類くんおめでとう「類!」
昼休み、いつものように司くんとお昼を食べるために屋上へ行くと、先に着いていた司くんが僕が来たことに気づき紙袋を持って駆け寄ってくる。
「待っていたぞ、類!今日は誕生日なのだろう、これをやろう!」
そう言うと持っていた紙袋を僕に差し出してきた。
「おや、覚えていてくれたんだね、ありがとう」
「もちろんだ!座長として仲間の誕生日くらい覚えておかねばな!」
胸を張り、いつも通り高笑いをしていた司くんが急に静かになり、恥ずかしそうに小さな声で、
「…………気に入ってもらえると嬉しいのだが」
「僕は司くんから貰ったものならなんだって嬉しいよ。ねぇ、今開けてもいいかな」
「あ、ああ!もちろんだとも!」
司くんから許可をもらい紙袋の中から小さな箱を取り出す。すみれ色の箱に黄色のリボンで可愛らしく飾り付けられた箱はちょうど自分の手のひらに乗るくらいの大きさで。リボンをほどき箱を開けると、光を反射しきらきらと輝く満月の右端、円に触れるように主役である石が入ることによって三日月を形作っている。
「これは……ネックレス?」
「こ、この間、咲希とデートをしたときに入ったアクセサリーショップで見つけてな。その……ネックレスを見たときに真っ先にお前が思い浮かんで…………だな」
よほど恥ずかしいのか司くんは首まで真っ赤にしながら俯いてしまった。
「おやおや、僕の愛しい人は恥ずかしがり屋さんだね。こんなにも想いのこもったプレゼントを貰えて僕はとっても幸せ者だよ」
「ま、まぁ!オレが選んだのだから当然だな!」
「ふふっ、そうだね。ありがとう、司くん」
真っ赤になりながらもいつもの様子を崩さない司くんの頬に軽く手を当てながら顔を近づける。僕の行動を理解した司くんの瞳が隠れたタイミングで唇を触れ合わせ、慈しむ様に軽く食んで離れる。ただそれだけのことで陶然としてしまう司くんが可愛くて歯止めが効かなくなりそうだったけれど、なんとか理性を総動員してストップをかける。
「ふふ、ほら司くん。お昼食べられなくなっちゃうよ?」
「……はっ!っあ、オ、オレとしたことが!!空腹で午後の授業が受けれないなどあってはならん!」
「幸いあと10分は残っているから少し急げば食べ切れるんじゃないかな」
「むぅ……。あまり急いで食べるのは体に悪いのだが…………仕方があるまい」
司くんがお弁当が置いてあるところまでいそいそと戻る。僕は貰ったネックレスを丁寧に箱へ戻し紙袋へ仕舞ってから司くんの隣に腰を下し、手を合わせ生姜焼き弁当を頬張る司くんを観察してから自分も買ってきたサンドイッチの包を剥がした。
「……類。その……オレにそのネックレスを着けさせてくれないか」
「もちろんだよ。むしろお願いしたいな」