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    guchiko

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    guchiko

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    原作本編でも詳細に語られていない、妄想話
    ある日、藍先生から”藍夫人から青衡君宛の手紙”を渡されたことにより、両親について知る話です。

    #魔道祖師
    GrandmasterOfDemonicCultivation
    #忘羨
    WangXian

    藍夫人の手紙ある日、藍曦臣と藍忘機は叔父である藍啓仁に呼ばれて、あるものを手渡された。その差し出されたものは、二人の父、青衡君宛の手紙だった。手紙の裏を見ると差出人の名は書かれていなかった。
    「叔父上、この手紙は?」
    「その手紙は、お前たちの母が書いたものだ。」
    その言葉を聞いた二人は、瞠目する。
    「先日、兄上の――お前たちの父の遺品を整理していたら、この手紙が出てきた。お前たち自身、自分たちの出自について詳しくはないだろう。私も正直、詳しくは知らなかった。手紙には、その詳細が書かれている。」
    叔父の言葉にまじまじとその手紙を見つめた。
    「読むかどうかはそれぞれに委ねるが、その手紙を渡しておく。」
    兄弟二人は、一礼して退出した。
    始めは兄・藍曦臣が読み、その後藍忘機へと手渡された。
    その手紙には、こう綴られていた。

    ーーーーーーーーー

    この手紙を読んでいるということは、私は貴方を置いて逝ってしまったのですね。
    私はしがない茶屋の娘だったのに、夜狩の途中に立ち寄った貴方と出会った。貴方はその時、私に一目ぼれをしたのだとおっしゃいましたが、私も貴方に一目ぼれをしていました。店の端で入ってくる貴方を見て、なんと美しい人なのかと。木漏れ日が目元に照らされている時のように、まぶしく思いました。けれど、貴方が額に着けていた抹額を目にした時、その瞬間、貴方を好きになってはいけないのだと思いました。

    私は幼い時分、鬼に両親を殺されました。その際、私を助けるのと引き換えに、貴方の師父は私の両親を見殺しにしたのです。今思えば、致し方なかったのでしょう。けれど私には、何とかなったのではないかと、どうしても思えないでいられなかった。だから、どうしても悔しくて、悔しくて。
    貴方と他愛もない話をして笑っている姿や、ましてや妻子がいて幸せそうにしている姿が、どうしても憎く思えてならなかったのです。師父にとっては数ある夜狩の一つの出来事だったのでしょう。会って私だと気付かなかった。それが私にとって両親の命が、ちっぽけなもののように感じられ、許せなかったのです。

    けれど、そんな悍ましい私を貴方は慕い、愛して下さった。本来であれば私は貴方のような高貴な方と一緒になれる身分ではなのに、加えて罪を犯した私を守るために、妻にし共に罰を受けて下さいました。日々過ごすこの暮らしが、貴方の愛そのものと感じておりました。その愛を感じると共に、申し訳なく思っていました。それ故に、私は貴方に愛していると言うことが出来ませんでした。罪を犯した私にこれ以上心割かないように。いつ、捨てられ処分されてもいいように。

    本当は最期までこのことを伝えるつもりはありませんでした。けれど、病に罹り死期が近づくにつれて、どうしても貴方の中に、私が貴方のことを愛していたことを知っておいて欲しかったのです。貴方の心の中に、私の居場所が欲しかったのです。
    今まで話せなくて、ごめんなさい。貴方は何故、私が師父を殺したのか、今まで分からなかったでしょう。でもこれからは罪に縛られず、光ある道を歩んでください。私の分まであの子たちの成長を見続けていってください。

    私は幸せでした。二人の息子を授かれたことに、罪を犯した身にはもったいないほどの幸せでした。
    だからどうか、もう罪には囚われず、息子たちと共に家族として過ごしてください。
    私は家族の幸せを祈っております。


    ーーーーーーーー

    藍忘機はその手紙を読み終えると、そっとその手紙を畳んで目を瞑る。瞼の裏には血の不夜天で魏嬰を助けたこと、三十三人の先達に重傷を負わせ罰を受けてことが浮かんできた。そして、無性に自身の伴侶に逢いたくなった。
    魏嬰は今日まで思追と景儀ら門弟と共に、近隣の夜狩に出ている。そろそろ戻ってくる頃なので、手紙を懐に仕舞い正門へと向かった。

    「藍湛!」
    正門に着くと魏嬰が丁度、帰って来たところだった。藍忘機に気が付くとこちらに向かって手を振る。できることなら今すぐにでも魏嬰を抱きしめたい気持ちに駆られる。だが、長年染み付いた己を律する行動が、その気持ちに障壁を創り、行動へと移行しない。
    「お帰り、魏嬰。」
    そう声がけるに、留まった。
    だが、魏嬰は他人なら読み取れない藍湛の表情で、気持ち読み解いた。
    「お前たち、今回の夜狩の報告は明日まとめて提出しろ。含光君への報告はそれでいい。」
    思追や景儀は一度、含光君を見たが何も言わない様子を見て、魏嬰が言った報告の仕方で良いことを理解した。
    「承知しました。」
    「叔父上に、戻ってきた報告をしてきなさい。」
    「はい。」
    そう返事をすると、門弟たちはその場から離れていった。
    魏嬰は見送ると即座に、藍湛の小脇に入り込み両腕を回して抱きついてくる。
    「藍湛、寂しかった。」
    そう言ってすり寄ってくる。藍湛は入り込まれた方の腕を魏嬰の腰に回した。
    「私も寂しかった。」
    そう言うと、魏嬰は上目遣いで見つめて来て、頬を撫でてくる。
    「藍湛、どうした?何かあった?」
    「どうして、そう思う?」
    静室へ歩き始めながら、そう返した。
    「う~ん、なんだろう。藍湛、泣きそうな顔してる。だから、気になって・・・・。でも、嬉しいこともあったのか?喜んでいるようにも、思う。」
    その言葉に、流石は魏嬰だと嬉しくなる。と同時に、あの手紙を読んで自分自身、嬉しくなっているのだと、初めて自覚した。
    「で、どうなんだ?」
    「今日、母の手紙を読んだ。」
    藍湛を少しだけ口角を上げ、魏嬰の質問に返答をした。魏嬰は少しだけ、目を見開く。藍夫人のことは耳にしない。子である当事者も藍夫人のことをあまり分かっていないのに、藍湛の口から藍夫人のことが出てきたのだ。
    「そうか。だから、嬉しそうだったのか。」
    魏嬰は納得したように、呟いた。
    その後は、魏嬰に質問攻めにあいながら、静室に帰っていった。藍湛はその間、終始魏嬰に抱きながら、幸せを噛みしめていた。
    両親は互いに愛し合っていたという事実に嬉しく思いつつも、結婚してもなお言えずにいたことが悲しく思えた。魏嬰が今、ここにいることは奇跡に等しい。愛しい人が傍らにいて、互いに思い合い、"愛している"と伝えることが出来るのが、どれほど幸せなことか。
    藍湛は腕に感じる幸せを感じながら、静室へと続く道を二人進んでいった。


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