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    hananokosituki

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    hananokosituki

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    練習ルツ🎈🌟ちゃん2
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    『今時間はあるか?類に見せたいものがある。セカイに来て欲しい。』

    『珍しいね、わかったよ。なるべくすぐ行くから。』

    司くんがこんな時間に連絡をしてくるなんて珍しいなと思いつつも準備をしてセカイへ行くと、もう既に司くんは待っていた。僕を見つけると待ち切れないとでも言うように駆け寄って来る。

    「類!」

    「おまたせ、司くん。もしかして連絡する前からここに居たのかい?」

    「ん?ああ!呼んでおいて類を待たせるわけにはいかないからな!それにもし、類が来れなくても一人で行く気だったから平気だ!」

    僕が来なかったら一人で行ってたのか……呼んでくれてよかった。なんて思っていると司くんに強く腕を引かれた。

    「ほら、行くぞ類!見つけてからずっとお前と見に行きたかったんだ!」

    「ふふ、そんなに引っ張らなくても僕はいなくならないよ。」

    引っ張っていた司くんの手を取りゆっくりとアトラクションの間を歩く。手を繋ぐと途端に司くんが静かになってしまったけれど耳が赤くなっていたから恥ずかしがってるだけなんだってすぐにわかった。

    「それで司くん、君は僕に何を見せてくれるのかな。」

    「あ、ああ、それはな…………っと着いたぞ!類見てくれ!」

    「これは……!」

    アトラクションを抜けた先、目の前の開けた場所には満点の星空をそのまま溶かし込んだような湖があった。

    「綺麗だろう!この前脚本に行き詰まった時に気分転換がてら散歩をしていたのだがな、その時に偶然見つけたんだ!」

    「なるほど……。気づいたら出来ていたんだね、もっと近付いても?」

    「勿論だ!そうだ、その水触ってみるといいぞ!」

    「いいのかい?じゃあ、お言葉に甘えて。」

    司くんに言われた通り手を浸してみる。感触は水だけど手を動かすと中の星もきらきらと泳いだ。

    「やっぱり星空が写ってるわけじゃないんだね。」

    「そうだな。水の中にあるみたいだろう。類、その水掬ってみてくれ。」

    言われた通り浸していた手で水を掬ってみると、掬った瞬間から星がキラキラと強く煌めき、ゆっくりと消えてゆく。

    「これは……………。」

    「ふふん、綺麗だろう?類、その水戻してみてくれ。」

    「うん。……………あれ?」

    湖に水を戻したあと手の平を見ると確かに水を掬っていたはずなのに濡れていなかった。

    「面白いだろう?その水の中に入っても濡れないんだ。」

    「そうだね、とても興味深い…………ん?あそこなんだか少し光ってないかい?」

    「え、どこだ?」

    「ほら、湖の真ん中らへんが………。」

    なぜだかあの光の元まで行かなくては行けない気がして足を踏み出す。足首が水に浸かり、膝、腰ときても止まらない僕に司くんが慌ててストップをかけた。

    「お、おい!類、真ん中の辺りはそれなりに深いんだ。危ないから戻ろう。」

    「…………でも僕はあの光をちゃんと捕まえないといけない気がするんだ。きっと今光の元に行かなければずっと後悔することになる。」

    少しだけ不安そうな司くんを安心させるように目を合わせ真っ直ぐ見つめる。

    「ここは君の、司くんのセカイだ。君のセカイは僕のことを傷つけたりしない。そうでしょ?」

    「……っあ……………」

    「僕は君のことを信じてるよ。だから、君のことを信じている僕のことを信じてくれないかな……ね?」

    司くんに僕の想いが届くように、僕の精一杯を込める。

    「……………はぁ。止めてもお前は行くんだろう?ならもう止めたりはしない。その代わり何かあったら無理矢理にでも連れ戻すからな?」

    「ふふふ、ありがとう。行ってくるね。」

    司くんの視線を受けながら光の側までやってきた。だけど光の周りは完全に足がつかないくらいの深さになっていた。

    (泳げば大丈夫だよね…………。……っ!)

    泳ぐために水底を蹴ろうとした足が滑ってしまい、後で司くんに怒られるな………とどこか他人事のように思いながらなにかに引っ張られるように底へ底へと沈んでいく。

    (せめてあの光に触れたかったのだけど)

    沈みながらも光へ手を伸ばす。気づいたら先程よりも光が近くにあり困惑していると光から伸びた手にしっかりと自分の手を掴まれる。そのよく知った手の感触に、あぁ……そういう事だったのか…………と一人納得しているとグイグイと引っ張られ、徐々に水面が近づいてくる。

    「ぶはっ!はぁ……はぁ………………ゲホッゲホッ………。」

    そのまま岸辺まで引っ張られ息を整えていると助けに来てくれたであろう司くんの怒った声が聞こえた。

    「バカ類!!!気をつけろと、中心の方は深いと言っただろう!!!!!お前が水の中へ沈むのが見えたときオレがどれだけ心配したと………!」

    勢いよく肩を掴まれた。司くんにとても心配をかけてしまったのは僕なので名前を呼んで優しく抱き寄せる。

    「司くん、心配させてしまってごめんよ。助けてくれてありがとう。あの光を掴もうと思って水底を蹴ったら足を滑らせてしまってね…………。けれどそのおかげであの光が何だったのかわかったんだ。聞いてくれるかな。」

    「………………何だったんだ。」

    抱き寄せた状態から少しだけ体を離し、俯いている司くんの頬に手を寄せ上を向くように優しく促す。

    「あのね、あの光は君だったよ。」

    「オレ?」

    「うん、あの光は間違いなく君だよ。あの数多ある星々の煌めきの中で僕を唯一見つけて導いてくれたのは君だけだった。君は何があっても僕のことを見つけ出してくれるんだね、嬉しいな。」

    額にキスをして、そのまま額をすり合わせて、頬に添えていた手で優しく、優しく頬を撫ぜる。僕のほんの少しの仕草でも愛おしいという気持ちが伝わるように。

    「…………最初はただここが綺麗で不思議で……だからきっと類が好きだろうと思って来ただけなのに……そんな事言われるなんて思わないじゃないか。」

    少し照れくさそうにはにかみながら君は僕の手に繊細な手付きで触れ、すり寄ってくる。

    「そこまで想われているだなんてさすがオレ!だな。……類がそこまで言ってくれたのならばオレも返さねば。」

    司くんは一度目を閉じるとゆっくりと開く。潤んでこぼれ落ちてしまいそうな蜂蜜色は、溢れんばかりの愛しさと優しさをたたえ僕を見つめる。

    「あの数多の星が輝く中で真っ直ぐ俺に手を伸ばしてきたのは類だけだった。それがどれほど嬉しかったか……伝わるだろうか。」

    「そっか…………見つけてもらったと思っていたのは僕だけじゃ無かったんだね」

    「スターの卵などたくさんいるんだ、その中から手を取ってもらえたなんて嬉しいだろう……。それに、類だから嬉しいんだ。オレを見つけてくれてありがとう、類。」

    「こちらこそ見つけてくれてありがとう、司くん。」


    星々よりも綺麗に笑う君にありったけの愛を込めて。
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