今日のところはひとまず 月曜への陰鬱な感情が折り混ざる電車に揺られて、簓は最寄り駅にたどり着く。ただし、自宅ではない。盧笙の家の最寄り駅だ。電車から降りる時こそ多かった人も、住宅街をとぼとぼと歩いているうちにすっかり簓だけになってしまった。
周りには誰もいないのをいいことに深く深くため息を吐き出す。
「ただいまぁ」
ポケットから引っ張り出した鍵で扉を開けると、丁度台所に立っていた盧笙があからさまに眉を顰めた。
「ただいまちゃうやろ。まだ鍵持っとったんか。出せ」
「はぁい」
「元気ないな。仕事キツイんか」
「んー、まぁ」
もぞもぞとスニーカーを脱ぐ簓に、盧笙は心配そうな声を浮かべる。
複製した鍵を使って我が物顔で入ってきた人間に対しての態度ではないだろう。相変わらずお人好しな相方に普段の簓ならツッコミの一つでも入れていたが、どうにもそんな元気にもなれない。
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