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    NEIA_AINE

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    #アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    【アロルク】28分遅刻しました!すみませんでして!借りたお題は「お酒」の方で、単にアルコール代わりにお酒を吹くアーロンが書きたかっただけ。なお医療行為としては効果はあるけど、正しくはない、みたいな感じらしいし、私自身は医者じゃないので、あくまでファンタジー的に読んでください。あと運営様、お疲れ様でした!最後までよろしくお願いします!

    #アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    #アロルク
    allRounder

     失敗した。その一言に尽きる。
     「クソッタレ!おいルーク、大丈夫か!」
     「だ、大丈夫だ」
     あまりの激痛に顔が引き攣る。この状態では銃を握ることすらできない。どう考えても戦力外状態だ。痛みが思考の邪魔をする。ただ僕が負傷した現状が、非常にマズイことだけは明白だった。

     時は数日前に遡る。
     「「Discardに関する資料が持ち去られたぁ!?」」
     僕と相棒のアーロンはナデシコさんの一声でミカグラ島の警察本部、警視総監室にいた。
     「正確に言うと、ハスマリー研究の資料が持ち去られた、だ」
     ナデシコさんはいつもの落ち着いた雰囲気からガラリと表情を変え、かなりピリついた態度だった。それだけにこの話の緊急性がうかがえる。
     「今我々が組織の抜本的な改革をしていることは君たちも知っての通りだが、その過程で出てきた資料はすべて紙ベースにした上で資料課が管理をしている。しかし、そこの新人がうっかり鍵を閉め忘れたらしくな。何者かの侵入を許した上に、最重要機密扱いの資料たちを盗んだようなのだ」
     眉間に手を当て、困り果てた顔のナデシコさん。かの研究の悲しくも恐ろしい部分の一端を垣間見てきた彼女だ。この研究がこれ以上人々に知られることを良しとはしないだろう。
     「んで?オレたちを呼びつけて、そいつらをとっ捕まえてこいってのか?」
     アーロンが横で歯をむき出しにしながらナデシコさんを睨めつけた。無理もない。長年追い続けてやっとケリをつけたことなのだ。
     「そのとおりだ。こちらの不手際を押し付ける形になってしまうのは甚だ申し訳ないが、私はこれでも警視総監だ。この一件だけに注力したくてもできない立場でな。しかもこの件はあの研究のことを知る者にしか頼めないのだ。頼む、アーロン、ルーク」
     そう言ってナデシコさんは僕らに頭を下げた。
     「やめてください、ナデシコさん!誰にだってミスはあります。ヒーローはそういう人を助けるものだし、困ったときはお互い様じゃないですか」
     僕は横に立つアーロンをチラリと見上げる。
     「それにヒーローがもう二人いるんですから、最強ですよ!」

     アーロンが壮絶な顔でそう啖呵を切った僕を見ている横で、ナデシコさんからの情報を元に考察をし、さらに捜査後、潜入ルートを割り出したのが数時間前。その時には遠方にいたモクマさんとチェズレイも合流し、いつものチームBONDでの潜入と相成った。
     今回の潜入は僕とアーロンで陽動を仕掛け、その間にモクマさんとチェズレイが潜入。回収しなければならない資料を持ち帰る。そんな作戦だった。
     しかしここで大きな誤算が生じた。増援部隊の数が多すぎたことだ。僕とアーロン二人だけで何とかなる人数を遥かに越えていたんだ。
     近接武器から遠距離武器まで、武器商売でもするのかってぐらい多様な武器を繰り出す敵を回避しつつ、気絶もしくは戦闘不能にするというのはあまりに難しい。一方で相手は僕らを殺しても構わないわけだから全力で向かってくる。
     そしてその中でどちらかが怪我を負うことは予測できないわけではなかった。それがたまたま僕だっただけだ。
     「ルーク!危ねえ!」
     そう叫んだアーロンの声が耳に届いていたときには、既に右肩から左腰にかけて大きく斬りつけられていた。即座に振り返り、敵の刀を持つ右手を撃ったが、それが限界だった。背中だけマグマに触れているように煮えたぎっている。他の感覚を塗りつぶさんばかりの痛みで手から愛用の銃がからんと落ちたことも、その音を聞いて初めて気づいた。
     「チクショウ!一旦ここを離れるぞ!」
     相棒にそう言われて、そして冒頭に戻る。

     敵の包囲網で最も薄い部分をアーロンが切り開き、そこを走り抜けた。背中の熱は一秒ごとにその温度を上げていくようで、破茶滅茶な感覚を僕に植え付ける。
     それでも僕は足を止めることはしない。ここで僕が倒れれば相棒はここで留まって、敵を迎え討とうとするだろう。しかしあの人数を一人で対処―しかも僕を後ろに庇いながら―することはいくら彼でも不可能だ。そんなことをさせる訳にはいかない。
     アーロンもそれを理解しているのだろう。僕に肩を貸して、走り続けてくれた。
     「ここなら大丈夫だ。物音がしねぇから誰もいねぇ」
     小声で僕に囁いた彼は、その部屋に入る。それに続いた僕は扉を締めた瞬間、膝から崩れ落ちた。
     「っ、おい!」
     「…ぐっ、だ、っ、大丈夫……、慣れればこの程度の痛み大丈夫だ…」
     嘘だ。慣れようがないほどの痛みで気絶すらできない。傷自体は深くはないが、範囲が広すぎる。顔を顰める僕を、同じく顔を顰めたアーロンが抱え、ソファに下ろす。切られた背中が当たらないようにうつ伏せだ。
     「ちぃっ…!!」
     大きく舌打ちした彼が部屋を漁る。いまいち焦点の合わない目で部屋を見回すと、ちょっとした客間のような部屋だった。
     「これしかねぇか…」
     客用の小さな冷蔵庫でもあったのだろうか。アーロンが持ってきたのはウイスキーだ。それを傍らに置き、テキパキとした動きで僕の衣服を破る。背中の傷を見たのだろう。眉を顰め、唸るアーロン。
     「酒で、誤魔化せるような、痛みは越えてるよアーロン」
     僕がそう言うと
     「ちげぇ。こうするんだ」
     アーロンはおもむろにウイスキーを口に含み、僕の背中に吹き掛けた。口の中で少しばかり温められたアルコールは、それでも僕の背中の熱よりは低かったようで、僕の傷に溶けていく。
     「い"っ"っづ……!」
     アルコールが沁みるのと、細かい霧が降りかかる刺激に抑えきれない呻きが口から溢れる。二度ほどウイスキーのスプレーを吹き、滲む血を先程破った僕の服たちで押さえつけつつ、治療をこなすアーロンは手際が良かった。
     「うま、いなアーロン」
     「紛争状態の国の中にいたら、必然と覚えなきゃならねぇよ。自分の怪我ぐらい自分でできねぇとあそこじゃ生きていけねぇし、他人の怪我に気を使う余裕なんざない」
     きっと僕が気を失わないようにだろう。普段より饒舌に僕に言葉を返してくれる。
     そうやって他愛もない会話をしていると、部屋の外が騒がしくなってきた。ここにいることがバレるのも時間の問題だ。潜入開始からそれなりに時間が立っているし、モクマさんとチェズレイはもう資料を回収しているかもしれない。
     「おい、ルーク。立てるか。おっさんたちから連絡が来た。資料は回収したらしい。ずらかるぞ」
     「ゔっ…だ、大丈夫だ。いける、よ」
     回収できたならばあとはここから脱出するだけ。しかし動かそうとした脚は全然言うことをきこうとしない。ソファに手をつこうとしたけど、指先の感覚がまるで分厚い壁を隔てているようだ。
     「…いや、よしんばその状態のまま立てても、多分動けねぇな」
     アーロンがそう言ったのが聞こえたときには僕の身体は既に宙に浮いていた。背中の傷に触れないようにアーロンの肩に担がれている。
     「い、いや!アーロン!大丈夫だ!僕は自分でうご……」
     「るせぇ!舌噛まねぇように口閉じてろ!」
     そう叫んだ相棒は部屋の扉が大きな音を立てて開くのと同時に窓を破って、外へと飛び出す。僕が敵の姿を視界にとらえるが、それもすぐに遠ざかっていく。
     僕は痛みを堪えながら体を捻り、僕を抱える相棒のつむじを見つめた。夜風を受けながら、ビルや木々を軽々と飛び移る彼は夜に駆けるスーパーヒーローそのものだ。
     「死ぬなよルーク!」
     跳ね回りながら、そう叫ぶアーロンに僕は、ハッと我に返って叫び返した。
     「大丈夫だ!ヒーローは死なないんだから!」
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    DONE #アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    【アロルク】28分遅刻しました!すみませんでして!借りたお題は「お酒」の方で、単にアルコール代わりにお酒を吹くアーロンが書きたかっただけ。なお医療行為としては効果はあるけど、正しくはない、みたいな感じらしいし、私自身は医者じゃないので、あくまでファンタジー的に読んでください。あと運営様、お疲れ様でした!最後までよろしくお願いします!
     失敗した。その一言に尽きる。
     「クソッタレ!おいルーク、大丈夫か!」
     「だ、大丈夫だ」
     あまりの激痛に顔が引き攣る。この状態では銃を握ることすらできない。どう考えても戦力外状態だ。痛みが思考の邪魔をする。ただ僕が負傷した現状が、非常にマズイことだけは明白だった。

     時は数日前に遡る。
     「「Discardに関する資料が持ち去られたぁ!?」」
     僕と相棒のアーロンはナデシコさんの一声でミカグラ島の警察本部、警視総監室にいた。
     「正確に言うと、ハスマリー研究の資料が持ち去られた、だ」
     ナデシコさんはいつもの落ち着いた雰囲気からガラリと表情を変え、かなりピリついた態度だった。それだけにこの話の緊急性がうかがえる。
     「今我々が組織の抜本的な改革をしていることは君たちも知っての通りだが、その過程で出てきた資料はすべて紙ベースにした上で資料課が管理をしている。しかし、そこの新人がうっかり鍵を閉め忘れたらしくな。何者かの侵入を許した上に、最重要機密扱いの資料たちを盗んだようなのだ」
     眉間に手を当て、困り果てた顔のナデシコさん。かの研究の悲しくも恐ろしい部分の一端を垣間見てきた彼女だ 3134

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