「悠仁、手出して?」
「ん? 包帯?」
手の平に乗せられたのはクルクルと纏められた白い包帯。
「俺別にどこも怪我してないよ?」
「これはね、悠仁とまだ出会う前、このアイマスクの代わりに使ってた物なんだ」
「へー。それで? なんで急に俺に?」
率直に思ったことを口にしたのだが、何故か先生はちょっと不服そう。
沈みかけの夕陽が窓から差し込み、先生の白い髪の毛がオレンジに染まる。二人の間に出しっぱなしだった腕が急に引かれたもんだから、乗っかっていただけの包帯が落ちないようぎゅっと掌に力を込める。と同時に先生の胸の中へダイブ。
そのままいつもの『飛ぶ』ってやつで連れて来られた先はどこかの屋根の上。同じ高さだったはずの太陽は、遥か下。目下の廃墟は、数週間前まで人が賑わうコンクリートジャングルだったのに。
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