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    しいげ

    @shiige6

    二次創作オンリー※BLを含む絵や漫画や文章を置いてあります。ジャンルはマイタグ、CPはハッシュタグに表記。

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    しいげ

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    キャッスルヴァニア、マティアスの髪を触りまくるレオン。レオンの疑似恋愛ぽいけどCPではないと思う。戦場の様子とかわかりません…

    ##悪魔城ドラキュラ
    ##Castlevania

    神ともにいずして露営地の天幕内に貴重な灯が灯されている。それが浮かび上がらせる人影は二つ。重なる位置にあるそれは、卓に腰掛ける一人をもう一人が覗き込むように寄り添う光景だ。
    「お前の髪は綺麗だな」
    騎士の力強い手が、長い黒髪を弄ぶ。
    女性も羨むほど豊かで艷やかな髪は、騎士団において異質さ際立つ「智のマティアス」のもの。それを持ち上げたり手で梳いて遊ばせているのは、若くして騎士団を支える実力者のレオンだ。
    若獅子にじゃれつかれることしばらく。邪魔しない程度に、好きなようにさせている。
    「飽きないな」
    黙っていたマティアスがレオンに声を掛けると、レオンは手を止めずに答える。
    「これほどの美事な髪、誰だって目を奪われる。私の髪は見ての通り、ぴんぴんと跳ねて落ち着きやしないから」
    レオンのブロンドが灯の揺らめきにきらと浮かび上がるが、マティアスは目もくれない。戦場で縦横無尽に戦う男には髪など邪魔なだけだ。だから今のままがレオンには適している。
    無言のうちにそう答えるかのようにマティアスは沈黙を貫き、レオンは気にせず続ける。
    くい、と軽く指に引っ掛かり持ち上がった髪から形のよい耳が覗いた。
    「耳飾りはしないのか?似合いそうだ」
    「…どうせ髪に隠れる。意味はなかろう」
    「こうやると見えるじゃないか」
    「引っ張るな。何度言わせる?明日の行軍開始まで休むのがお前の務めだ」
    「お前が休んでいないのに?」
    食い下がるレオンに、マティアスの端正な眉間に皺が寄る。ただし怒りは感じない程度に。
    「私とお前は役割が違う。私がいなくばお前は戦う場がなく、お前がいなくば私は戦うこともできない」
    「わかっている。皆もそれをもっと心に留め置くべきだと思うが…」
    言葉を交わしながらもマティアスは地図をなぞる手は止めず、レオンも傍らで共に確認を怠らない。
    互いに慣れきった様子で、戦い前の気持ちを整理している。
    「お前の髪は気持ちが良くて」
    と思えば、隙をついてレオンが甘える。天幕内に二人のみでなければマティアスの冷たい打擲がその手を振り払ったことだろう。
    「エリザベータの手入れはいつも完璧だな」
    「ああ」
    マティアスが大切にしている愛妻の話は遮られたことがない。いずれレオンも妻を迎えるが、クロンクビスト夫妻のような仲を築きたいとひそかに憧れているのだ。
    「レオン。恋しくば、髪いじりは次からサラにやらせてもらえ」
    「!!」
    言われて慌ててマティアスの髪から手を離すレオンの顔は、それまでの陶酔とうってかわり一気に紅潮している。
    「わ、私達はまだそんな!」
    「…許婚なら許されるだろう。人の髪で練習するのももう十分なはずだ。さあ」
    マティアスが立ち上がると、漆黒の黒髪はさらりと胸元に落ちかかる。
    ああ惜しい。練習じゃない。その髪にずっと触れていたい。
    戦いの前であるせいかそんな甘ったるい気持ちがレオンから去らないが、マティアスはもう許さないだろう。
    彼の立ち姿には、武術的な意味ではない隙のなさが匂い立つように漂う。

    美事だ、といつも思ってきた。
    レオンが騎士団に入る頃にはすでに注目を集めていたマティアスだが、智を軽んじる騎士たちに軍師らが侮られ疎まれる様もまた数多見てきた。
    その度、武力ではなく智力でやり返し立ち塞がる障害を跳ね除けてきたマティアスに、レオンは反発ではなく尊敬を強くした。
    彼は騎士団の中で力によらず強く、その強さは美しかった。
    身嗜みを整えることも含め、マティアスはいつも気高い自尊心で自らを支えている。
    その傍らにレオンがいるようになった頃には、二人が騎士団常勝の立役者と言われるようになっていた。レオンは尊敬をもってマティアスを信頼し、いつしか自惚れではなくマティアスも気を許してくれるようになった。
    この気高く美しい友と様々な垣根を経て親しくあれることはただ喜びなのだ。

    「サラに会いたいか」
    いつもながらその姿に目を奪われていたら、マティアスが不意にレオンに声をかけた。
    お前に見惚れていたとはさすがに伝えづらい。
    「それは…まあ」
    「気にするな、聞き耳を立てるものはいない。声高に泣き言を言ったところでもはやお前を侮る者はいないだろうが」
    マティアスがレオンの側に寄る。威厳を魅せるための衣の装飾が灯を受けて夜の星のように明滅する。
    「今回も勝って帰ればよいだけだ。そのために、今はもう休め」
    マティアスなりにレオンを労り、言葉で鼓舞しているのがわかる。だからレオンももう年上の親友に甘えるのはやめて休むことにする。
    「必ず。お前がエリザベータの元に早く帰れるように努めよう」
    「ふ…気持ちだけ受け取ろう。急く局面でもない時に焦りは無駄だ」
    愛妻の名を出すとマティアスは微笑む。それが嬉しくもあり、敵わぬとも思う。
    大切な者の大切な存在でありたいと願うのは、共に守り支え合えることは、家を守る女性も戦場で戦う男達も同じだ。

    守る力を共に振るいたい。
    それがレオンが戦う理由だった。
    唯一無二ではなくていい。心許せる友と一緒に。
    レオンの若い希望はそれでしばらくの間は満たされていたのだ。


    神に裏切られた男が友を裏切る。
    そうして許された時は終わる。
    もはや共に涙を流すことなく。
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