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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    2022-07-13/夏の空閑汐♂13日目!切手を舐める仕草ってえっちだよねって話。第二宇宙速度って単語がただただエモ。

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #文披31題
    wenPhi31Questions
    #BL

    文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day13 リビングルームとして使われている部屋に置かれたダイニングテーブルで紙片に向かう汐見へと、空閑は珍しげに視線を向ける。汐見の手に握られているのは、今年の誕生日プレゼントとして彼が空閑へと贈ったものと揃いのボールペンで。
     どんなに難解な課題でもそんな表情は浮かべていなかったと思える程の渋面を晒し、白い紙にボールペンを走らせる汐見の様子を観察していた空閑は結局観察だけでは飽きたらず汐見の向かい側へと腰を下ろす。空閑に見られたく無いものであれば、汐見は図書館か格納庫にある飛行教官室に行く事を知っていたのだ。
    「アマネ、何やってるの?」
     顔を顰める汐見へと声を投げれば、汐見の切れ長な瞳は白い紙から空閑へと向けられる。深い茶色の瞳には、わかりやすく困惑が浮かんでいた。
    「手紙。こういうの苦手なんだ」
     途方に暮れたような深いため息と共に告げられた言葉に、空閑は成程と頷く。メールのやり取りをすれば、下手すれば単語だけで返してくるような男だ。ある程度の文章量を求められる手紙というのは、彼の苦手とする最たるものだろう。
    「珍しいよね、手紙書くなんて見たこと無かった」
    「俺だって何年振りかわからん。妹からそろそろ実家に手紙でも送っとけって言われてな。アイツの言う事は聞いておいた方が良いんだ」
     盛大なため息を再び吐き出した汐見に、空閑は苦笑を隠さずに頷いて。汐見と実家の関係はあまり良くは無いという事を空閑は知ってしまっている。それは空閑と彼の実家も似たようなものなのだけれども。そして、汐見の妹は今年からこの学校の普通科に通っている事もあり空閑とも面識があった。
     汐見には似ても似つかない社交的な性格で、気の回し方だとか立ち回りがものすごく上手いという印象の女の子。きっとそれは、兄である汐見と両親の関係を見て得たものなのかもしれないというのが空閑の印象だった。
    「あぁ、妹ちゃんとご両親の関係は良好なんだっけ」
     空閑の問いに汐見は肯首しながら時候の挨拶だけが書かれた紙面を睨みつける。
    「澪は上手く立ち回ってるからな。俺とは大違いだ」
     あの人は持ち上げて従っとけば無害ではあるんだけどな、と何かを諦めたような笑みを浮かべる汐見に空閑も小さく頷いて。汐見は父と、そして空閑は母と折り合いが悪い。どちらも彼らに対してこの学校への入学を反対してきたという事を彼らは互いに知っている。
    「まぁ、高校まで卒業して、航宙士学院に手が掛かったからな。うちはまだ良い方だ。お前の所のが大変なんじゃないか?」
     結局簡単な近況で紙面を埋め結びの文を書きつけた汐見は、丁寧に一枚の便箋を畳み既に住所を書いていた封筒へと収めながら肩を竦めて空閑へと問う。
    「もう慣れちゃった。父さんはこっちの味方だし、母さんの小言は聞き流せばいいだけだからさ」
     お前の見る夢に手など届きやしないと汐見を否定する彼の父と、危ないからやめなさいと空閑の進む道を拒否する自身の母。どちらが大変という比較は出来ないだろう。言うなればどちらとも厄介だ。けれど、その程度の否定に挫けるようじゃ第二宇宙速度なんて超えられやしない。
     ちろりと切手の裏を舐める汐見の朱い舌に吸い付きたくなる衝動を抑えた空閑は、汐見の白く長い――しかし無骨な指先が存外に丁寧な動作で切手を貼り付ける様を見つめていた。
    「あぁ、慣れな。俺もいい加減慣れたいんだが、どうにも腹立たしいんだよな」
     汐見はその腹立たしさを原動力に、文句の付けようも無い成績を叩き出している事を空閑は誰よりもよく知っている。そうやってこれまでも、これからも、彼は秒速十一.二キロメートルを目指すのだ。
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    TRAINING2022-07-01/文披31題夏の空閑汐♂祭始まるよ!!!!!そう言えば学祭の話って書いてなかったな〜って思ったので初夏は学祭の季節だろ!?と空閑汐♂には踊って頂きました。学祭で踊るタイプの男性アイドルユニット、うっかり某SとAを思い浮かべてしまった。地元じゃ負け知らずだぜ、アミーゴ。
    文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day01 太陽は山の奥へと隠れ、空は紺青と朱による美しいグラデーションを見せていた。校舎の屋上から遠くに揺れる海原を見つめていた汐見は、屋上に巡らされた柵に凭れて大きなため息を一つ吐き出す。
    「おつかれ」
    「お前もな」
     からからと笑いながら疲れを滲ませた息を吐き出す汐見へと労いの言葉を掛けた空閑に、汐見は小さく笑い言葉を返す。卒業証書を受け取ってから数ヶ月、季節は夏へと差し掛かる頃で。互いに高校指定のジャージを纏う彼らは、次の進学先への渡航までの間をこの場所で過ごす事を決めていた。
     実家に帰るよりも、渡航までの約半年をこの場所で知識を深めた方が有意義だという結論に達したのは何も彼らだけではない。彼らよりも前に卒業していった先達であったり、同学年で本校への進学を決めている者の一部も同じような選択をしており――学校もまた、それを受け入れる体制が整えられていた。
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