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    しいげ

    @shiige6

    二次創作オンリー※BLを含む/過去ログは過去に置いてきた。

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    しいげ

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    GoSでがっかりリヒターをシモンが励ます短文。リヒター召喚後くらい。高祖に惚れ込んでほしいなと思っています(否CP)

    ##悪魔城ドラキュラ

    乾坤の血族「お前には辛い話だろうが、聞いておけ」

    遠い過去から召喚されたリヒターは、紡がれる自らの『未来』の話に愕然とした。
    有角は歴史の唯一の生き証人だ。その言葉には良かれ悪しかれ強い説得力がある。
    ベルモンドの血と誇りを受け継いできた自分が悪魔城の城主となり、宿敵の復活に手を貸したのだと。暗黒神官の呪いに蝕まれてのことだと有角は言ったが、そうなったのはそれだけの要因が自身にあったためだろう。
    そんな筈はない、と言えるほど未熟であればまだよかった。
    リヒターは己の内に沸き上がる衝動に覚えがある。
    戦いは恐ろしくとも、その闘争心が自らを奮い立たせ、ドラキュラにも立ち向かわせたのだ──それが過ちだったというのか。いつしか自分は自分に負けるのか。
    そのことがショックでもあり、一族としての矜持が揺らぐ感覚にひどく戸惑いを覚える。


    「リヒター、大丈夫…ではないな」
    いつの間にか誰もいない廊下に立ち尽くしていたリヒターに、声をかけたのはシモンだ。
    血族の偉人、最も名高いベルモンド。
    うしろめたさで反射的に背筋が伸びる。
    「申し訳ありません、ご心配をおかけして…」
    「謝るには及ばない。…お前の気持ち、わかるとは言わないが、気に病みすぎていないかと心配になってな」
    投げかけられる労りの言葉に、リヒターは思わず唇を噛み拳を握り締める。
    シモンはリヒターを詰りに来たのではない。そんなことはわかっている。起こってしまった『過去』を誰もどうすることもできない。
    ただ、自分の知らぬ自分が犯した過ちが、招いた結果の大きさが、そしてそれは真実だと告げる自らの魂が、若きリヒターの感情をかき乱すのだ。
    一族の誇りを守り通した高祖シモン…その前に立っているだけで、逃げ出したいほどの羞恥に苛まれた。ただ同時に、この人だから聞いてほしいと縋る気持ちが強く沸き起こる。
    情けない、などと思う隙もなく。

    「…………高祖シモン…、泣き言を、お許しいただけるでしょうか」

    子供の涙のようにぽろりと零れ出たリヒターの声に、シモンは無言で大きく頷く。
    言いたいことは当然、『未来』の自分の所業についてだ。
    力の使い方を誤り、悪用され、聖鞭の所有者たる資格をも失った。ベルモンドの末裔としてあってはならぬことだ。
    「最も高潔なベルモンドと謳われた貴方に比べて…俺は──…!!」
    「リヒター」
    言葉を遮るように、ぽん、とリヒターの肩に大きな手が置かれる。
    「自らを貶める理由を探すこと、起きた出来事に囚われ続けること、いずれもお前自身のために、やってはいけないことだ」
    力強くも滔々と、子を諭すようにシモンは告げる。
    「有角も、そんなつもりでお前に事実を伝えたのではない。お前なら乗り越えると信じたからだ。顔を上げ、胸を張るといい」
    「…っ ですが…俺は、ッ…俺に、貴方ほどの高潔な精神があれば…!」

    その時シモンが吹き出すように笑った気がして、リヒターははっと顔を上げる。
    そこには、苦笑した──今ここに召喚された、ただ自分と同じように悩み足掻く人間の表情があった。

    「──リヒター、私は、己の時代で“高潔”などと呼ばれたことはない。高祖ラルフがドラキュラを討ち果たしても、ベルモンドは魔物と変わらぬ怖ろしきものだという人々の方がはるかに多かった。今の私には──ドラキュラや身にかかる呪いと戦い、命からがら生き延びた記憶しかない。後世、人々と生活を共にする場を作り上げたと…ルーシーから聞いたときは、我が事と思わず耳を疑ったものだ。」
    シモンは冗談めかして笑う。
    これが、苦しみを受け止め、人に寄り添い、ベルモンド家の基礎を作り上げた人物だ。ありのままの、尊敬すべき人なのだ。
    こみ上げる何かにリヒターは口を開こうとするが何も言葉が出てこない。
    「そんなものだ、リヒター。一族の誇りがお前を支えるならばよいが、枷にする必要はない。お前自身が積み上げたものを信じるのだ。己を信じ挑み続ける勇気を持つお前を、私は誇りに思う」
    「……っ」
    リヒターは己の目頭が熱くなるのをはっきりと感じた。
    最も敬愛すべき名を贈られたベルモンド。
    戦いの場では見せない穏やかさで、力強くリヒターの背を押してくれる。

    (歴史を超えてここにあることを幸いと言うなら、それはこの人に会えたことだ)

    掛け値なしにそう思えた。


    さすがに涙を流すことはこらえ、リヒターは礼を言ってシモンの背を見送る。
    一人に戻ってから自分の胸に手を置き、語りかけるように目を伏せた。その様子は敬礼のようでもある。

    「…高祖シモン。俺は、貴方のような強さをこそ、求めるべきなのでしょうね」

    あの人から、祖父から、確かに受け継いだものがある。それがずっと己を支えてきたのだと思い出す。
    いまだ己を恥入る気持ちは消えないが、それは同時に、胸に誇りと温かさを満たすものになっていた。
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