嘘つきは恋人のはじまり⑥「諸事情あってさ、恋人が必要なんだよね」
おれたちの関係をはじめたのは、クソDJの一言だ。
だけど終わりの一言を待てるほど、おれには余裕も何もなくて。しばらく避けて、避けまくっておれが出した結論は、自分から別れを告げることだった。
好きになって欲しかったのは本当だ。本物の恋人同士になりたかったのも本当。だけどその見込みが限りなく少ないのに、これ以上この気持ちを大事に大事に抱えられるほどおれは出来た人間じゃない。
呼び出した屋上は真冬の夜らしく冷たい風が吹いていて、この恋を儚く散らすのにはちょうど良い場所だと思えた。
来ないかもと思っていたソイツはおれよりも先に着いていたようで、姿を見るなりゆっくりとこちらに歩き出した。買い物帰りなのか大きな紙袋を持っている。前に見た女の人との時間を邪魔していたら申し訳ないとも思ったが、終わりくらいちゃんとしたい。
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