割れ鍋に綴じ蓋[幸せの福音]
大戦後、里に帰り着くなり病院へ担ぎこまれたナルトとサスケはサクラや綱手たち医療忍者の尽力のお陰で片腕を失くした以外は大きな後遺症もなく済んだ。さすがに体力も気力も互いに限界だったようでサスケが次に目を覚ましたときには、里に帰ってきてからとうに四日は経っていた。
ナルトもつい先刻目覚めたらしい。隣のベッドの上で胡座をかいて椀にすりおろされた林檎を匙で掬って食べていた。味気ないのか不満げだ。サスケが目覚めたことに気づくと、ナルトは小憎らしい笑みを浮かべた。
「ようやくお目覚めかよ」
「うるせえ」
四日ぶりに出した声はみっともなく掠れてまるで老人のようだった。「お前も食べる?」と差し出された匙にサスケは首を横へ振る。重い身体をなんとか起こして部屋全体を見回した。室内にはナルトとサスケ以外に患者はおらず、大きめの個室をあてがわれたようだ。おそらく里長である綱手の気遣いなのだろう。床頭台の上に置かれた水差しが目に入り、サスケはひりつく喉を潤そうと手に取った。筋力もたった数日寝たきりだっただけで随分衰えたらしい。半分も水が入っていないというのにやけに重く感じる。
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