。
だがやることはいつも同じ。崖から落ち、漂白墓地を進んでリムグレイブに出たら、ヴァレーに嫌味を言われつつ適当にツリーガードをあしらって、エレの教会でカーレと話す。
何度話しても彼のことは好きだ。数少ない良き人だ。また彼と会えてうれしいなどと思いながら、関門前の廃墟に向かって祝福に触れる。
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